今の自分を誇れますか? 青森県「恐山」 メメント・モリ(死を思え)

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今の自分を誇れますか? 青森県「恐山」 メメント・モリ(死を思え)

今の自分を誇れますか? 青森県「恐山」 メメント・モリ(死を思え)

更新日:2017/01/20 13:32

上杉 華子のプロフィール写真 上杉 華子 フリーライター、歴史建築・美術ナビゲーター、歴史・神話研究家

青森県下北半島の中央に位置する霊場「恐山」。立ち上る硫黄の匂いと、ボコボコと湧き上がる水蒸気や火山性ガス、火山岩に覆われた荒涼とした風景はまさに「地獄」です。恐ろしいイメージの強い恐山ですが、「メメント・モリ(死を思え)」という警句にもあるように、死者を弔い敬うことによって、今生きる自分の生き様を振り返る機会にもなります。そんな霊場・恐山をご紹介しましょう。

青森県の霊場・恐山とは

青森県の霊場・恐山とは

写真:上杉 華子

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青森県の霊場・恐山は「宇曽利湖(うそりこ)」を中心とした外輪山を総称した場所を言います。地蔵信仰を背景にした死者を供養する場で、寺名は「菩提寺」。本坊は「円通寺」が勤めており、本尊は「地蔵菩薩」です。

青森県の霊場・恐山とは

写真:上杉 華子

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「奥州南部宇曽利山釜臥山菩提寺地蔵大士略縁起伝承」によると、天台宗の開祖・最澄の弟子である円仁(慈覚大師)が、唐に留学中に見た夢告を受けて帰国し、西暦862年に夢で告げられたこの土地に「菩提寺」を建て、地蔵菩薩を彫り本尊として安置した、と言われています。恐山は、高野山や比叡山と並び「日本三大霊山」ともいわれています。

信仰のかたち

信仰のかたち

写真:上杉 華子

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下北半島では、死者の魂は「お山(恐山)に行く」と言い伝えられています。これは仏教伝来以前の自然崇拝の一種であり、山を神として崇拝した「山岳信仰」と結びついています。

信仰のかたち

写真:上杉 華子

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恐山の菩提寺に行く途中には、三途の川が流れており、「現世」と「あの世」を分断する川には太鼓橋が架かっています。この太鼓橋は、悪人にはこの橋が針の山に見え渡れないそうです。ちなみに平安時代末期以降は三途の川を渡るには「橋」ではなく、「渡し船」へと話が変形していきます。

尚、太鼓橋の欄干の白い布は、「あの世に行く道は暗闇の為、白い布を頼りに手探りで行けるよう」に掛かっています。この太鼓橋は渡っても良いのですが、向こう側は冥途なので、降りる手前で引き返さないとこの世に戻れない、という言い伝えがありますのでご注意を。

信仰のかたち

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恐山といえば「イタコの口寄せ」が有名ですが、実は「口寄せ」は戦後始まったものであり、恐山菩提寺もイタコには全く関与していません。またイタコ達は恐山に常住しておらず、開山期間に出張してきます。

独特なお供え物の意味とは

独特なお供え物の意味とは

写真:上杉 華子

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恐山では、様々な独特のお供え物があります。それらのお供え物には深い意味があります。

風車…輪廻の象徴でもあり、亡くなった子供が遊べるように供えます。また風車には、風車の回る方向を見て、有毒な火山性ガスの風下に入らないようにするという意味合いもあります。

独特なお供え物の意味とは

写真:上杉 華子

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手拭いと草履…手拭いは、故人へのお参りに来た印だという説と、あの世から現世に降りてきた霊があの世に戻る際、旅支度の手拭いと草履を持って無事帰れますように、という祈りを込めたという説、またお地蔵さんに手拭いを被せて草履を置くことで霊が慰められる、という説などがあります。

独特なお供え物の意味とは

写真:上杉 華子

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積み石…幼くして亡くなった子供は「親に先立って亡くなった親不孝の罪」によって苦を受けるものの、積み石による塔を完成させると親への供養になり、自分も救われると言われています。

一方、科学的見地では、地面から噴出する火山ガスという有毒な物質を、噴出口に石を積むことにより効率よく空気を馴染ませ、直接有毒ガスを吸わないようにする工夫、という意味合いもあります。

様々な地獄を巡って

様々な地獄を巡って

写真:上杉 華子

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原始仏教には死後の世界観は存在しません。しかし、輪廻思想のあるヒンズー文化圏を経ることで、仏教にも来世という概念が成立し、人間は「解脱」しない限り、六道輪廻を繰り返すという思想に辿り着きます。その中の「地獄」136箇所の様相を投影できる景観から、恐山の各場所は様々な地獄の名で呼ばれるようになりました。

血の池地獄…稀に藻が発生し、池の水が赤く染まることから名付けられました。昔から出産の際に亡くなった女性の供養が行われたそうです。

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金堀地獄…死んでも金を求めて掘り続ける地獄。金の亡者が落ちる地獄でもあります。

様々な地獄を巡って

写真:上杉 華子

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修羅王地獄…醜い争い事が絶えない地獄です。恐山の修羅王地獄は今も火山性ガスが噴き出しており、本当に危険なので近づかないで下さいね。

極楽もありますが…

極楽もありますが…

写真:上杉 華子

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そんな殺伐とした地獄だけでなく、宇曽利湖は通称「極楽浜」と言われ、晴れた日は透明度の高い、極楽のような美しい青い湖として知られています。ただ、天気が悪いと、まるで賽の河原のよう…。極楽も地獄も心次第、ということでしょうか。

「メメント・モリ(死を思え)」

元々「メメント・モリ」は、「今を楽しめ」という意味の享楽的な人生を肯定する言葉でしたが、キリスト教世界が広がると、「死を前にすれば、現世の楽しみや贅沢、出世などは儚いもの」という意味で使われるようになりました。

元々恐山は死者を敬い、祈り、自分の人生や行いを振り返る場所でもありました。日々忙しく、知らず知らずに仕事地獄、愛欲地獄、金銭地獄のような地獄に落ちている私達に、恐山は静かに「その生き方で満足か?」と問いかけてきます。

オカルトチックな話が多い恐山ですが、現在の自分を見つめ直す意味でも、一度恐山を訪れてみては如何でしょう?

尚、閉山時期は11月から4月ですが、積雪状況により不定期となっておりますので、詳しい情報は恐山寺務所(TEL: 0175-22-3825)までお問合せ下さい。

掲載内容は執筆時点のものです。 2016/05/12 訪問

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