写真:麻生 のりこ
地図を見る静岡県西部を流れる天竜川。その下流左岸、磐田市池田にひっそりと佇んでいる行興寺は、年に一度華やぎます。それは4月下旬から5月上旬にかけて。境内に植えられた長藤が開花し、多くの花見客で賑わいます。
この長藤は「熊野(ゆや)の長藤」と呼ばれ、平安時代末期に平宗盛の寵愛を受けた美女・熊野(ゆや)御前の手により、この地に植えられたとされています。
写真:麻生 のりこ
地図を見る池田荘の荘司を父に持つ熊野御前は、その美しさなどを平宗盛に見初められ彼に仕えて都に上がりましたが、故郷に残した病身の母を思い帰郷。その後は母に孝養を尽くし、母の死後この地に草庵を結び、十一面観音像を信仰して余生を送りました。
「藤の花をこよなく愛した彼女のお手植えの藤」と伝えられるのが、境内の北西にある「熊野の長藤」です。境内には熊野御前と母の墓が。彼女の命日と言われる5月3日には、毎年供養祭が行われます(2020年は未定)。
写真:麻生 のりこ
地図を見る樹齢およそ800年以上(推定樹齢850年)と言われているこの長藤の魅力は、なんといってもその花房の長さ。開花後の花房は日を追うごとにどんどん伸び、満開の頃には1メートル以上に。
地元の方によると「60年ほど前は垂れ下がった花房の長さが膝丈くらいまで伸びて、子ども達がかくれんぼ遊びをしていた」とのこと。その頃と比べれば樹勢は衰えてきましたが、2015年には、なんと1メートル89センチを記録! 今年はどのくらいまで伸びるのか楽しみですね。
写真:麻生 のりこ
地図を見る行興寺の境内には国指定樹のほかに、静岡県の天然記念物の指定樹が5本あります。県指定樹の樹齢はおよそ300年以上とも。根元に石碑が建っている株を中心に、今を盛りと境内に甘い香りを漂わせています。
観る者の心を惹きつけ、雅やかな世界へ誘ってくれるかのような長藤。花のシャワーを浴びながら、遠い昔に思いを馳せてはいかがでしょうか。
写真:麻生 のりこ
地図を見るこの長藤は花が咲き終わってから葉が繁るという性質を持っています。そのため花見時には葉に邪魔をされず、美しい花房を堪能できると好評。
風が吹けば無数の花房が揺れ、藤棚の下がより幽雅な景色に。甘い香りに包まれた薄紫色の空間に、酔いしれてしまいそう。
写真:麻生 のりこ
地図を見る行興寺の北側に位置する「豊田熊野記念公園」内にも藤棚が広がっています。藤棚の面積は寺の境内と合わせて約1,600平方メートル! 一般的なテニスコートが6面分以上入る広さです。
こちらの藤は行興寺に植えられている熊野の長藤を接ぎ木したもの。長藤のDNAをしっかりと受け継ぎ、藤のカーテンを作っています。公園の東南には白藤も植えられているので、薄紫の長藤と白藤との共演も。
花の下にはベンチが置かれ、自由に休むことができます。
写真:麻生 のりこ
地図を見る公園内の藤棚には、よく見るとなにやら仕掛けが。これは花を長持ちさせるための仕掛けで、雨が降ると樹木を覆うようにビニールが出てくるのだそう。1日でも長く藤の花見が楽しめるのは嬉しいですね。
写真:麻生 のりこ
地図を見る公園の一画には「熊野伝統芸能館」があり、屋外型の能楽堂が建っています。設営可能な客席数は350席。藤棚を借景とした本格的な能舞台で、能や薪能などが上演されます。
写真:麻生 のりこ
地図を見る謡曲『熊野』や『平家物語』に登場する孝行娘・熊野御前。彼女が愛して植えたと伝えられる藤は、時を超えて現代でも多くの人々に愛されています。
満開時の様子は優美で荘厳。行興寺境内・豊田熊野記念公園ともに入場無料なので、遠く平安時代から続く幽雅な世界をぜひ堪能してください。
住所:静岡県磐田市池田330
電話番号:0538-33-1222(磐田市観光協会)
アクセス:東名高速道「遠州豊田」スマートI.Cより約4キロ
※2020年の熊野の長藤まつりは開催中止
2020年4月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。
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この記事を書いたナビゲーター
麻生 のりこ
はじめまして。神奈川生まれ静岡県西部育ち(現在、浜松市在住)の麻生のりこと申します。バスガイド勤務を経て旅行に目覚めました。キレイな景色、美味しいご当地料理、疲れを癒してくれる温泉、歴史を感じさせてく…
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