気仙沼リアス・アーク美術館は東日本大震災を未来に伝える唯一の美術館

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気仙沼リアス・アーク美術館は東日本大震災を未来に伝える唯一の美術館

気仙沼リアス・アーク美術館は東日本大震災を未来に伝える唯一の美術館

更新日:2017/11/03 12:39

風祭 哲哉のプロフィール写真 風祭 哲哉 B級スポットライター、東海道完歩ブロガー、青春18きっぷ伝道師

気仙沼の町を見下ろす高台にあるリアス・アーク美術館。一見どこにでもありそうな普通の美術館ですが、ここには世界中どの美術館にもない展示物があるのです。
それは東日本大震災の直後から、自らも被災した学芸員たちが2年にわたって命懸けで撮った被災写真や収集した被災物の数々。
その写真に添えられた撮影者の言葉や被災物にまつわる物語が、見る人の心を激しく揺り動かすのです。

リアス・アーク美術館とは

リアス・アーク美術館とは

写真:風祭 哲哉

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リアス・アーク美術館は1994年に開館した公立美術館。
三陸の海岸地形を表す「リアス」と、「方舟」を意味する「アーク」を組み合わせて名付けられたこの美術館は、旧約聖書の洪水伝説に登場する「ノアの方舟」のごとく、荒波にも似た激しい時代の変化の中においてもこの三陸地域の文化資源を収集して後世に伝えていこうという目的で設立されました。

そのため、ここは東北・北海道を中心としたアーティストの現代美術作品や、「食」をテーマに気仙沼・南三陸地域の生活文化を紹介する常設展示や企画展を行う美術館でした。しかし震災後およそ2年にわたる休館を経たのち再開となった2013年4月からは「東日本大震災の記録と津波の災害史」という常設展示を新設、公開しています。

この「東日本大震災の記録と津波の災害史」で展示されているのは、この美術館の学芸員が被災現場で撮影した写真203点、収集した被災物155点、歴史資料等137点ですが、その展示手法が非常に特徴的なのです。

時を忘れて読み込んでしまう写真と言葉の力

時を忘れて読み込んでしまう写真と言葉の力

提供元:リアス・アーク美術館

http://rias-ark.sakura.ne.jp/2/

『2011年3月29日、気仙沼市浜町(鹿折地区)の状況。津波被災現場を歩くと、目にする光景の非現実性、あまりの異常さに思考が停止してしまう。常識に裏付けられた論理的な解釈ができず、一瞬、妙に幼稚な思考が顔をのぞかせる。「巨人のいたずら…」、などと感じたりするのだ。実際、そんな程度の発想しかできないほどメチャクチャな光景が果てしなく続いていた』
(この上の写真に添えられたキャプションより)

ここに飾られている写真は、被災地の外から来た報道陣が、ピカピカのスニーカーを履いて望遠レンズで撮影をしているものではありません。ここにあるのは自らも被災者であった学芸員たちが、着の身着のまま泥まみれになって、まさに命懸けで、時に涙を流しながら現場を歩いて写したものばかり。

被災現場を五感で知っている撮影者だからこそ、現場に立った人間しか味わえない感覚や思考を伝えることができるのです。写真に添えられているキャプションには、彼らがそのとき何を想い、何を伝えるために撮影したものなのか、が生々しい言葉で記されています。
そのため、これらの写真に添えられた言葉を一度読み始めると、すべての写真のキャプションを読まずにはいられなくなってしまうほど。

異例の手法で展示される震災の記録

異例の手法で展示される震災の記録

写真:風祭 哲哉

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このように「東日本大震災の記録と津波の災害史」で展示されているひとつひとつの被災現場写真には、撮影者による長文のキャプションが添えられています。同様に、展示被災物(=被災現場から収集した物品)の横には、被災現場でそれらが発していた声なき声を基に、学芸員が創作した物語が添えてあるのです。
客観性を重んじる博物館学的な立場からは、展示物に主観やフィクションが入り込んでいいのか、という意見もあるようですが、この美術館はあえてそうした手法を選んでいます。

