「な、な、なんだっ!これは!」神戸・六甲山に“爆発ガール”が参上っ〜☆「六甲ミーツ・アート芸術散歩」

「な、な、なんだっ!これは!」神戸・六甲山に“爆発ガール”が参上っ〜☆「六甲ミーツ・アート芸術散歩」

更新日:2013/11/07 12:42

沢木 慎太郎のプロフィール写真 沢木 慎太郎 放送局ディレクター、紀行小説家
芸術の秋〜☆ですが、“1000万ドルの夜景”で知られる神戸・六甲山で2013年11月24日まで、大自然を舞台に現代アートを楽しむ展覧会が開かれています。六甲山カンツリーハウスなどの人気観光スポットで開催中の『六甲ミーツ・アート芸術散歩2013』。多彩なアートを鑑賞することができ、その中には芸術家の故・岡本太郎氏もブッ飛ぶ衝撃の作品も!六甲山をピクニック気分でまわりながらアートを楽しみませんか?

六甲山の大自然と溶けあう現代アートの楽しさ

六甲山の大自然と溶けあう現代アートの楽しさ

写真:沢木 慎太郎

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『六甲ミーツ・アート芸術散歩2013』は、六甲山頂の紅葉やオルゴールの澄んだ音色を聴きながら現代アートを楽しむことができるイベント。作品を通じて六甲山の魅力を再発見しようというもので、大自然の中で感じるアートはなかなか素敵です。会期中は総勢39組のアーティストの作品を楽しむことができますよ。

六甲山頂へはドライブウエイがありますが、六甲ケーブルの利用も可能。ただし、六甲ケーブルは土砂災害のため運行休止中で、代替バスが出ているので事前にご確認を。

会場となっている六甲山頂の9施設のうち、一番のおススメはフィールドアスレチックやお花畑、パターゴルフ、ペダルボートなどが楽しめる「六甲山カンツリーハウス」。

写真のように、芝生広場の中に現代アートが立ち並び、大自然を感じながら美術作品を観賞することができます。
写真の作品は、街を行き交う女性たちの姿を描いたもので、現代女性の内面の美しさやたくましさ、凛とした表情を表現しています。

【六甲ミーツ・アート 芸術散歩2013】
■会期: 2013年9月14日(土)〜11月24日(日) ※期間中無休
■開場時間:10時〜17時 ※会場により21:30(土日祝は22:00)まで鑑賞できる作品も
■会場9施設:六甲ガーデンテラス、自然体感展望台 六甲枝垂れ、六甲山カンツリーハウス、六甲高山植物園、六甲オルゴールミュージアム、六甲山ホテル、六甲ケーブル、六甲ヒルトップギャラリー、オテル・ド・摩耶(サテライト会場)
■チケット料金: 大人(中学生以上)1800円、小人(4歳〜小学生)900円
■販売期間 :9月14日(土)〜11月24日(日)
■販売場所: 六甲オルゴールミュージアム、六甲高山植物園、六甲山カンツリーハウス、六甲ガーデンテラス内「インフォメーション」、六甲ヒルトップギャラリー、六甲山ホテル

危険が楽しい!!山小屋の上で“森のドライブ”

危険が楽しい!!山小屋の上で“森のドライブ”

写真:沢木 慎太郎

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続いてのアートは、池のほとりに設けた山小屋の上に真っ赤なスポーツカーを乗せた作品。“森のドライブ 乗車券”と書かれたカードをもらい、順番を並んで待つと、山小屋の上に乗せられたクルマにまで案内されます。ドアを開き、見晴しのいい高台で森の中を駆け抜けるドライブを疑似体験。乗車時間は3分です。木を積みあげた山小屋は簡単な造りとなっており、人が歩くとギシギシと音を立てて揺れ、その振動がクルマにまで伝わり、まるで本当に運転しているよう。

このクルマはドイツの自動車 メーカー、アウディが寄付したもので、展示会場まで走ってやってきた本物のクルマ。しかし、エンジンをかけたり、クラクションを鳴らしたりするのは禁止です。
会場にいた案内係の女性に「展示会が終わったら、このクルマはどうするのですか」と尋ねると、「まだ動けるようでしたら使います」との返事。
楽しい森のドライブが体験できたことに感謝の言葉を申し上げ、次の作品へと向かいます。

な、な、なんだっ! ショーゲキの生きたアート

な、な、なんだっ! ショーゲキの生きたアート

写真:沢木 慎太郎

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六甲山カンツリーハウスの中央入り口を抜け、池を左手に見ながらコスモスが咲くロマンチックな小高い丘を登ると、ガラス張りの可愛いお家があり、黄色い服を着た家の住人らしいお下げ髪の女性が。

目と目があった瞬間、「!?」。

「な、な、なんだっ!これは!!」と思わず叫んでしまいました。
顔が、なんだか、ちょっと変。
でも小首を傾げ、ダブルピースをしながら、にっこりと可愛く微笑んでいるではありませんか?

これは、いったい……どういうこと?
あまりものショーゲキに、目がテン、テンになってしまいました。

ガラスの家の中で疾走する若木くるみさん

ガラスの家の中で疾走する若木くるみさん

写真:沢木 慎太郎

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「あのう、お嬢さま?」と恐る恐るお声をかけさせていただきました。
「はい、こんにちは〜☆。よかったら風船に絵を描いていかれませんか?」
「絵!? えっ!?」

黄色い風船をはさんでお互いの似顔絵を描こうという試みで、このアートを実演しているのは芸術家の“若木くるみ”さん。

お客さんに描いていただいた風船はガラス張りの家の中に吊るし、その中で彼女は一生懸命にルームランナーで全力疾走しています。これは、走ることで汗をかいて部屋の湿度をあげ、お客さんが作った風船(写真の上にあるテルテル坊主みたいになったもの)がしぼまないようにという配慮によるもの。最初は風船を天井に吊るしていたのですが、今は似顔絵の風船はお客さんにプレゼントしています。

ちなみに、後頭部を剃りあげた柔肌に描かれた顔は毎朝、ご自分の気分で描かれているとか。真の芸術家です!

