熊野三山はどこから参詣してもいいのですが、まずはアクセスのよい熊野速玉大社からご紹介しましょう。熊野速玉大社はJR新宮駅から徒歩15分ほどで到着できる、新宮市の町なかにある神社です。熊野速玉大神(くまのはやたまのおおかみ)と熊野夫須美大神(くまのふすみのおおかみ)が主祭神として祀られています。
中でも目を引くのが朱色にかがやく社殿。こちらの社殿には七体の着席坐像が保存されており、どれもヒノキの一本彫り。七体のうち四体は平安時代の作とされ、国の重要文化財の指定を受けています。
境内にある熊野神宝館には、1000点もの国指定文化財が保存されており一般公開されていますので、ぜひご覧になってみてください。化粧道具の入った蒔絵手箱、銀製の縫い針などの中世の生活用具などの展示が特に興味をそそられます。
熊野三山の2つ目は、熊野那智大社の参詣。こちらの神社は隣に天台宗の寺院「青岸渡寺」というお寺が建てられており、神仏習合の名残りが色濃く残っています。こちらの神社も熊野夫須美大神(くまのふすみのおおかみ)が主祭神です。社殿は熊野速玉大社同様、朱塗りの鮮やかさが際立っています。
熊野那智大社は、熊野速玉大社のように簡単に参詣できる神社ではありません。JR紀伊勝浦駅から、バスに30分ほど揺られると駐車場バス停に到着しますが、社殿に向かうまでには長い石段の参道を上る必要があります。熊野三山の中では、いちばん体力が必要なので、適度に休憩をしながらゆっくりと上るのがおすすめ。
熊野那智大社は社殿も立派ですが、例大祭で演じられる「那智の田楽」がユネスコの世界無形文化遺産に登録されているんです。「田楽」とは秋の実りを祈念し、またそれに感謝する農民の踊り。農具を楽器代わりに打ち鳴らし踊っていたのがはじまりですが、熊野三山への参詣者が増えるにつれて、上品な見世物となっていき、一つの芸能と成長した舞踊なんです。例大祭は毎年7月14日。例大祭のメインである荘厳な火祭りとともにぜひ見てみたいものです。
熊野三山の中で、いちばん奥まった場所にある熊野本宮大社へは、JR新宮駅よりバスで1時間ほどかけて田辺市本宮町まで移動します。途中に大きな鳥居が見えてきますが、ここが近年、パワースポットとしても有名な「大斎原(おおゆのはら)」です。
熊野本宮大社を参詣する前に、まずはこの「大斎原」を訪れます。現在は2基の石祀と森、そしてこちらの写真にある大きな鳥居しか目立ったものはありませんが、熊野本宮大社は、もともとはこの地にあったのです。かねてから水害に悩まされている地で、明治22年にはとうとう社殿まで流出する水害が発生。これを契機に現在の場所に神社ごと移動しました。
「大斎原」のシンボルの大鳥居は高さが34メートル、幅42メートルのとても大きなもの。遠くからでもよく目立ちます。熊野本宮大社まではここから約500メートルありますが、「神が舞い降りた場所」としてパワースポットにもなっているこの「大斎原」から参詣をスタートしてみましょう。
熊野本宮大社の境内に、漆黒のポストを発見。右の立て看板には普通のポストとしてきちんと集配していることが書かれています。しかしポストの上を見るとカラスが一羽。さらには「八咫ポスト」の文字。
実はこのカラスは「八咫烏(やたがらす)」といって熊野の神のお仕えなんです。人々から、「導きの神」としての熱い信仰もあるカラスです。勝利へ導くという願いから、日本サッカー協会のマークにも採用されている八咫烏。熊野速玉大社ではポストの上に鎮座しておられます。
熊野三山参詣の旅のクライマックス。いよいよ熊野本宮大社の参詣です。「大斎原」からのんびりと歩いて、少々の石段を上り、八咫烏のポストまで来ると社務所に到着。家都美御子大神(けつみみこのおおかみ、熊野坐大神(くまぬにますおおかみ)、熊野加武呂乃命(くまぬかむろのみこと)を主祭神としている神社で、神門をくぐると本宮を中央に、左に結宮、右に若宮が並んでいます。
熊野速玉大社や熊野那智大社と違って、朱塗りの社殿ではなく檜皮葺の厳かな社殿が特徴。熊野三山の中でも特に古式ゆかしい雰囲気があり、言葉を発するのもためらわれます。残念ながら神門から先は撮影禁止となっていますので、社殿を撮影することはできません。
こちらの写真は神門の隣に立つ拝殿です。ご祈祷などはこちらの拝殿内で行われます。
熊野三山は和歌山県の山間部にあり、気軽に参詣できる場所にありませんが、都市部にある神社とは違い、荘厳で神秘的な雰囲気が感じられ、心身ともに清らかな気持ちになれる場所です。初詣で参詣すれば、いつもとは違った一年が過ごせる気がします。JRと熊野交通のバスをうまく利用すれば、一日で3つの神社を参詣することも可能。熊野三山をすべて参詣すると、達成感と爽快感から自然とパワーがみなぎります。参拝者の少ない静かな平日に訪れれば、よりスピリチュアルな気分が高まること間違いなし。アクセスが大変な場所でありますが、いつかは訪れたい神社です。
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