写真:乾口 達司
地図を見る吉備津神社(きびつじんじゃ)は、岡山県岡山市北区に位置する神社。古代の吉備国の総鎮守とされており、吉備国が備前・備中・備後の3国に分割されてからは備中国の一宮として、多くの崇敬を集めています。主祭神は大吉備津彦命。大吉備津彦命は大和朝廷から派遣され、吉備国を統治した人物とされています。
吉備津神社を代表する建造物といえば、大吉備津彦命とその一族をまつった写真の本殿を挙げないわけにはまいりません。国宝に指定されている現在の本殿は、室町時代、足利義満によって再建されたものですが、島根県の出雲大社本殿、京都府の八坂神社本殿に次ぐ大きさで、神社建築としては全国屈指の規模を誇ります。実際、本殿を目の前にすると、その大きさに圧倒されること、間違いなし。本殿を撮影する場合、大き過ぎて、近くからだとカメラのフレームにおさまりません。その全体像を撮影するなら、少し高台となった摂社の一童社付近から眺めることをお勧めします。
写真:乾口 達司
地図を見る本殿でまず注目していただきたいのは、ご覧の屋根。入母屋造の屋根が前後に2 つ並べられており、上から見下ろすと「エ」の字の形をしています。そして、それをもって1つの屋根とし、屋根の全体を檜の皮で葺いています。「比翼入母屋造」(ひよくいりもやづくり)または「吉備津造」と呼ばれるこの建築様式は吉備津神社独特のもので、他に類例を見ないもの。この点からも吉備津神社ならではの独自性が印象づけられることでしょう。
写真:乾口 達司
地図を見る独特の比翼入母屋造についつい目を奪われてしまいがちですが、上ばかりに目を奪われず、本殿を支える巨大な土壇にも目を向けましょう。
ご覧のように、土壇は漆喰で塗り固められており、その様子が亀のお腹に似ていることから「亀腹」(かめばら)と呼ばれています。亀腹は寺院建築でしばしば見られますが、神社建築で使われているのは珍しいこと。ここからも吉備津神社本殿が寺院建築の様式を取り入れていることがうかがえます。
写真:乾口 達司
地図を見る本殿の前面には拝殿が接続されており、現在、本殿とセットで国宝に指定されています。写真はその拝殿を下から見上げた一枚。ご覧のように、見上げるほど高い天井からもその規模がうかがえますが、もう一つの特徴としては、随所に中国・宋代の建築様式が取り入られていることが挙げられます。支柱に穴を設け、そこに別の木材を通して木組の構造化をはかったこの様式は「大仏様」(だいぶつよう)と呼ばれ、鎌倉時代初期に活躍した僧・重源によってもたらされたとされ、奈良県・東大寺の南大門や兵庫県の浄土寺浄土堂がその代表例として挙げられています。
寺院建築に多く見られる大仏様が神社建築に使われているという点も、先に紹介した亀腹と同様、吉備津神社本殿の特異性を指し示しているといえるでしょう。
写真:乾口 達司
地図を見る写真は拝殿から本殿の正面部分を撮影したものですが、内部は外側から外陣・朱の壇(あけのだん)・中陣・内陣・内々陣と入れ子構造になっており、しかも、内部に向かうにつれて床が高くなっていきます。この構造は吉備津神社本殿ならではであり、吉備津神社本殿がいかに特異で稀有な神社建築であるかを指し示しています。
吉備津神社本殿がいかに貴重な神社建築であるか、おわかりいただけたでしょうか。その特異な構造にどのような意味があるのか、解明されていないことがたくさんありますが、ぜひ、吉備津神社本殿に参拝し、その謎に挑んでみてください。
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この記事を書いたナビゲーター
乾口 達司
これまでは日本文学や歴史学の世界で培った見識にもとづいて数多くの評論や書評を執筆してまいりました。奈良生まれ、奈良育ちの生粋の奈良っ子。奈良といえば日本を代表する観光地の一つですが、地元民の立場からい…
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