「地球釜」ってナンだ!? 東京葛飾に残る産業遺産

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「地球釜」ってナンだ!? 東京葛飾に残る産業遺産

「地球釜」ってナンだ!? 東京葛飾に残る産業遺産

更新日:2017/02/21 12:15

泉 よしかのプロフィール写真 泉 よしか 女子目線温泉ライター、キッザニアマニア

東京・葛飾区の「葛飾にいじゅくみらい公園」の一角に、まるでスチームパンクのSF映画から転がり落ちてきたような赤錆色のナゾの物体が鎮座しています。「地球釜」という名前がまたインパクト大。都会的な整然とした芝生の公園に似つかわしくないような、このモニュメントの正体はいったい何なのでしょうか!?

葛飾にいじゅくみらい公園のナゾの球体

葛飾にいじゅくみらい公園のナゾの球体

写真:泉 よしか

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東京の葛飾区と言えば、『こちら葛飾区亀有公園前派出所』や『男はつらいよ』の舞台になったことで、今も昔ながらの下町の雰囲気を残すイメージが強いのではないでしょうか。しかしJR常磐線の金町駅あるいは京成金町線の京成金町駅から徒歩10分ほどのところにある緑地帯周辺は、意外にも新しく都会的な雰囲気。ここはもともと三菱製紙株式会社の中川工場が建っていた跡地で、2003年に製紙工場が撤退した後は、大規模な再開発が行われた場所なのです。

広大な跡地には、高層マンション、東京理科大学葛飾キャンパスなどが建てられ、またその一部は葛飾区立の「葛飾にいじゅくみらい公園」として整備されました。公園は大学のキャンパスを挟んで南北に分断される形になっており、北側は多目的広場やテニスコートのある施設に、南側は芝生の緑地になっています。

葛飾にいじゅくみらい公園のナゾの球体

写真:泉 よしか

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公園の芝生の上にトンネル状のモニュメントがありますので、そこから覗いてみると・・・何やら赤錆色をした球形の奇妙な物体が見えませんか?

地球釜と三菱製紙中川工場

地球釜と三菱製紙中川工場

写真:泉 よしか

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あまりにも公園の景観に対して違和感のあるこのナゾの物体は、「地球釜」といいます。まるで古典SF小説にでも出てきそうな名前じゃありませんか。

残念ながらタイムマシンでも宇宙船でも無いのですが、こちらは地球型蒸煮缶とも呼ばれるパルプ製造のための蒸釜(むしがま)。この釜は三菱製紙中川工場で実際に使用されていた複数のうち一つで、工場閉鎖後、公園内に設置されるまではもっとJR常磐線の線路に近い場所に置かれていました。

当時は電車の車窓からもこの奇妙な球体が見えていたわけで、ますますナゾの物体らしさがあったのではないでしょうか。

地球釜と三菱製紙中川工場

写真:泉 よしか

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赤錆色の地球釜は内径4.27m。近づいてみると見上げるほどに大きいですよ。中に入れそうですが、入れません。

この機械は損紙(加工しそこなった紙)を水とともに釜に入れ、蒸気を注入しぐるぐると回転させながら高温で蒸しほぐし、パルプに戻す役割を果たします。つまり再生紙を作るエコロジーなマシンとも言えるわけですね。
形が地球のような球形であるだけでなく、中に溶解した高温の物質が入って回転しているあたりも地球釜という名にふさわしいでしょう。

三菱製紙中川工場は、大正6年からこの地で操業していました。地球釜も昭和7年には中川工場に設置された記録がありますが、こちらの機械は太平洋戦争終戦直後の昭和20〜21年に設置されたタイプ。昭和21年4月から昭和24年までの4年間は、戦争で被災した大蔵省印刷局王子工場に代わって、三菱製紙中川工場が紙幣用紙の抄造を行うという大役を果たした時代でした。

中川と新宿の製紙産業の栄枯盛衰

中川と新宿の製紙産業の栄枯盛衰

写真:泉 よしか

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地球釜が設置された葛飾にいじゅくみらい公園の地名は新宿。ついつい新宿(しんじゅく)と読んでしまいそうになりますが、公園名の通り「にいじゅく」です。都庁のある新宿とまぎらわしすぎて、公園名を思わずひらがなにしてしまう理由も何となくわかります。また「宿」が付くことから推察できるように、元々は水戸街道の宿場町でした。

そして新宿のすぐ西側を流れるのは利根川水系の中川(写真)。さらに東側には江戸川も流れています。昭和の時代に三菱製紙中川工場だけでなく、他にもいくつかの製紙工場がこの辺りで操業していたのには、川の存在が大きく関わっていました。

製紙工場は紙を製造する際に水を大量に使いますが、それだけでなく、船は工業製品を運ぶ重要な交通機関です。紙・印刷物を消費するのは官公庁、大学、大企業の本社など、そしてその多くが東京に集中しています。葛飾区新宿は、鉄道の常磐線だけでなく、中川を使って都心部へ大量の紙を供給していたのです。

しかし今の時代は既に紙の消費量は減少の一途をたどっています。本も新聞も数多の書類も電子機器やインターネットに取って代わられていきました。地球釜は近代産業の輝かしい遺産であるとともに、当時この地で栄えた製紙産業の終焉を、錆びた姿で象徴しているのかもしれません。

葛飾にいじゅくみらい公園の地球釜見学と東京理科大学のノーベル賞石畳

戦後の日本を牽引してきた様々な産業の遺産が各地に残されていますが、中でもこちらの地球釜は公園に設置され、誰でも無料で見学することができます。

また、葛飾にいじゅくみらい公園を訪ねたら、ぜひ隣接した東京理科大学キャンパスの石畳にも注目してみてください。「科学史の銘板」と銘打って、なんと100名以上の歴代ノーベル賞受賞者の名前が刻印されているのです。iPS細胞で知られた山中伸弥氏の名前もありますよ。
藤嶋昭学長自身が幾度もノーベル賞候補に挙がっているこの大学では、ノーベル賞受賞者を輩出することは悲願でもあったのです。そしてついに2015年、同大学と所縁の深い(東京理科大学大学院で修士課程修了・理学博士取得)大村智氏がノーベル生理学・医学賞を受賞しました。大村氏の銘鈑は他の受賞者とは色の違う石を使っているのですぐに見つけられます。

掲載内容は執筆時点のものです。 2016/08/07 訪問

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