写真:泉 グルン
地図を見る約11年もの歳月をかけて完成したという台中国家歌劇院。あまりにも大胆なデザインと過去に例のない施工法のため「世界で最も建築がむずかしい建物」といわれ、何度も工期が延期されたといういわくがあります。設計者の伊東氏も「完成自体が奇跡。日本だったら絶対に採用されなかっただろう」と述べたそうです。それほど変わった建物なのです。
そのユニークさは、まず外観からもみてとれます。個性的な様相は建築というより、まるで巨大なオブジェのよう。さかずきのように見えるコンクリート部分にはたくさんの丸い穴が開けられ、建物上部の端には管のような凹みがあります。
設計のコンセプトは「音の洞窟」。「芸術と心の音を聴く」という意味合いが込められていて、設計者の伊東氏はストリートミュージシャンから着想を得たとか。そう聞くと、曲線のフォルムは太鼓に、管のような凹みは耳の鼓膜のようにも見えてきますが、きっと正解はなく、見る人の感性にゆだねられているのでしょう。
夜、ライトアップされると花瓶型のガラス部分がくっきりと浮かび上がり、より幻想的です。イベント時にはプロジェクションマッピングも行われるそうです。
写真:泉 グルン
地図を見る台中国家歌劇院は、お芝居を観なくても自由に建物内に入ることができます。内部に足を踏み入れると、ちょっと不思議な感覚に襲われるでしょう。なぜなら、どこもかしこも曲線ばかり。天井も壁もすべてカーブを描いていて、しかもそのどれもが不規則につくられているのです。
それを最もよく体感できるのが2階のホワイエです。ホワイエとは劇場のロビーや休憩所のことで、ここでは特別な催しがないときに無料開放しています。
よく見ると、梁や柱といった建築にあるべきものがまったく見当たりません。洞窟というよりも、まるで生き物の体内に入り込んでしまったかのような錯覚さえ覚えます。
伊東氏は、光や空気、水が部屋から部屋へと流れていく自然をイメージして設計したそうで、影響を受けたチベット仏教の考えかたがベースになっているとか。
そういえば1階には小川のような水路が設けられ、階段踊り場の壁に投影された水玉は外壁に開けられた丸い穴から射す陽光。まるで空間そのものがドラマのようです。
写真:泉 グルン
地図を見る台中国家歌劇院は3〜4階がなく、2階の上は5階になります。エレベーターもありますが、ここでは吹き抜けの階段をのぼってみましょう。
不規則な螺旋状の階段は、まるでアリの巣の中にあるトンネルのように幅もまちまち。人がやっとすれ違えるような狭い場所もありますが、狭いところから突然、広いガラス張りの窓にさしかかる開放感がたまりません。眼前に広がる新市街の眺望にも目を奪われてしまいます。
5階には、「世界で最も美しい書店」に選ばれたことのある「好様VVG」グループが運営する書店やセレクトショップ、レストランが入っています。オシャレでカワイイ商品もさることながら、展示方法やフロアの構造もユニークで、見て歩くだけでも十分に楽しめます。ほかに1階のカフェ、6階のビヤバーもVVGが運営しています。
写真:泉 グルン
地図を見る最上階の6階は「スカイガーデン」と名づけられた屋上庭園になっています。まず目を引くのが、まるで月面のクレーターをおもわせる白い構造物の数々。この白亜のクレーターと背後にそびえる高層ビルとの取り合わせは近未来をかいま見るかのような、なんとも不思議な光景です。
この屋上は自撮りスポットとしても人気のようで、休日はカメラをぶら下げた若いカップルの姿をよく目にします。非日常的な光景に加え、白いクレーターがレフ版のように光を反射するためでしょうか。天気のいい日は美しいポートレートが撮れそうです。
提供元:臺中国家歌劇院
http://www.npac-ntt.org/index肝心の劇場についても触れなくてはいけませんね。台中国家歌劇院には全部で4つの劇場があります。最も大きなグランドシアター(大劇院)は2階にあり、客席が2007席、うち障害者席30席を含みます。内装はテーマカラーの赤で統一されています。
同じく2階には客席796席のプレイハウス(中劇院)もあり、やはり20席の障害者席が設けられ、テーマカラーはオーシャンブルーをイメージした青。どちらも曲線を多用しているので、音が乱反射するなど音響面での効果も期待大です。さらに地階には客席200席のブラックボックス(小劇場)があり、バックステージの扉を開ければ半円形の野外劇場と一体化するユニークな造りに。
劇場の見学は事前予約のツアーでのみ可能です。ただ、やはりお芝居を観ながら体感するのが一番。気になる演目を探して、ぜひ実際に観劇してみましょう。建築のコンセプトである「芸術の心と音を聴く」のように、五感で味わってこそ劇場の真価がわかるのかもしれません。
台中国家歌劇院は、デパートや高級ブランド店などが集まる新市街にあります。アクセスは、台中駅(台中火車站)から市バス75番の「臺中榮總」方面行きに乗り「臺中國家歌劇院」バス停で下車。所要約30分です。
あるいは新光三越デパート前のバス停「新光三越站」または「新光/遠百」で下車、徒歩約7〜8分。どちらも台中駅(台中火車站)から多数の路線が出ています。もし、バスを降りて方向がわからなければ「台中国家歌劇院」と書いた紙を見せて人に尋ねれば教えてくれるでしょう。
ちなみに台中市内の市バスは、台湾版Suicaともいえる台湾好玩カードまたは悠遊カードを使えば10km以内が無料です。とくに台湾中部限定の台湾好玩カードは商店やホテルなどでさまざな特典が受けられるので1枚持っていると便利ですよ。
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(2024/10/3更新)
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