かつて、ここには独立国があった。福島・岳温泉「ニコニコ共和国」の歴史が面白い

かつて、ここには独立国があった。福島・岳温泉「ニコニコ共和国」の歴史が面白い

更新日:2016/10/11 17:17

下川 尚子のプロフィール写真 下川 尚子 ライター
昭和57年独立、平成18年日本国へ統合。これが福島「岳温泉」に造られた独立国の歴史です。
安達太良山の麓に広がる、懐かしい小さな温泉街・岳温泉は、かつて独立国「ニコニコ共和国」と呼ばれた国でした。在りし日は、専用通貨が流通し、楽しいイベントが日ごと行われるごきげんな国だったそう。そんな「ちょっと面白い」歴史の名残を求めて、岳温泉を歩いてみませんか。まるで宝探しのような楽しさがあります。

かつて、独立国が乱立した時代があった

かつて、独立国が乱立した時代があった

写真:下川 尚子

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40代以上の方なら、かつて日本のあちこちでミニ独立国が乱立した時代をご存じでしょうか。小説「吉里吉里人」に端を発した独立国ブームは全国に及び、そのさきがけとして昭和57年、岳温泉は日本からの独立を宣言しました。

日本のあちこちで独立宣言する国が現れた「独立国ブーム」の中でも、岳温泉に建国された「ニコニコ共和国」はその優れた国政が評判となり、いわば「先進国」として、多くの人が訪れたといいます。もっとも栄えた時代は、専用通貨「コスモ」が温泉街に流通し、国境ではパスポート確認が行われ、独自の標準時間までもが設定されたそう。

残念ながらブームの終焉とともに、平成18年には日本国に統合されたニコニコ共和国。これらのムーブメントは今でいうところの「町おこし」のひとつではありますが、今その歴史をたどっても、その本気度はなかなかのもの。現存するニコニコ共和国時代の遺産は少なくなりましたが、岳温泉街を歩くと「あれ、これは?」と数々の名残を発見することができます。

こちらは、元・ニコニコ共和国国会議事堂。今は観光協会として開かれていますが、看板は今もなお健在。ニコニコ共和国歴史めぐりの旅は、ここからスタートしましょう。

国会議事堂は国立銀行本店でもある。まずは通貨「コスモ」に両替

国会議事堂は国立銀行本店でもある。まずは通貨「コスモ」に両替

写真:下川 尚子

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現在は観光協会として開かれている国会議事堂は、ニコニコ共和国時代には国立銀行本店でもあった場所。ニコニコ共和国では専用通貨の「コスモ」が広く流通しており、今もここで両替ができます。※コスモは岳温泉街のほとんどのお店で使えます。

せっかくニコニコ共和国の歴史を訪ねるなら、やはりお支払いはコスモで行いたいもの。レートは1コスモ1円。100コスモ紙幣で両替が可能ですので、ぜひ「なりきって」両替してみてはいかがでしょう。「コスモ」の由来は国花のコスモスから。真ん中の人物は、当時のニコニコ共和国大統領・木村四郎氏です。

ちなみに、岳温泉街で「キャッシュ」という言葉を見かけたらご用心。キャッシュバックと思いきや、コスモで返ってくることがあります。

国立豆富蛋白研究所で一休み

国立豆富蛋白研究所で一休み

写真:下川 尚子

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さて、コスモを持って街を散策していると、こんな看板を目にすることがあります。一見普通のお豆腐屋さんですが、「国立豆富蛋白研究所」という看板が。これはニコニコ共和国であったころの名残です。

以前はさまざまなお店にこんな看板があったそうで、スナックが「保安官詰所」であったり、食事処に「議員専用食堂」という名前がつけられていたそう。近年ではその多くが取り外されてしまいましたが、まだ残っている表示もありますので、散策途中に探してみましょう。

ちなみに、ここ「渡辺豆富店」でも、もちろんコスモが使えます。豆腐や厚揚げを購入できるほか、店内でいただくこともでき、豆乳・豆腐・みそおでんがいただける「いっぷくセット」なども。また、丸い小さな「玉豆腐」はお土産におすすめです。

あちこちに見かけるリスはニコニコ共和国のシンボルマーク

あちこちに見かけるリスはニコニコ共和国のシンボルマーク

写真:下川 尚子

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岳温泉街にはウォーキングコースが数多くありますので、散策しながらニコニコ共和国の遺産を探しましょう。こちらは、温泉街の外れにあるニコニコ橋。たもとには、大きなリスが座っています。

実はこのリスのマーク、ニコニコ共和国のシンボルマークだったのだそう。専用通貨のコスモには大きくリスがプリント。温泉街では、あちこちでリスのマークを見つけることができます。

名残を探しながら歩こう

名残を探しながら歩こう

写真:下川 尚子

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こちらは、岳温泉の観光協会前。かつては、ここに「ニコニコ共和国」の大きな看板がかかっていた場所です。現在は、「ニコニコ共和国のスギ」という小さな表示がある程度。

日本国に統合された現在は、ニコニコ共和国の名残はかなり少なくなっており、その時代を偲ぶことができるポイントは減っています。ですが、温泉街を歩いていると、リスのマークやニコニコ共和国の表示を目にする機会は多く、あちこちにその名残を見ることができます。

岳温泉を観光するなら、ぜひ宝探し気分で探してみてくださいね。

町おこしの歴史、岳温泉街の歴史

観光地には歴史があり、それぞれ集客に苦心した時代もあれば、大々的に行ったキャンペーンが成功することもあります。近年の例では、ご当地グルメで町おこしを試みる観光地も多く見られました。

岳温泉街では、ニコニコ共和国時代に遊びに来たお客さんが、最近になってお子さんやお孫さんを連れて再訪されることもあるのだそう。そんな温泉街の変遷を知るのもまた、興味深い旅になりそうですね。

ニコニコ共和国の名残は決して多くはなく、観光のメインにすることはおすすめしませんが、頭の隅に置いておくと、より味わい深く岳温泉を楽しめるはず。なお、岳温泉街の基本の観光ガイドについては、下記「MEMO」よりご覧ください。

今風の楽しみ方でいえば、「ニコニコ共和国に入国!」なんてSNS投稿してみるのも良いのではないでしょうか。意外な知り合いが反応してくれるかもしれません!

掲載内容は執筆時点のものです。 2016/09/25 訪問

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