その理由は、この取り組みが将来この地域で再び想定される地震や津波災害に向けた防災教育や減災教育のためのきっかけとなることを目的のひとつとしているからなのです。人の命に関わることだからこそ、それを頭で理解するのではなく、身体が震えるような、気がついたら涙が出てくるような感覚にさせることが必要だ、という判断から、異例ともいえるこうした直情的な手法がとられています。

被災者たちの大切な家財は人生の記憶。ガレキとは呼ばない

被災者たちの大切な家財は人生の記憶。ガレキとは呼ばない

提供元:リアス・アーク美術館

http://rias-ark.sakura.ne.jp/2/

学芸員が被災現場から拾い集め、展示されている被災者の家財や思い出の品を、ここでは「被災物」と呼んでいます。これらはよくガレキと表現されていますが、それは正しい表現ではありません。瓦礫とは、本来瓦片と小石とを意味し、転じて価値のない物、つまらない物を表す言葉です。
この美術館は私たちに問いかけます。被災者にとって被災物は「価値のない、つまらないもの」なのでしょうか?それらは破壊され、奪われた大切な家であり、家財であり、何よりも、大切な人生の記憶なのではないでしょうか、と。

被災者たちの大切な家財は人生の記憶。ガレキとは呼ばない

提供元:リアス・アーク美術館

http://rias-ark.sakura.ne.jp/2/

『平成元年ころに買った炊飯器なの。じいちゃん、ばあちゃん、わたし、お父さんと息子2人に娘1人の7人だもの。だから8合炊き買ったの。そんでも足りないくらいでね。
今はね、お父さんと2人だけど、お盆とお正月は子供たち、孫連れて帰ってくるから、やっぱり8合炊きは必要なの。普段は2人分だけど、夜の分まで朝に6合、まとめて炊くの。
裏の竹やぶで炊飯器見つけて、フタ開けてみたら、真っ黒いヘドロが詰まってたの。それ捨てたらね、一緒に真っ白いごはんが出てきたのね・・・夜の分、残してたの・・・涙出たよ』

これは被災物として展示されている炊飯器の横に書かれたキャプション。真っ黒なヘドロに埋まった炊飯器が発していた声なき声、それはこの持ち主だったおばあちゃんの声だったのでしょうか。

家のタイル、鉄くずのようになった自動車、赤いランドセル、3時33分で止まった時計、泥だらけのミッキーマウスのぬいぐるみ・・・
そのひとつひとつに、そこで暮らしていたひとりひとりの記憶が宿っているのです。私たちはそれをもはやガレキとは呼ぶことはできません。

震災を記憶し、未来に伝え、共有化するために

震災を記憶し、未来に伝え、共有化するために

写真:風祭 哲哉

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リアス・アーク美術館を訪れると、私たちが一般的なメディアから得てきた情報では気づかなかったものがたくさん見えてきます。
たとえばそれは被災者でなくては知りえない事実や視点、感情、そして教訓。彼ら以外、語ることができないたくさんの物語がここにはあるのです。

このリアス・アーク美術館が伝えているのは、同じような悲劇を二度と繰り返さないでほしい、ということ。そのためには私たちが心を動かすことによって震災を記憶し、未来に伝え、共有化することが必要なのです。
ぜひ一度ここに来て、身体が震えるような、気がついたら涙が出てくるような体験をしてみてください。

リアス・アーク美術館の基本情報

住所:宮城県気仙沼市赤岩牧沢138-5
電話番号:0226-24-1611
開館時間:午前9:30〜17:00(最終入館 16:30)
休館日:月・火・祝日の翌日(土日を除く)
アクセス:気仙沼駅から気仙沼西高行きバスで約30分、リアス・アーク美術館下車

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掲載内容は執筆時点のものです。 2016/11/20 訪問

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