敦賀市街地の湾岸一帯に展開する "敦賀港" は、多数のコンテナ船が行き通う北陸屈指の海運拠点です。港としての歴史は100年少しですが、海運が盛んとなった安土桃山時代には既に豪商が存在するなど、敦賀は海運の要所として古くから親しまれていました。
20世紀になると、敦賀港はロシアのウラジオストクまでの定期便を結び、そこからシベリア鉄道を経由して欧州に入るというルートが確立されます。欧州とアジアを直接結ぶシベリア鉄道は、重要な渡欧ルートとして位置付けられ、ウラジオストクに繋がる敦賀港は多くの旅行者で賑わいました。戦時中には外交官である杉原千畝氏が発行した "命のビザ" によって日本に渡った全てのユダヤ系避難民がここ敦賀に降り立ったことも、敦賀港の歴史を象徴する重要な一幕です。
その敦賀港の一角にある "金ヶ崎緑地" は、開港100年事業の一環として2003年にオープンしました。敷地内には杉原氏の "命のビザ" に関する資料を展示した「人道の港 敦賀ムゼウム」が建ち、デッキからは周辺を山に囲まれた敦賀湾を一望できる海浜スポットとして人気です。今回ご紹介する「敦賀赤レンガ倉庫」は、この緑地のすぐ東隣に建ちます。
瓦屋根とオランダ製の赤レンガが綺麗に積まれて建つこちらの建物は、もとは米国の石油会社 "紐育(ニューヨーク)スタンダード株式會社" の石油貯蔵庫として、1905年(明治38年)に建設されました。その後は日本軍の備蓄倉庫などに転用されながらも残り続け、2009年に国の登録有形文化財として登録された、歴史的価値の高いレンガ建築物です。
文化財登録の流れを受けて、赤レンガ倉庫を新しい施設として活用しようという動きが生まれ、2015年に巨大な鉄道ジオラマとレストランが入る「敦賀赤レンガ倉庫」としてリニューアルオープンしました。赤レンガのオシャレな雰囲気はそのままに、敦賀産疋田石のステージが備わったオープンガーデンなどが整備された、敦賀港湾の新しい観光スポットです。
赤レンガ倉庫最大の目玉となるのが、北側の倉庫を丸ごとジオラマスペースとして生まれ変わった "ジオラマ館" です。このジオラマは1945年(昭和20年)の地図を参考に、明治後期から昭和初期の敦賀の街並みが再現され、その大きさは全長約27m・奥行き約7.5mという日本最大級の規模を誇る超巨大ジオラマです。
ジオラマに敷設された蒸気機関車・ディーゼル車のみならず、道路を走るバス、海上を行き通う船、そして敦賀の街を賑やかにする祭りの様子などが実際に動き、まるで当時の敦賀がここで生きているかのような、幻想的でノスタルジックな雰囲気を楽しめます。
さらにこのジオラマをドラマチックに演出するのが、毎時0分と30分に上映されるジオラマショー(上映時間10分)です。当時の敦賀の成り立ちや街並み・お祭りの様子などをナレーション付きでわかりやく解説され、蒸気機関車がジオラマ内の線路を走り抜けます。
加えてこのジオラマショーでは、実際に上映されるシーンとジオラマが連動するようになっているのも特徴。夕方のシーンであればジオラマも夕方の光景に、夜のシーンになれば屋内の電灯が点いて夜の街並みになったりと、普通に観覧するだけではわからない表情豊かな敦賀の街並みを、ぜひジオラマショーをみながら楽しんでみてください。
南側の倉庫をリニューアルした "レストラン館" には、生け簀の魚をその場で調理する海鮮ダイニングやイタリアンレストランが入店していますが、ちょっと一服したいときにオススメなのが「赤れんがcafe」。ジオラマ館の開館時間と合わせて営業しているため、ジオラマ館を楽しんだ後の一服スポットとして最適です。
カフェのイチオシは、福井県産の牛乳・卵を使用したクリーミーで味わい深い焼きたてチーズタルト。ドリンクセットもお手頃価格なので、ご一服の際はぜひ一度。他にも若狭名物 "浜焼さば" を使用したサンドなど、地元特産のバラエティー豊かなメニューが勢ぞろいしています。
こちらの施設は、世界遺産にも登録された「富岡製糸場」など全国の赤施設が加入する "赤煉瓦ネットワーク" に加入しており、2017年にはここ敦賀での全国大会の開催が予定されています。全国の赤レンガ好きが集まる2017年にはぜひ「敦賀赤レンガ倉庫」にお立ち寄りください。
「敦賀赤レンガ倉庫」へは、JR敦賀駅から発着する "ぐるっと敦賀周遊バス" が便利。駅から約15分ほどで倉庫前に到着します。また、JR敦賀駅ではレンタサイクルも貸し出しています。
"ジオラマ館" の入館料金は大人400円、小学生以下200円で、鉄道模型を運転する際には1回100円の料金が別途で必要となります。
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