写真:泉 グルン
地図を見るかつて台湾には「5大家族」と呼ばれる富豪の名家が存在していました。「霧峰林家」もそのひとつ。18世紀半ばに中国福建省から台湾に渡ってきた林氏の一族で、清朝統治時代には軍人として名を馳せました。その功績が認められ、当時珍重されていた樟脳の専売権を得て巨万の富を築いたのです。
一族は台中市郊外の霧峰という地区に住んでいたため「霧峰林家」と呼ばれます。今も末裔が暮らす大邸宅は国定古跡に指定されています。
写真:泉 グルン
地図を見る「霧峰林家」のお屋敷は「霧峰林家花園」または「霧峰林家宮保第園区」といい、敷地面積は約11,000平方m、7つある主要な建物群のまわりをぐるっと歩くだけでも1kmにも及びます。もっとも古い建物は1858年に建築されました。
見学できるのは、「宮保第」と呼ばれるかつての居住エリアと、賓客をもてなす「大花庁」という建造物です。入場してから、一番のハイライトともいえる「大花庁」に着くまでに3つの門をくぐります。至る所に見られる手の込んだ装飾にも注目してみましょう。
写真:泉 グルン
地図を見る一番の見どころは、絢爛豪華な「大花庁」です。「大花庁」とは客間のことで、ここにある「戯台」と呼ばれる建物は、いわば中国式のステージのこと。かつてお祝い事や宴などの際には、役者や歌手を招いてここで芝居やショーを上演したのです。
さすがに現代ではそうしたことは滅多に行われないようですが、かわりにステージさながらのロケが行われることもしばしば。2014年には、台湾の人気歌手ジョリン・ツァイさんと安室奈美恵さんのコラボ曲『I’m not yours』のMV(ミュージックビデオ)の撮影が使われました。日台を代表する2人の歌姫が伝統の美しい透かし彫りをバックに歌って踊るシーンはとてもエキゾチックです。
写真:泉 グルン
地図を見る大花庁の戯台は、見れば見るほどその美しさに息を飲みます。そり返った屋根は中国の伝統的な建築様式で、天と地を結ぶという神仙思想からきています。そして地位が高いほど反りの度合いも高いとか。
戯台の天井にも見事な装飾が施されています。牡丹の花をあしらったドーム型のくぼみに組み木造りのこの天井は「藻井」といって、寺院などにもよくみられる意匠です。よく見ると、花や植物のほかに書物や古楽器などが彫り込まれていて、その緻密さに驚かされます。
軒下や欄干にはキリンをはじめとする伝説の動物がいたるところに彫られ、精緻な透かし彫りが窓枠を飾ります。この華麗な装飾様式は中国の福州様式のものですが、本場福建省でも完全な形で残されている戯台は数えるほどだといわれます。台湾ではここだけにしかありません。それだけ貴重な建築なのです。
写真:泉 グルン
地図を見る大花庁には戯台のほか、応接室や19世紀の武器などを展示した部屋もあります。そして可愛らしい花布柄の提灯もたくさんさがっていました。
実は「霧峰林家」の一族から、台湾花布を世界のデザイン界に知らしめたアーティストのマイケル・リン氏が出ています。マイケル氏は日本でも活躍していて、金沢の21世紀美術館の内壁や十和田市現代美術館のカフェの床絵作品なども手がけています。
また、ミニマルアートの世界的芸術家リチャード・リン氏も「霧峰林家」をルーツに持っています。
写真:泉 グルン
地図を見る保存状態がきわめて良い「霧峰林家」のお屋敷群ですが、実は1999年に台湾中部を襲ったマグニチュード7.6もの大地震で被災しています。以来、十数年間かけて修復してきました。
修復にかかった費用は約3億5千万元以上、日本円にして約13億円にも及びます。国定古跡でありながら、修復費用の大部分は林家が私財を投じてまかなっているのです。
修復がすんでいるのは見学可能な中央部分のみで、現在も工事は続けられています。今後、修復が進んでいけば見学できるエリアも広がっていくことでしょう。
写真:泉 グルン
地図を見る「霧峰林家」の見学は、原則としてガイド同行のツアー制になっています。ツアーは連日、決められた時間に行われています。平日は、午前10時から午後4時までの間に1時間ごとに6回(お昼の時間をのぞく)催行され、所要時間は約70分です。週末や祝日、旧正月は午前9時から午後4時の間に11回行なわれます。
ホームページで事前にツアー時間を調べて予約してから行くと確実です。当日はツアー時間の10分前にチケット売り場前で集合となります。予約なしでいっても空きがあれば利用できます。20名以上の団体は予約をすれば単独ツアーとして案内してもらえます。
現在のところツアーは中国語で行われますが、40名以内であれば事前予約で日本語ガイドをつけてもらえます(別途費用がかかります)。
こうしたシステムがちょっとわずらわしいと思われがちですが、実際に足を運べば、これだけ価値ある建築をあやまって傷つけられることなく維持し、同時に見学客にとっても広大な敷地を効率的にまわることができる最良の方法だと理解できます。
写真:泉 グルン
地図を見る70分のツアーの中盤で、お茶がふるまわれるティータイムが設けられています。まるで昔の茶店のようなレトロ感たっぷりの室内でいただくお茶は格別。帰りにこの白い茶器がプレゼントされますよ。花の浮き彫りがついた上品な茶器は湯飲みのほか、お酒を飲むおちょこや料理小鉢としても使えます。アクセサリーなどを入れてもステキです。
また、限定グッズが販売されているスーベニアショップもあり、ツアーの最後に立ち寄るようになっています。
「霧峰林家花園」へのアクセスは、台鉄の台中火車駅から50番または100番のバスに乗り「霧峰郵局(中正路)」バス停で下車、徒歩約5分。台湾新幹線の高鉄台中駅からは151番のバスに乗り、「霧峰駅(中正路)」バス停下車、徒歩約5分です。どちらの駅からも所要約30〜40分です。
ロケーションが台中の中心部からやや離れてはいるものの、中華建築の粋がつまった貴重な建物だけに足を運ぶだけの価値は十分にありますよ。
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(2024/3/28更新)
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