くるみさんは、北海道生まれ。京都市立芸術大をご卒業後、翌年の2009年に第12回「岡本太郎現代芸術賞」で岡本太郎賞をご受賞されました。

故・岡本太郎氏は、「芸術は爆発だっ!」のセリフで知られる芸術家。1970年に大阪で開催された万国博覧会のシンボル・タワーとなる“太陽の塔”などを制作しました。
太陽の塔の内部には当初、主催者側が歴史上の偉人の写真を並べる予定でしたが、岡本氏は「世界を支えているのは無名の人たちである」として無名の人々の写真を展示するように提言し、これを実現。“瞬間、瞬間を生きよ”“危険な道に、賭けよ”“法隆寺は燃えてけっこう”“誤解される人は美しい”といった数々の名言も残されています。

優しく澄んだ目の愛らしい乙女、くるみさん

優しく澄んだ目の愛らしい乙女、くるみさん

写真:沢木 慎太郎

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実は、くるみさんとは以前にもお会いしたことがあります。神奈川県川崎市の岡本太郎美術館で、同賞の受賞作品“面”を拝見したのが、初めての出会い。巨大な一万円のお札に、自分の後頭部に描いた顔を一体化させるという作品で深い感銘を受け、くるみさんの作品を鑑賞しに何度か美術館に足を運び、最終日にくるみさんにバラの花束を渡しました。

ひとつの風船をはさんで絵を描く左手の女性が、くるみさん。その素顔はとても恥ずかしがり屋で、優しく澄んだ目をした、とっても愛らしく可愛い純粋な乙女。
たくさんの来場者の方たちに囲まれ、ピースサインをしながら後頭部に描いた後ろの顔で記念撮影に気さくに応じるくるみさんですが、写真に写ることのない表の顔はなんとも優美でいいお顔なのです。

「芸術は爆発だっ!」
爆発というと、ドカーンと音がして、モノが壊れたり、血が流れたりする暴力的なテロを思い浮かべがちですが、岡本太郎氏が言う爆発は、音もなく、宇宙に向かって精神が、いのちが、ぱあっと静かに開くということ。
瞬間、瞬間こそが永遠であり、その一瞬に向かって身を投げ出し、無に向かって飛び込んでいく世界を意味し、それは非常に美しく、脆いもの。
そんな岡本氏の静かな精神世界を引き継ぐストイックな魂を、くるみさんの作品から感じられます。

以上、いかがでしたでしょうか?
標高931メートルの六甲山は、明治時代に外国人居留地に住んでいた欧米人らによって開発された場所で、「六甲オルゴールミュージアム」や「六甲山ホテル」「六甲ガーデンテラス」といった異国情緒が漂う観光スポットが多く、さらに大阪湾をぐるりと取り囲む宝石箱のような“1000万ドルの夜景”を見渡すことができる名所。
神戸観光の際は、『六甲ミーツ・アート芸術散歩』にもぜひともお出かけください。芸術鑑賞の後は、六甲山ホテルの名物料理である「ジンギスカン料理」を食べながら素晴らしい夜景を楽しまれてはいかがでしょうか?

ご紹介した六甲ミーツ・アートのほかにも、六甲山光のアート『Lightscape in Rokko』や『港で出合う芸術祭 神戸ビエンナーレ2013』といった現代アートも神戸で開催中!

六甲山光のアートは2014年1月13日までの期間限定で、“六甲枝垂れ”と呼ばれる展望台で行われているイベントで、六甲カンツリーハウスからリフトに乗って5分で行ける場所にあります。展望台は、六甲山上に建つ“一本の大きな樹”を表現したもので、枝垂れをイメージさせるヒノキの枝葉が表面を覆ったドーム。1000万色以上の色彩表現ができる最新のLED照明を使い、限りなく自然光に近い光で展望台を内部から照らし出すアートは、とても幻想的ですよ!

一方、神戸ビエンナーレ2013は、神戸港のメリケンパークや兵庫県立美術館などを舞台に、12月1日までさまざまな現代アートを楽しむことができます。特に、遊覧船から神戸港を巡りながらアート作品を鑑賞する「神戸港・海上アート展」は大人気なので、ぜひお出かけください。

おわりに

筆者が東京にいたころ、職や恋を失い、失意のどん底にいた時に岡本太郎美術館で出会ったのが、くるみさん。柔らかで傷つきやすい心を生で押し出し、命を投げ出すかのようなモーレツな彼女のパワーに圧倒され、くるみさんに魂を救われた気がしました。

何も無理をして日本にいる必要はない。世界への旅の途中で死んでいけたら本望だ。そうやって、広い世界へと目を見開かせてくれたのが、くるみさんでした。
くるみさんは、命の恩人。おもしろく、白い恋人。

一日が終わり、「おつかれさま〜☆」と言って、くるみさんの手を握ると、なんて冷たい手。六甲山頂は夕方から夜にかけてかなり冷え込むので防寒対策が必要。これから寒い季節なので、くるみさんもどうぞ手袋をはめて、あたたかくしてお過ごしくださいねっ☆

掲載内容は執筆時点のものです。 2013/10/27 訪問

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