写真:高田 真美
地図を見るニューメキシコ州北部の乾燥した高地をドライブしていると、突如現れる岩山「エルモロ (El Morro)」。この切り立った岩山の麓には、雨や雪解け水が流れ落ちて貯まった池があり、古くから多くの人々が水源を求めてこの場所にやってきました。そして、このオアシスを訪れた人々は、柔らかな砂岩でできた岩壁に絵や文字を刻み、「落書き」を残していったのです。
歴史的に重要なこれらの「落書き」を守るため、米国政府は1906年にこの場所に文字や絵を刻むことを禁止し、「エルモロ国定公園 (El Morro National Monument)」として保護されることとなりました。現在、エルモロ国定公園の岩壁には、11世紀以降、およそ900年の年月に亘り刻まれた2000以上もの「落書き」が残っています。
写真:高田 真美
地図を見るエルモロ国定公園の岸壁に残る「落書き」で、もっとも古いものは、11世紀から15世紀初頭にかけてアナサジ族(古代プエブロ人)によって記されたもの。
アナサジ族は、アメリカ先住民のプエブロ人の祖先と考えられている人たちで、紀元前300年ごろから、ニューメキシコ州・コロラド州・アリゾナ州に広がる乾燥した高地で農耕を営んで生活していました。
写真:高田 真美
地図を見る岩壁に残るアナサジ族のペトログリフ(岩に刻まれた絵や記号)を見て触発されたのでしょうか、その後、この地を通る旅人たちがエルモロの麓にある水辺で休憩をした際に、自分の名前やメッセージをこの岩壁に刻むようになります。岩に残された「落書き」を読んでみると、17世紀初頭から19世紀初頭にかけてはスペイン語の名前やメッセージが、19世紀中旬以降は英語の名前やメッセージが残されていることに気付きます。
現ニューメキシコ州一帯にスペイン人がメキシコから北上してスペイン領となったのが16世紀後半。そして、その後、アメリカ合衆国領となったのが19世紀中頃。正に、この岩壁には、スペインによるアメリカ大陸の植民地化や、アメリカ人による西部開拓といった「歴史の変遷」が記されているのです。
写真:高田 真美
地図を見る岩壁に刻まれた「落書き」を鑑賞した後は、エルモロの頂上まで登ってみましょう!エルモロの頂上には、白やベージュのサンドストーンの岩で出来た不思議な景色が広がっています。エルモロの周りには視界を遮るものもないので、眺望も素晴らしく、大自然の美しさを満喫することができます。エルモロの頂上まで登るこの「メサ トップ トレイル (Mesa Top Trail)」は、全長3.2キロ。ループ状のトレイルになっていますので、行きと帰りでまったく違った景色が楽しめるのも嬉しいところです。
写真:高田 真美
地図を見るエルモロの頂上には、古代プエブロ人の遺跡も残っています。1950年代に発掘されたこの遺跡は、13世紀後半に古代プエブロ人によって築かれた住居跡で、この岩山の上には1500人もの人が住む集落があったといわれています。この集落に住む人々は、岩山の下に広がる平地でトウモロコシなどの作物を収穫し、岩の間に貯まった水や麓の池に貯まった水を利用して、岩山の頂上で生活をしていました。アメリカ合衆国に残る古代プエブロ人集落の遺跡は、その殆どが切り立った崖の上にあるものが多いのですが、何故崖の上に集落を造るようになったのかは明らかになっていないそうです。
エルモロ国定公園は、ニューメキシコ州のアルバカーキ (Albuquerque) から車で約2時間。アクセスしづらい場所にあるため、一般的にはあまり知られていない国定公園ですが、古代プエブロ人の歴史・スペイン入植の歴史・アメリカ合衆国西部開拓の歴史という、3つの歴史の変遷を、岩壁に残った「落書き」という形で、はっきりと目で見ることができるユニークな国定公園です。
また、辺鄙な場所にあることが幸いして、周辺には当時のままの自然が残っているため、古代プエブロ人の遺跡や、岩壁に残された「落書き」を見ながら、タイムスリップしたかのようなノスタルジックな気分に浸ることができるのです。
ニューメキシコ州には、古代プエブロ人の遺跡が、この他にも数多く残っています。アメリカ原住民の歴史や文化に興味がある方にはお勧めのデスティネーションです。
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この記事を書いたナビゲーター
高田 真美
オーストラリア在住。旅行が好きで、世界中を飛び回っています。「SOWHATの世界旅日記」「メルボルン美味しい生活」という2つのブログを運営しています。
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