写真:Chanos Maya
地図を見るスラブシティはロサンゼルスのダウンタウンから300q、車で約3時間ほどのところにあります。高層ビル群からロサンゼルス近郊の街を抜け、カリフォルニアのリゾート・パームスプリングスを過ぎて2時間。目まぐるしく変わる景色は急に単調に。土色をした砂漠の中を、車が進むアスファルトのまっすぐの道だけがいやにはっきり遠くまでみえる光景。ところどころにヤシの木が群生するのが見えなければ、ここがカリフォルニアとは思えないかもしれません。スラブシティはそんな砂漠の真っただ中にあります。
写真:Chanos Maya
地図を見るスラブシティのある場所には第二次世界大戦中にアメリカ海軍のキャンプ(訓練所)が置かれていました。終戦とともにキャンプは閉じ、カリフォルニア州が所有する更地になりました。そのため正式な住所もなければ、ガス、電気、水道などのインフラも通っていません。スラブシティは行政で認められた公式な街ではないのです。
長らく何もなかったスラブシティにキャンピングカーで暮らす人々が集まりだした1960年代。「スラブ」とはがれきを意味するもので、キャンプが取り壊されがれきだけが残されていたことで「スラブシティ」と呼ばれるようになりました。
今、キャンピングカーで暮らす人々は200人ほど。アメリカ最後のフリータウンと呼ばれるくらい、この場所にいる限りは支払う税金もありません。年金を長持ちさせるためにやってくる人や、忙しい現代のライフスタイルから離れるためにやってくる人も、目的はそれぞれ。スラブシティは自由気ままなノマドのような街なのです。
写真:Chanos Maya
地図を見る砂漠の中に突然現れるカラフルな丘。その色鮮やかさはその場を離れてもしばらく頭の中から離れないほどパンチが効いています。スラブシティで最も大きなアート「サルベーションマウンテン」。
芸術家のレオナード・ナイト氏による愛や神をテーマにした作品。2014年に亡くなられるまで30年の月日をかけて作られました。神への祈りが天に届くように―できるだけ大きく、できるだけ目立つものを―そんなレオナード・ナイト氏の思いがつまった山は粘土と藁の土台にペンキでカラフルに塗り固められています。初期のサルベーションマウンテンは砂とコンクリートが重なっただけの山で早々に崩れてしまったそう。雨にも風にも強い丘を作るために使われ始めたペンキ。レオナード・ナイトの思いに共感した人々から様々なカラーのペンキが寄付され、使われたペンキは100,000ガロン以上(約380,000リットル)にもなります。こんな過去があり、こんなカラフルなサルベーションマウンテンがあるのです。
写真:Chanos Maya
地図を見るサルベーションマウンテンのそばにはレオナード・ナイト氏が制作した2つのテーマの異なる作品があります。それぞれに異なるタイトルがつけられた独立した作品であることはあまり知られていません。
その一つ目は「ホーガン」。夏は40度を超えることも珍しくないこの場所でレオナード・ナイト氏はトラックに住みながら制作を続けました。1998年、暑い地域に住むナバホ族(アメリカンネイティブ)のドーム型の住居ホーガンからアイデアをとり、暑さをしのぐための住まいをサルベーションマウンテンのすぐ横に作りました。トラックに住むことを好んだレオナード・ナイト氏は結局このホーガンに住むことはありませんでしたが、ひんやり涼しいホーガンの中もサルベーションマウンテンと同じように独特の色づかいと鳥や花のデザインが散りばめられ、彼の強い思いが伝わってきます。
写真:Chanos Maya
地図を見るレオナード・ナイト氏がスラブシティにきたとき、この場所で神への祈りの気持ちを示した気球を飛ばしたいと考えていました。手作りの気球はそう簡単には飛ぶはずもなく、断念しサルベーションの制作を始めました。
ホーガンとならぶ2つ目の作品「ミュージアム」は、レオナード・ナイト氏がかつて挑戦した気球をモチーフにしたもの。土と藁で固められたドームが木で支えられたユニークなミュージアム。数年前から制作が始められましたが、残念ながら完成されることがないまま、レオナード・ナイト氏は亡くなってしまいました。内部はカラフルにペンキで彩られた木の幹があちこちにのび、ジャングルのよう。もちろんドームの外面もサルベーションマウンテンのように明るい色合い。遠い天からでも気球のようにきっとはっきりと見えるはず、と確信できるそんなとびきりカラフルで色鮮やかなアートです。
写真:Chanos Maya
地図を見る乾燥しきった木にかかる無数の靴。木から落ちたのか、わざと置かれたものなのか、木の下にもたくさんの靴。これはスラブシティの人々がTree of Souls(魂の木)と呼ぶ木。soulsは靴底を意味するsolesとかけてあるという人もいます。このスラブシティに何十年も前からあるこの不思議な木も、スラブシティで見逃すことのできないアート。
誰が作ったものなのか、何を目的にしたものなのか、何も知られていないこの木。時々訪れる観光客が靴を置いていくこともあるそうで、見るたびにその姿を変えるTree of Souls。作者なきこの木をアートと呼ぶことがふさわしいかもわかりませんが、もしアートと言えるのであれば、Tree of Soulsは生きたアートです。
写真:Chanos Maya
地図を見るスラブシティに点在するキャンピングカー。キャンピングカーの周辺は発電機のモーターの音がしたり、鉢植えや石が置かれ道と敷地の境界があったり、そこに人が暮らしていること感じさせます。
そんな中にぽつんとある人の気配のないトレーラーハウスとピックアップトラック。名前も作者も知られていないこれらはクレイジーなまでにいろいろなもので飾られています。
トレーラの外面にはたくさんの扇風機の羽がはりついています。中に入ると、どこで集められたのか無数のビンテージカメラが壁いっぱいに。天井には規則正しく並ぶ無数のボールペン・・・住んでいた人が出ていったそのままではなく、見るからに誰かが何か信念をもって作られたもの。トレーラーとデコレーションされたものの関係性がまったくわからない不可思議さがユニークなアートです。
写真:Chanos Maya
地図を見るアートトレーラーの前には古いピックアップトラック。どんな色の車かもわからないほどにジャンクでまわりを固められています。FOR SALEとかかれたボードが立てかけられてていますが、誰にコンタクトを取ったらいいのか、もしくはそれもアートの一部かもはっきりしません。そのボードにLike new(新品同様)とかかれているのが、見る人を笑わせます。
製作者がいれば何を目的につくったものなのか、このデコレーションカーにどんなタイトルをつけるのか、なにより本当に売り物なのか聞いてみたいもの。お風呂で遊ぶアヒルのおもちゃ、トレーラーで使われている扇風機の羽のカバー、とにかくいろいろなものがはりついています。びっしりと端から端までを埋め尽くす一つひとつのアイテムをじっくり見てみたいアート。いつまで見ていても見飽きない、不思議な魅力を持っています。
スラブシティにいる限りはややこしいガスや水道の契約もありません。発電機などを備えたキャンピングカーで暮らす人々は、今日にでもスラブシティを離れることだってできるのです。もしも急に彼らがここを去ったら・・・まっさらな土地にアートだけが残ることになるでしょう。不可思議で不確実な小さなコミュニティ、スラブシティを包む不思議な空気の中で、数々のアートは力強い存在感を放っています。そんなユニークなアートスポットに出かけてみませんか?
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