人吉温泉の開湯は定かではありませんが、1492年に第12代当主である相良為継が入湯したとの記録も残っています。現在多くの宿が建ち並ぶ人吉駅近くに温泉が開かれたのは1910年(明治43年)、以後いくつもの公衆浴場が作られてゆきました。
「人吉旅館」の創業は昭和9年のこと。北海道の乾物を卸す魚屋を営んでいた初代が温泉を掘り当て、当時としては珍しい旅館を併設したのが始まりです。創業時と変わらない姿を今に残し、近代和風建築の建物は国の登録有形文化財にも認定されるほど。菱形を3つ重ねた「松皮菱(まつかわびし)」と呼ばれる窓は、昭和を感じるノスタルジックな雰囲気を醸し出しています。
美しく磨かれた長い廊下に、木枠のガラス戸。中庭に目を見やれば四季を彩る日本庭園が心を癒やしてくれます。何をするでもなく、ただゆっくりと時を過ごす。そんな旅行を求めるなら最適な宿と言えるでしょう。この廊下で記念撮影をするだけで、実に味わい深い写真になりますよ。
日本三大急流のひとつである球磨川が流れ、山々に囲まれた自然豊かな環境。そこでは名産の鮎をはじめ、四季の食材が卓を彩ります。豆腐の味噌漬け、鮎ウルカ、ゆべしといった山里の前菜に始まり、山魚のお造り、球磨の黒豚など、訪れる時季それぞれの味わいが旅人を楽しませてくれるはずです。
これらの郷土料理をいただくなら、ぜひ地元の名産である球磨焼酎と合わせたいもの。人吉・球磨地方には28の蔵元があり、原料や蒸留法などそれぞれ独自のこだわりで自慢の銘柄を作り上げています。元々有数の米どころとして知られる人吉の地。上質の米を使った焼酎は、米焼酎ならではのスッキリとした味わいとふくよかな甘みや旨味が広がり、特に和食との相性が抜群です。
また事前に予約をすれば韓国料理を中心としたコース「参鶏湯和韓折衷料理」への変更も可能です。和の「球磨川鮎の塩焼き」や「川魚のお造り」はもちろん、「海鮮チヂミ」や「プルコギ」などの本格韓国料理も味わえます。何と言ってもコラーゲンたっぷりの「参鶏湯(サムゲタン)」は、肌が美しくなると女性に大人気なのだとか。純和風旅館ながら食の選択肢が多いというのも嬉しいポイントです。
温泉施設は内湯が男女各1つずつに貸切内湯が2室。いずれも源泉掛け流しで、ナトリウム炭酸水素塩泉のとろみある湯が注がれています。内湯は時間により男女が入れ替わる方式で、一つは岩風呂風、もう一つは深い湯船の中に松の木のベンチを置いた珍しい様式。ベンチがあることで楽な姿勢で湯浴みを楽しめます。
人吉温泉は美人の湯としても知られ、皮膚の角質を柔らかくして古い角質を落としてくれると好評です。また飲めば胃の働きを正常にする効果があるとも言われます。近くには歴史ある公衆浴場がいくつも点在しているので、湯巡りの拠点とするのもオススメですよ。
球磨川のほとりに佇む数寄屋造りの建物。宿内に一歩足を踏み入れると創業当時の雰囲気がそこかしこに残ります。ロビーには白黒テレビや古い扇風機が置かれ、ショーケースに飾られたレトロなおもちゃに子供時代を思い起こす人もいるかもしれません。
客室ごとに異なる意匠に加え、障子や天袋など細部にまで施された当時の職人の技術。現在の演出された懐かしさでは表現できない、年月が育んだ空間こそ人吉旅館の魅力と言えるでしょう。
JR肥薩線人吉駅から徒歩約10分と、人吉観光の拠点としても最適な人吉旅館。すぐ近くには熊本県で初の国宝指定された「青井阿蘇神社」があり、茅葺きされた桃山様式の楼門などが見学できます。また球磨焼酎の蔵巡りや、古くからの公衆浴場を回るにも便利な立地です。宿での滞在はもちろん、人吉の良さをぜひ体感してみて下さい。
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