知らざれる山形『五百川峡谷』まぼろしの左荒線街道、沿線の旅

知らざれる山形『五百川峡谷』まぼろしの左荒線街道、沿線の旅

更新日:2016/09/05 18:11

日本三大急流と呼ばれる最上川。中でも、山形県大江町〜白鷹町のおよそ25kmの区間を五百川峡谷(いもがわきょうこく)と呼びます。
昔、この区間に左荒(さこう)線という鉄道を作る計画がありました。結局、案は廃止され幻となりましたが、この左荒線が走る予定だったところは最上川の中でも絶景の場所が多く、土木遺産や隠れた名所などが点在し、見所満載です。
さあ、ご一緒に五百川峡谷の旅へ!

日本一公園から眺める最上川と大江町の素晴らしい眺望

日本一公園から眺める最上川と大江町の素晴らしい眺望
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まず最初に左荒線の予定されていた大江町左沢(あてらざわ)という場所から散策。
現JR左沢駅から2kmほど北側高台に楯山公園という地元の豪族大江氏の城跡があります。
別名「日本一公園」の愛称で親しまれていますが、なぜ日本一なのかは不明。でも、ここからの眺めは全長224kmある最上川の中でも絶景!
眼下に大江の街を迂回するように流れる最上川、遠くに朝日連峰と蔵王の山を大パノラマで見渡せ、その景観を芸術に収めようと写真家や画家たちの足が絶えません。
眼下に見下ろす大江町は江戸時代、最上川の舟運の中継地として栄え賑わったところ。町並みは商家や造り酒屋が今なお立ち並んでいます。
また、春には舟運でもたらされた京文化のひとつ「お雛さま」を各旧家がお披露目しています。

肌にとってもよいりんごづくしの「りんご温泉」

肌にとってもよいりんごづくしの「りんご温泉」
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先ほどの左沢駅から車で南西に10kmほど行ったところに日帰り入浴施設「りんご温泉」があります。
あさひ町が無袋りんご“サンふじ”の発祥の地であることにちなんで命名されました。
温泉は半透明の含重層食塩泉で、舐めてみるととてもしょっぱい湯にびっくり。アルカリ性が強くなめらかな肌触りです。皮膚病、関節痛、冷え性に効果あり。
ユニークなのは湯船にりんごを浮かべているところ。「食べてはいけません」と謳っていますが触ったり香りを嗅いだりするのはOK。
内風呂とは別に露天風呂があり、別棟になっていますが、一度、入浴料を払うとどちらへも入れます。露天風呂からは天気が良ければ月山、葉山、朝日連峰をみることができ、開放感たっぷりです。(露天風呂のみ冬期間休業)
りんご温泉の敷地内に「世界のりんご園」が併設されていて、13カ国170品種のりんごが栽培されており、遊歩道を歩きながら世界各国のりんごの木を見ることができます。
また、併設のレストランで地元のりんごと月山の水で練りこまれた「りんご麺」を食べてみてください。ほのかにりんごの香りが口の中に漂って、まさにりんごづくしですね。

日本でもここだけ!空気をまつる神社

日本でもここだけ!空気をまつる神社
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りんご温泉から西へ車で20分。朝日連峰の麓を望む高台に「空気神社」はあります。
地球に住む私たちにとってかけがえのない空気。その空気に感謝しようと祀られたのが始まりです。
日本全国探しても空気を祀るところはここにしかありません。
ブナ林の参道を歩いて行くと、所々に木・火・土・金・水と五行になぞらえたモニュメントが置いてあります。水のモニュメントは「手水舎」を兼ね備えていてユーモアたっぷり。
また水のモニュメント近くに、太いご神木のある山ノ神のがひっそりと祀られています。空気神社参道は、かつての朝日岳山岳信仰の修験者道でした。
ブナの木々の香りを嗅ぎながら小高い森の山頂まで行くと5m四方のステンレスでできたお社が突然見えてきます。これは、この空気神社しかない風景。ステンレスには四季折々の表情が鏡を通してと映し出され、ほんとに綺麗です。
ご神体は本殿の床下に12個の素焼きの瓶に鎮座される空気となります。
歴史浅い神社と侮るなかれ!ここの空気は透明を感じさせるクリアな空間です。是非、体感してみてください。

日本一のヤナ場と舟道跡

日本一のヤナ場と舟道跡
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左沢駅から20kmほど南下すると白鷹ヤナ公園に到着。ここの簗場は常設では日本一の規模と呼ばれています。五百川峡谷は最上川の中でもその構造から一番綺麗な水が流れているところで、アユにとっては餌の藻が豊富なことから巨アユが生存します。
アユに興味がなくても簗場まで歩いて降りていけますので是非、日本三大急流と呼ばれる最上川の急な流れを体感してみてください。

写真のヤナ場のあたりから浅瀬になっており、少し下ったところに「佐野原の舟道跡」があります。これは 元禄時代に米沢藩の御用商人西村久左衛門が米沢から酒田まで円滑な舟運を目的に巨額の私費(現在で約17億円)を投じて、川底を掘削し、舟道を整備する工事をした跡が舟道跡と呼ばれています。
舟道跡は普段はお目にかかれませんが渇水期に突如出現します。

郷愁誘う土木遺産「最上川橋梁」

郷愁誘う土木遺産「最上川橋梁」
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幻の左荒線の終着駅とされていた荒砥(あらと)。
現フラワー長井線の終着駅「荒砥駅」に近づいてくるとレトロチックな橋が見えてきます。
それもそのはず、この最上川橋梁は明治10年に作られ、もともとは旧東海道線木曽三川で使用されていたもので、大正12年にこの場所に移築されました。
そして注目するところは、橋梁の構造にあります。
トラスと呼ばれる三角形を基本として設計されていますが、当時の日本の鉄道技術では造れなかったため、イギリス人のC.ポーナルの設計で、パテントシャフト&アクスルトリー社製造の物を英国から輸入したのです。
当時のものとして現存するこの橋は歴史的建造物で土木遺産に指定されています。

地味なようで中身濃い幻の左荒線沿い

ガイドブックには載らない場所かもしれませんが、この25kmの距離の間にはここに載せられないくらいたくさんの隠れた名所があります。土木遺産が他に2つ、ドラマ「おしん」のロケ地、ちょっと足を伸ばすと山々の大自然と悠々と流れる最上川。ここを旅した後は自分も悠々としているかもしれませんよ。

*旅の薫香*
最上川の悠然とした流れ、りんごの香り、澄み切った空気。自然が持っているすがすがしさを感じる精油のブレンドをイメージすると
『シダーウッド・ローマンカモミール』
ディフュ―ザー等でそれぞれ1滴ずつ垂らしてご使用くださいね。


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掲載内容は執筆時点のものです。 2013/11/05 訪問

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