東京「弥生美術館・竹久夢二美術館」で大正ロマンのレトロな美に耽溺する

東京「弥生美術館・竹久夢二美術館」で大正ロマンのレトロな美に耽溺する

更新日:2016/10/16 19:56

泉 よしかのプロフィール写真 泉 よしか 女子目線温泉ライター、キッザニアマニア
東京の山手、明治から昭和にかけて多くの文人たちが移り住み作品を生み出した文化の香り高い地域に、ひっそりと佇むように建つ二つの美術館。その名は弥生美術館と竹久夢二美術館。この美術館で出会う竹久夢二や高畠華宵の描く美しくもレトロな世界は、見ている人を大正ロマンの世界に誘います。

弥生美術館と竹久夢二美術館

弥生美術館と竹久夢二美術館

写真:泉 よしか

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東京文京区の東京大学弥生門の斜め向かいに小さな美術館が建っています。ここは弥生美術館、そして竹久夢二美術館の入口でもあります。この双子のような二つの美術館は、独立した美術館であるとともに、入口とチケットは共通で、建物は1階と2階の渡り廊下でそれぞれ繋がっています。

弥生美術館も竹久夢二美術館も創設者は鹿野琢見(かの たくみ)。1984年6月、鹿野は弁護士としての仕事の傍ら、私費を投じて自宅の敷地内に弥生美術館を建てました。展示品は彼が生涯かけて収集した、竹久夢二や高畠華宵(たかばたけ かしょう)といった大正時代から昭和初期にかけて活躍した挿絵画家の作品が中心で、特に出版美術品が多いことが特徴です。

また、その6年後の1990年11月には隣接する竹久夢二美術館が開設され、夢二作品はこちらに移りました。

弥生美術館の常設展示

弥生美術館の常設展示

写真:泉 よしか

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弥生美術館、竹久夢二美術館ともに、現在は年4回、それぞれ3ヶ月単位の企画展を実施しています。弥生美術館では企画展+高畠華宵作品の常設展示といった形態を取っており、美術館の3階が常設展示のコーナーです。

常設展示と言っても、館が所蔵する高畠華宵作品は多く、企画展示の交代に合わせて常設展示の作品もテーマにあわせて入れ替えが行われます。ですから定期的に通っても、その度に新しい作品との出会いが待っているかもしれません。

弥生美術館と高畠華宵の「さらば故郷」

弥生美術館と高畠華宵の「さらば故郷」

写真:泉 よしか

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(左『さらば故郷』/右『新・さらば故郷』)

鹿野琢見が挿絵文化に情熱を持ち、弥生美術館を創設する最初のきっかけとなったのが、幼少期に出会った画家・高畠華宵の一枚の作品「さらば故郷」でした。この作品に感動した鹿野は老後の華宵を呼び寄せ、交流を深めていきます。
弥生美術館にはこの「さらば故郷」とともに、後日華宵から鹿野に贈られた「新・さらば故郷」の画が並んで展示されています。

モダン、ロマンティックとされ、華やかでかつ不思議な愁いを帯びた美少女、美少年、美女の画で戦前に大人気を博した華宵の作品は、オーブリー・ビアズリーなどに代表されるアール・ヌーボーの流れを汲みながらも、独自の画法で「少年倶楽部」、「少女画報」など多くの雑誌を飾りました。レトロ感あふれる華宵の作品は、今見てもその中性的な独特の眼差し、また装飾の緻密さやデザイン性の高さに驚かされることと思います。

竹久夢二と本郷の所縁

竹久夢二と本郷の所縁

写真:泉 よしか

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一方、竹久夢二美術館では、年4回の企画展の内容も夢二関連のテーマで構成されます。つまりいつ訪れても、たっぷり夢二の作品に浸れるということです。所蔵作品は日本画、書、油絵、スケッチ、原画といった肉筆のものだけでなく、木版画、著作や雑誌の書籍類、書簡、遺品など多岐にわたり、総数は3,300点にも及びます。

もともとこの美術館の建つ東京の本郷あたりは夢二に所縁の深い土地でした。恋多き芸術家であった夢二は、本郷に建つ菊富士ホテルに大正7年末から大正10年まで逗留し、23歳の若さで亡くなった笠井彦乃の闘病に心を悩める日を送りつつ、モデルのお葉(佐々木カ子ヨ)と出会うなどしました。

竹久夢二の描く夢二式美人と、作品のデザインとしての魅力

竹久夢二の描く夢二式美人と、作品のデザインとしての魅力

写真:泉 よしか

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竹久夢二の作品を所蔵する専門美術館は、岡山、金沢、日光、伊香保などにもありますが、こちらの竹久夢二美術館の特色は、雑誌や書籍など出版美術関連の作品が多く展示されていることにあります。

夢二の描く華奢で妖艶でどこか夢見がちな美人画は、「夢二式美人」と呼ばれ、広く知られていますが、こちらの美術館ではさらに、今でいうデザイナーとしての竹久夢二の多彩な仕事ぶりを垣間見ることができます。夢二作品に込められた愛情や悲哀を感じるとともに、現代にも通じる美しいデザインの魅力をここでぜひ堪能してください。

弥生美術館と竹久夢二美術館と夢二カフェ港や

双子の姉妹のような弥生美術館と竹久夢二美術館。館内の階段なども洋館風で大正ロマンの物語の中にいるような雰囲気です!

また、敷地内には「夢二カフェ 港や」があります。店名の「港や」は夢二が日本橋呉服町に開き、運命の女性の一人、笠井彦乃と出会った小間物店の名前から付けられています。カフェは美術館に入館しなくても利用できますので、気軽に立ち寄ってみてください。

掲載内容は執筆時点のものです。 2016/10/05 訪問

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