更新日:2023/04/20 13:48
広島県福山駅からバスに揺られて30分、賑やかな駅前からは想像できないような、瀬戸内海に面した港町・鞆の浦(とものうら)に到着します。
ミシュランガイドでも星を獲得していますが、日本で最初の国定公園の1つとして指定された瀬戸内国立公園を代表する景勝地。瀬戸内海の中央に位置する潮の流れの変わる場所なので、潮待ち・風待ちの港として、万葉の時代から多くの船や偉人が立ち寄り、歴史ある自然豊かな港町として栄えてきました。
数々の歴史の舞台となった鞆の浦ですが、幕末、坂本龍馬の乗った海援隊の蒸気船「いろは丸」が大阪へ向かう途中、ここ鞆の浦沖で霧の中から突然現れた紀州徳川藩の軍艦に衝突され、沈没してしまう“いろは丸事件”の舞台となったことでも有名です。
そのいろは丸事件談判を行うため坂本龍馬が海援隊とともに利用した町家が、宮崎駿監督のデザインにより宿兼カフェとして甦ったのが写真の「御舟宿いろは」です。
本瓦葺の屋根に、漆喰の白壁、ベンガラ塗りの柱や窓枠など、今ではすっかり鞆の浦らしい「粋」な外観を取り戻していますが、2008年にOPENさせるまでは、老朽化が進んだ空家で取り壊し寸前だったそうです。宿泊施設としてはもちろん、古民家カフェとしてたくさんの方が旅のスタイルに合わせて利用できるよう運営されています。
宮崎さんをはじめとした町の方々の想いによって、鞆の浦に幕末の雰囲気が蘇りました。潮待ち・風待ちする船客の様子が目に浮かぶようです。
中に入ると、「崖の上のポニョ」の構想がここ鞆の浦でうまれたのを裏付けるように、宮崎さんが鞆の浦を描いた一筆箋や、ポニョクッキーなど、オリジナルグッズや資料などが!
そんな宮崎さんと縁の深いものがいたるところに置かれている中、思わず足を止めて見入ってしまうのが、この「御舟宿いろは」をゼロからデザインする過程の、ジブリ映画のワンシーンのような素晴らしいスケッチの数々です。
外観から、宿の部屋の間取りまで、大きすぎないか?などのコメントがいくつも書き込まれ、詳細まで描かれた水彩画は、宿の入り口にある喫茶や食事でも利用できるカフェの壁に並べて飾られています。
木枠にはめ込まれているステンドガラスの色やデザイン、木製の階段など、宮崎さんのデザインが再現された空間の中で、その基本となったデザイン画を眺めていると、アイデアが産まれる瞬間に立ち会えたような、ものづくりの原点の苦悩と楽しさを考えさせられます。
宮崎さんのデザインスケッチがあるカフェの奥には、幕末、坂本龍馬が“いろは丸事件の談判した間”をできるだけ当時と変わらぬ1階の同じ場に8畳間を復元した部屋があり見学することができます。
1867年、いろは丸が沈没した海難事故の談判(賠償交渉)を、龍馬は決死の覚悟で、天下の御三家・紀州藩を相手に、ここで行います。いろは丸沈没という不運に見舞われながらも不屈の精神で立ち向かった龍馬の戦術は、苦戦しながらも賠償金を引き出すことに成功し、坂本龍馬が天下に知れ渡るきっかけとなった談判だとも言われています。
日本が近代国家に生まれ変わろうとする激動の時代を象徴する事件ともいえる“いろは丸事件・談判の間”を直に感じることができる貴重な場所の1つです。
坂本龍馬の「いろは丸事件」と由縁の場は、「御舟宿いろは」以外にも鞆の浦にいくつも点在しますが、それと同じように情緒あふれる港町の街角には、この町から生まれた「崖の上のポニョ」が様々な形で点在しています。
ショーウインドウで商品と一緒に町を眺める可愛いポニョや、町を走るバスセンターにあるポニョの原画や手作りポニョなど、どれもほのぼのとした気持ちになるものばかりです。
鞆の浦はハリウッド映画『ウルヴァリン:SAMURAI』のロケ地でもあり、様々な映画やCMが撮影されている景勝地です。古い庄屋や古民家が立ち並ぶ情緒ある鞆の浦は、細い道が続く町ですので、ぜひクルマは置いて、のんびり歩いて散策をお楽しみください。
トラベルjpで250社の旅行をまとめて比較!
このスポットに行きたい!と思ったらトラベルjpでまとめて検索!
条件を指定して検索