浜松北部の山上に建つ「秋野不矩美術館」は、手作り感溢れるファンタジーで型破りな美術館!

浜松北部の山上に建つ「秋野不矩美術館」は、手作り感溢れるファンタジーで型破りな美術館!

更新日:2016/10/28 20:38

東海道屈指の観光名所 "浜名湖" があることでも知られる静岡県浜松市。その北部に位置する天竜区には、同区出身の日本画家・秋野不矩の作品を展示する「秋野不矩美術館」があります。従来の日本画とは一線を画す色彩鮮やかで力強い画風もさることながら、その絵画を収める美術館も自然素材を駆使したファンタジーな建物として注目される、浜松北部のユニークなアートスポットをご紹介しましょう。

豊かな緑の自然に囲まれて建つ "天空の美術館"

豊かな緑の自然に囲まれて建つ "天空の美術館"
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浜松市北部に位置する天竜区は、2005年の市町村合併前の旧天竜市と北遠旧4市町村により構成される行政区で、ボート競技で有名な "天竜川" やオートキャンプ場としても名高い清流 "気田川" 、日本に400社ほどある秋葉神社の起源となる "秋葉山本宮秋葉神社" などの自然由来の観光・レジャースポットが数多く存在します。

「浜松市秋野不矩美術館」(以下、「秋野不矩美術館」)はこの天竜区二俣町(旧:磐田郡二俣町)で生まれ育った日本画家・秋野不矩の作品を収蔵・展示する目的で1998年に開館した、浜松市北部を代表するアートスポットです。小高い山の山上にあるため、緩やかな登り坂のアプローチから見上げると、雄大な緑に囲まれる "天空の美術館" とも呼べる見事な佇まいを見ることが出来ます。

自然素材が支配する、奇抜な佇まいが特徴的な "フジモリ建築"

自然素材が支配する、奇抜な佇まいが特徴的な "フジモリ建築"
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この美術館の魅力はなんといっても、この奇抜ながらにファンタジーな雰囲気が漂う建物そのものにあります。土のような質感を漂わせる中央の大壁、両脇に建つ鉄平石で葺かれた三角屋根、その屋根下に貼られた焼杉板の壁面など、ちょっと荒々しいけど、人間味あふれる手作り感が漂う、そんなユニークな美術館建築です。

建物を手掛けた藤森照信氏は日本を代表する建築史家・建築家のひとり。"日本一危険な茶室" としても有名な長野県の「高過庵」、屋根全体が草で覆われた滋賀県の「ラ・コリーナ近江八幡」、近年完成した岐阜県の「多治見市モザイクタイルミュージアム」など、土や草などの自然素材を駆使した奇抜な建築作品は、"フジモリ建築" という独特のシリーズとして多くの人々を魅了しています。

木の構造が見事なエントランスがお出迎え

木の構造が見事なエントランスがお出迎え
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外観だけでもアッと驚いてしまう「秋野不矩美術館」ですが、このファンタジー感が満載の空間は館内にも広がります。入館するとすぐに見えてくるのが、木の柱や梁の構造体がスペース中央に鎮座するエントランス空間。荒削りした木材を組み立て、全体を真っ白な壁面・屋根で覆うことで、まるでこの構造体がひとつの自然のアート作品のように演出されているのがポイントです。他にもライトが吊り下げられている部分が本物の枝で構成されているなど、手作り感のある家具デザインもユニークですので、ぜひ探してみてください。

横付けされたテラスからは、ここまで登ってきたアプローチを眼下に見下ろしながら、天竜の美しい緑が奥まで広がる絶景が楽しめます。

裸足で鑑賞!秋野氏の世界観を包み込む白亜の展示空間

裸足で鑑賞!秋野氏の世界観を包み込む白亜の展示空間
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秋野不矩氏は日本画家でありながら、従来の日本画の概念の枠を大きく超えた、彩度の鮮やかな力強さに満ちた画風を特徴としています。50代の頃に客員教授として渡ったインドに魅せられ、それ以来何度も渡印して数多くのインドの情景を描きました。

"秋野ふく" という本名を "不矩"(「矩」はものさしの意)という雅号に改めたように、秋野氏本人は型に収まるのを良しとせず、花鳥風月を基とする日本画の題材には興味を示さないで、インドという異国の情景を描く日本画家としての道を開拓していきました。1999年には文化勲章を授与され、心不全で亡くなる2001年(93歳)まで精力的に作品を描き続けました。

そんな秋野氏の美術館らしく、室内を真っ白に囲む展示室の鑑賞は靴を脱いでという一風変わったもの。展示室の一方の床は籐(とう)ござ、もう一方は白大理石となっていて、ござ(植物)や石という自然の質感を足で感じながら、秋野氏の力強い絵画作品を鑑賞します。床に座り込みながらの鑑賞も可能で、白い大理石の部屋からは、天井中央からボウっとトップライトの光が降り注ぐのがとても幻想的です。

まさに天地の逆転!"暗" をイメージとさせる2階空間も必見

まさに天地の逆転!"暗" をイメージとさせる2階空間も必見
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美術館の空間の魅力は1階だけではありません。市民ギャラリーのある2階フロアは、明るい白を基調とした1階から反転したような "暗" の空間。むき出しとなったコンクリート壁が支配し、天井に付けられた木格子を通って差し込んだ僅かな自然光が壁を明るくする様子は、木や岩の隙間から洞窟に差し込む木漏れ日のようです。

空に近い上の階を "暗" の空間、下の階を "明" の空間にすることで、天地を逆転させたかのような型破りな仕掛け。真っ白な空間のウラに垣間見える、ちょっと怪しいミステリアスな2階空間もぜひのぞいてみてください。

画風・建物ともにユニークな「秋野不矩美術館」にぜひ

色彩鮮やかなインドの情景を描く型破りな日本画、自然素材を駆使した奇抜な建築空間、そして靴を脱いで鑑賞するという珍しい鑑賞スタンス。「秋野不矩美術館」は自由で型破りな要素が満載のユニークな美術館となっています。自然豊かなスポットの多い浜松北部ですが、ちょっとユニークなアートスポットとして訪れてみてはいかがでしょうか。

鉄道ご利用の場合は、JR掛川駅で天竜浜名湖鉄道に乗り換え天竜二俣駅で下車後、徒歩約15分です。JR浜松駅ご利用の場合は、同駅最寄の遠州鉄道新浜松駅発の電車に乗り換え、終点の西鹿島駅で下車。そこからタクシーに乗り換え約7分、または、二俣・山東方面行きの遠鉄バスに乗り換え、「秋野不矩美術館入口」バス停で下車後、徒歩約10分です。

自動車の場合は、新東名高速道路の浜松浜北ICより国道152号線を北上して約10分です。駐車場は坂道下側のスペースですが、坂道を歩くのが困難な方が乗車している場合は、美術館手前の小型駐車場スペースを利用できます。

観覧料金は大人300円、高校生150円(所蔵品展の場合)です。所蔵品展・特別展は時期ごとに入れ替わるため、ご訪問の際には展覧会スケジュールを事前にご確認することをお奨めします。

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掲載内容は執筆時点のものです。 2016/09/09 訪問

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