ベトナム最古の大学!ハノイ「文廟」で合格祈願!!

ベトナム最古の大学!ハノイ「文廟」で合格祈願!!

更新日:2018/07/26 18:41

木村 岳人のプロフィール写真 木村 岳人 フリーライター
ご存じベトナムの首都ハノイ。かつてベトナム王朝の中枢であったタンロン王城跡の南側に「文廟(ぶんびょう/ヴァン・ミウ)」と呼ばれる儒教の開祖「孔子」を祀った霊廟があります。そこはベトナム最古の大学でもあり、官僚の登用試験である「科挙」が行われていました。敷地内には歴代合格者の氏名が刻まれた石碑が並んでおり、ハノイの受験生は試験前に必ずお参りに行くという、ベトナム屈指の合格祈願スポットです。

千年前まで遡る!文廟の歴史

千年前まで遡る!文廟の歴史

写真:木村 岳人

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文廟の創建は約千年前の1070年、李王朝の第三代皇帝であった李聖宗(リー・タイントン)によって設立されたと伝わります。それまでのベトナム王朝は仏教国でしたが、国として結び付きが強かった宋(中国)から儒教が取り入れられ、その開祖である「孔子」を祀る文廟が築かれました。

第四代皇帝の李仁宗(リー・ニャントン)は儒教による教育をさらに重視し、朝廷の人材を試験で決める科挙を採用、1075年に最初の試験が行われました。翌年の1076年には高等教育機関にあたる「国子監(こくしかん)」を文廟に併設し、ベトナム王朝最古の大学となったのです。その入口には下馬碑が設けられ、文廟に入るにはたとえ皇帝であっても馬や乗り物から降りなければなりませんでした。そのくらい神聖視されていた場所なのです。

文廟の敷地は五つの区画に分けられており、それぞれの境に門が構えられています。第一の門はその名もズバリ「文廟門」。元は木造でしたが、後黎(レー)朝の後期にあたる17世紀から18世紀の頃に石造で建て替えられました。文廟門の左右には虎と龍のレリーフが刻まれているのですが、このうち権力のシンボルである虎は科挙の受験者を、成功のシンボルである龍は科挙の合格者を表しているといいます。

大中門の屋根に掲げられた「鯉の滝登り」

大中門の屋根に掲げられた「鯉の滝登り」

写真:木村 岳人

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文廟門の中央門から一直線に連なる路地は「皇帝の道」と呼ばれています。その名の通り、かつては皇帝や官吏など身分の高い人のみが通ることを許された道で、通常は文廟門の左右に設けられた小さな門と細い通路を通っていました。いずれの路地もベトナム陶器の産地として昔から有名なバッチャンで焼かれた煉瓦が敷かれており、風格を感じさせられます。

その先にたたずむ第二の門は「大中門」と呼ばれる木造の赤門です。儒教の教書である「四書(ししょ)」のうち、『大学』と『中庸』から一文字ずつ取って名付けられました。

大中門の屋根に掲げられた「鯉の滝登り」

写真:木村 岳人

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赤瓦で葺かれた屋根の上には水が溢れ出る瓶の像が据えられており、その左右には一対の鯉がまるでシャチホコのごとく鎮座しています。これは中国後漢の歴史書である『後漢書』に記された「急流の滝を登り切ることができた鯉は龍になる」という故事にちなんだもので、成功のための関門という意味で使われる「登竜門」の語源とされています。科挙の受験者たちは、この鯉を前に「龍になるぞ」と意気込んだことでしょう。

紙幣にも描かれた!ハノイのシンボル「奎文閣」

紙幣にも描かれた!ハノイのシンボル「奎文閣」

写真:木村 岳人

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第三の門「奎文閣(けいぶんかく)」は阮(グエン)朝時代の1805年に建てられた二重の楼門で、上層には学問を司る星である「奎星(けいせい)」を象徴した複雑な形状の丸窓が設けられています。

レリーフが施された白塗りの下層と奎星窓が穿たれた上層のコントラストが非常に印象的で、その姿はベトナムの紙幣である10万ドン札に描かれています。またハノイ市章のデザインモチーフとしても取り入られており、まさにハノイのシンボル的な存在といえるでしょう。

ズラリと並んだ「進士題名碑」に圧倒される!

ズラリと並んだ「進士題名碑」に圧倒される!

写真:木村 岳人

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奎文閣をくぐると「天光(ティエンクアン)」と呼ばれる大きな池が広がっており、その両脇に82基もの「進士題名碑」が連なっています。「進士」とは科挙の合格者のことで、これらの石碑にはその名前と出身地が刻まれているのです。天光池を取り囲むように並んでいるのにも理由があり、水面に反射した日光が碑文を照らし、その栄光を称えるための舞台装置だというから驚きです。

また石碑は亀を模した台座である「亀趺(きふ)」に乗っているのですが、それぞれ形や表情が絶妙に異なっており個性的。首を長く伸ばしたものや短く縮めたもの、シンプルな表情のものや笑っているようなものまで、実に多種多様で愛嬌が感じられます。

文廟に現存する「進士題名碑」のうち、最も古いもので1442年のもの。以降、阮朝がベトナム中部のフエへ遷都するまでの3世紀以上に渡って築かれています。ベトナム王朝の歴史資料としてはもちろんのこと、彫刻の技術資料や芸術資料としての価値も高く、2010年にはユネスコの「世界の記憶」に選定されました。

孔子像を祀る「大聖殿」で合格祈願

孔子像を祀る「大聖殿」で合格祈願

写真:木村 岳人

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天光池から第四の門である「大成門」をくぐると、文廟の本体ともいうべき孔子廟に到達します。孔子像を祀る「大聖殿」の入口には高い敷居が設けられており、またいで入ろうとするとするとどうしても体が前のめりに倒れ、堂内の孔子像に向かってお辞儀をするような体勢となります。もちろんこれは意図して設計されたもので、建築からも孔子に対する最大限の敬意を感じ取ることができます。堂内は大勢の人々で賑わっていますが、やはり合格祈願にやってきた学生の姿が目立ちます。

また大聖殿の裏手、第五の門である「啓聖門」の先には「国子監」が存在します。1076年の創建以降、ベトナム王朝の最高学府として数多くの人材を輩出してきた国子監ですが、古来からの建物は第二次世界大戦直後の1946年にフランスからの独立戦争の際に失われてしまいました。現存するものは2000年の再建です。

国子監は二棟の講堂が対になって建っており、その奥に前堂と後堂がたたずんでいます。そのうち前堂は行事を行う為の建物で、現在はベトナム民族楽器の演奏が披露されています。また後堂には14世紀に国子監の教師を務めていた朱文安(チュウ・ヴァンアン)像が祀られており、かつて国子監で使われていた教材や衣装なども展示されているなどちょっとした資料館のようになっています。ぜひともチェックしてみてください。

周辺の定番スポットと一緒に楽しもう!

文廟はハノイ観光の定番スポットですが、歴史や科挙などの事前知識がないとイマイチ価値が分かりづらい史跡でもあります。文廟を訪れる際にはぜひとも今回ご紹介した内容を頭の片隅に入れつつ、厳しい科挙の試験に思いを馳せながら散策してみてください。敷地内の売店には合格祈願のお守りなども販売されていますので、受験生やそのご家族にもオススメです。

また文廟の周囲には「ホーチミン廟」や「一柱寺」、世界遺産「タンロン王城遺跡」など数多くの定番スポットが散在していますので、それらと併せて回るのが良いでしょう。

掲載内容は執筆時点のものです。 2016/11/07 訪問

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