金沢の町並みは茶屋町のみにあらず!卯辰山麓・寺町台の寺町を見てこそ金沢通!!

金沢の町並みは茶屋町のみにあらず!卯辰山麓・寺町台の寺町を見てこそ金沢通!!

更新日:2013/11/11 11:57

木村 岳人のプロフィール写真 木村 岳人 フリーライター
江戸時代に加賀藩の城下町として発展し、江戸、京、大坂に次ぐ第四の都市として栄えた金沢市。その見どころは数多く、何度旅行しても飽きる事がない魅力的な観光都市です。

そんな金沢の観光スポットの中でも、特に有名なものの一つとして東山ひがしの茶屋町があります。確かに茶屋町は金沢を語るにあたり外せない要素なのですが、それと同様、いやそれ以上に金沢の町並みを特色付けているのが市内の三ヶ所に残る寺町なのです。

茶屋町よりもずっと古い、城下町の入口に残る寺院群

茶屋町よりもずっと古い、城下町の入口に残る寺院群

写真:木村 岳人

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金沢城を中心とする城下町は、東側を流れる浅野川と、西側を流れる犀川によって挟まれた土地に広がっています。これら二本の川を天然の外濠とし、金沢城を守っていたのですね。

江戸時代初期の元和2年(1616年)、城下町の再整備にあたった加賀藩三代藩主の前田利常は、城下町に散らばっていた一向宗(浄土真宗)以外の寺院を掻き集め、城下町の東口にあたる浅野川の東岸、西口にあたる犀川の西岸、そして南口にあたる小立野台地の三ヶ所にまとめて移転させました。こうして誕生したのが、「卯辰山麓寺院群」「寺町台寺院群」「小立野寺院群」と呼ばれる三つの寺町です。

ちなみにその後、江戸時代後期の文政3年(1820年)には城下町に散らばる茶屋がまとめられ、東口と西口に茶屋町が形成されました。そのうち東にあたるのが、かの有名な「ひがし茶屋町」です。茶屋町が築かれたのは、寺町よりもずっと後の事なのですよ。

城下町を守る為に作られた三つの寺町

城下町を守る為に作られた三つの寺町

写真:木村 岳人

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それにしても、なんで利常は城下町の寺院を移転させてまで、わざわざ寺町を築いたのでしょうか。その理由は二つあります。

まず一つ目は、金沢城の防衛能力を強化する為です。金沢城は弱点も多く、あまり堅固な城郭ではありませんでした。そこで城下町の入口に寺町を設ける事で、有事の際にはこれらの寺町に武士を配置し、砦として用いる意図があったのです。

二つ目の理由は、一向一揆対策です。一向宗以外の寺院をまとめ、一向宗の寺院はあえて城下町内に散在させたままにしておく事で、一向宗に対して監視の目を光らせ、一揆を未然に防ぐという目的がありました。

ひがし茶屋町を取り囲むように広がる「卯辰山麓寺院群」

ひがし茶屋町を取り囲むように広がる「卯辰山麓寺院群」

写真:木村 岳人

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浅野川大橋を渡り、その右手の路地を進んでいくと、程無くして「ひがし茶屋町」に出ます。道幅の広い通りに沿って、本二階建ての伝統的な茶屋建築がずらりと並ぶ、なんとも瀟洒なエリアです。

この茶屋町だけ見て帰る人も多いようですが、しかしそれはあまりにもったいない。せっかくここまで来たのであれば、茶屋町を取り囲むように広がる「卯辰山麓寺院群」を散策するのが良いでしょう。

茶屋町の突き当りを北へと進み、まるで迷路のような細道を縫うように歩いて行くと、やがて寺院の甍が軒を連ねる路地へと差し掛かります。石垣や土塀が続き、またクランク状に折れ曲がった角も多く、雰囲気の良さは茶屋町にも負けていません。訪れる人も少なく、のんびり散策するにぴったりです。

約70ヶ寺が密集する「寺町台寺院群」も見逃せない

約70ヶ寺が密集する「寺町台寺院群」も見逃せない

写真:木村 岳人

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こちらは城下町の西側。犀川大橋を渡り、蛤坂と呼ばれる坂道を上っていくと、その辺りはもう「寺町台寺院群」です。旧鶴来道と旧野田道という二本の街道に沿って、約70もの寺院が建ち並ぶ、金沢最大の寺町です。

先程の「卯辰山麓寺院群」は卯辰山の傾斜地にある為アップダウンが多く、路地も地形に合わせて複雑に入り組んでいましたが、それに対してこちらは直線的。通りに面して町家が並び、寺院は少し奥まった位置に建っているのが特徴的です。

これだけの数の寺院があれば、当然ながら鐘の数も多く、朝や夕方にはあちらこちらから鐘の音が鳴り響くといいます。情緒豊かな寺町台の鐘の音は、「寺町寺院群の鐘」として日本の音風景100選にも選定されました。

寺町台寺院群の防衛拠点だった、奇妙な仕掛け満載の「忍者寺」

寺町台寺院群の防衛拠点だった、奇妙な仕掛け満載の「忍者寺」

写真:木村 岳人

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寺町台寺院群に建つ寺院の一つに、「忍者寺」と呼ばれるお寺が存在します。正式名称は正久山妙立寺。寺町を築いた前田利常によって、寛永20年(1643年)に創建されました。

その本堂には落とし穴や見張りの望楼が備わり、また庫裏の外観は二階建てなのに内部構造は4階建てであるなど、まさに忍者寺と呼ばれるにふさわしい、外敵をあざむく為の様々な仕掛けが施されています。これは前述の通り、寺町は城下町の防衛の為に作られた為で、この妙立寺は寺町台寺院群の防衛拠点だったのです。

不思議な仕掛けを持つ妙立寺は観光スポットとしても人気ですが、周囲に密集する他のお寺や、通りに建つ町家もなかなか良い雰囲気。忍者寺を拝観した後は、ぜひとも周囲を散策してみて下さい。

2012年には国の重要伝統的建造物群保存地区への選定も!

今回紹介した「卯辰山麓寺院群」と「寺町台寺院群」は、城下町が築かれた当初からの町割を残す寺町として、2012年には国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されました。今後は両寺町の無電柱化も進むそうで、ますます金沢の歴史的景観に磨きがかっていくのでしょうね。

数多くの見所を持つ金沢の中でも、江戸時代の雰囲気が色濃く漂うこれらの寺町。その路地を歩きながら、昔ながらの雰囲気に浸るのも一興じゃないですか。

【アクセス情報】
<卯辰山麓寺院群>
金沢駅より北鉄バス「橋場町方面行き」で約15分、「東山」バス停下車。
<寺町台寺院群>
金沢駅より北鉄バス「野田山方面行き」または「有松方面行き」で約20分、
「広小路」バス停下車。

【妙立寺(忍者寺)】
*拝観には電話での事前予約が必要です!
(定員に達していなければ、当日の現地申込みも可能)
拝観時間:午前9時〜午後4時30分(冬期は午後4時まで)
拝観料:大人(中学生以上)800円、小学生600円、未就学児は拝観不可

掲載内容は執筆時点のものです。

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