「金刀比羅宮」の石段を登って行くと、最初に目に飛び込んでくるのが大きな「鳥居」です。この地点に辿りつくと、参拝者からは「意外と金毘羅さんは楽そうだね!」という声を耳にします。しかし、金刀比羅宮の真髄はこのようないくつもの巨大な拝殿や鳥居が至る場所に建てられているところにあり、この鳥居もそのひとつに過ぎません。まだまだ先は長いのです。
ちなみに本宮までの階段数は785段ですが、実際は786段あります。さらに「奥社」まで行くためには1368段登らなければなりません。このように達成感の後に更なる試練が待っているのが全行程における特徴です。
金毘羅の階段は他の神社仏閣に比べ勾配がきつく、高いのも特徴です。体力的にも負担がかかるので、一気に登りきろうと考えず、随所にある飲食店や土産物屋などを物見しながら、余裕をもって参拝しましょう。
総門を潜ると、大きな傘を広げて飴を売る5軒の店に足が止まります。この5軒は、特別に宮内での商いを許された「五人百姓」と呼ばれる人々です。本来、金刀比羅宮境内で商売をすることは禁止されているのですが、五人百姓は昔から特別に商いが許可されており、その所以は、古くから金毘羅の神事に協力をして経済的な援助を欠かさなかったからだそうです。
ここで販売されている「べっ甲飴」は金毘羅定番のお土産となっており、ほのかに柚子の香りがする、懐かしい素朴な「べっ甲飴」です。厚みがあり堅いため、食べ方の楽しみとして、付属の小槌で割って食べるのが慣わしとなっています。
金毘羅ではこのべっ甲飴以外にも、「幸福の黄色いお守り」や「絵馬」が有名です。お守りは神札授与所で授かることができます。絵馬は「本宮」横に絵馬殿があり、祈願成就のために奉納された無数の絵馬が掲げられています。
スタート地点から石段628段目にある大きな社は「旭社」と呼ばれる建物です。初めて参拝した方はゴールの「本宮」と勘違いして参拝してしまうのですが、この「旭社」は帰りに参拝する拝殿となっています。旭社からは「行きの道」と「帰りの道」に分かれ、石段785段目の「本宮」まではあと少しです。
「旭社」の祭神は、天御中主神・高皇産霊神・神皇産霊神・伊邪那岐神・伊邪那美神・天照大御神・天津神・国津神・八百万神と、九つの祭神を祀り、社殿もその格式に相応しい、高さ約18メートル、銅板葺の総齣「二重入母屋造となっています。
1837年の竣工では上層の屋根裏に「巻雲」、柱や扉には人物・鳥獣・草花が彫られており、どれもが卓越した技が織り成す華麗な装飾ばかりです。まさに讃岐における、天保時代の芸術の集大成がこの旭社と言っても過言ではありません。
「金刀比羅宮」は「大物主神(おおものぬしのかみ)」を祀っています。大物主神は古来から「海の神様」として漁業・航海など、海上の安全を守る神として信仰されてきました。また、「農業の神」・「医薬の神」・「技芸の神」(音楽や芸術)としても知られています。庶民はからは「どんな願いごとにもご利益がある」と信じられ、現在もその信仰心が変わることはありません。
「お伊勢参り」が大衆化する19世紀初頭から、関東からの参拝者が金毘羅に参拝するようになりました。四国は勿論のこと、中国・九州地方からの参拝者も相まって、金毘羅は「お伊勢参り」と並ぶ憧れの参詣地になりました。願いごとを叶えてくれる神様として、庶民にとって身近な存在として親しまれてきたのです。
老若男女、長い石段が続くにも関わらず、その表情は皆笑顔なのが印象的です。急な勾配を楽しむかのように、冗談を交えながら老いや人生について語りながら本宮を目指す光景は、金毘羅の寛容さを人々が体現しているかのように映ります。
金刀比羅宮は「象頭山」と呼ばれる中腹に鎮座する神社です。「こんぴら」という名前は、サンスクリット語の「クンピーラ」が語源だといわれています。「クンピーラ」はワニの姿をした水神とされ、伝説によると1000年程前にガンジス川から招いて祀った事が始まりとされています。やがて出雲から「大物主」の神が招かれ、さらに中国から伝来した「大黒天」も加わって、宗教史上稀にみる国際色豊かな宗教観念が形成されていくことになったのです。
「本宮」の先にある「三穂津姫社直所」の前には「銅馬」があります。これは「一文銭」を集めてつくられたと伝えられています。また、宮内にある御厩では、神様が乗るための「神馬」を飼養しています。運がよければ、御厩前の広場で運動している光景を観る事ができます。
そして、785段を登り切ると「本宮」の展望台に辿りつきます。眼下には讃岐平野が開け、視界良好の日には瀬戸大橋まで眺望することができます。ひたすら石段を登り続けた先には、疲労を一気に忘れさせてくれる絶景が待っているのです。
「金毘羅参り」は長い石段に象徴されるように、自分の体力との折り合いが大切になってきます。「本宮」まで辿りつければ言う事なしですが、途中で引き返してしまったとしてもご利益が減るわけではありません。
途中には「日本洋画の開拓者」といわれた高橋由一の作品や円山応挙の襖絵が拝観できる書院などがあります。さらには、銀座・資生堂パーラーが運営するレストラン「神椿」の料理も堪能することができますので、疲れたら休憩を取り、一味違った「金毘羅参り」を楽しむのも良いでしょう。
表参道からやや外れたところには、日本最古の劇場といわれる「金毘羅歌舞伎」(通称、金丸座)や、「海の科学館」などもありますので、そちらにも是非足を運んでみて下さい。
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