写真:いなもと かおり
地図を見る杉山城のある埼玉県比企郡嵐山町は、嵐山渓谷や都幾川桜堤といった四季の観光を楽しめる自然スポットが点在し、また近くには「比企城館跡群」として4つの城跡が国史跡に指定された歴史観光も楽しめるエリアです。
比企城館跡群のひとつでもある杉山城は、中世に軍事拠点としての役割をもって築かれたお城だということが判明しています。しかし、誰がいつ築いたのかは不明で、研究者のなかでも長年議論になっています。
写真:いなもと かおり
地図を見るみなさんが想像する「城」といえば、天守や櫓などの建物があり、立派な石垣が立ち上がるカッコイイお城ですよね。弥生時代よりはじまった「お城の歴史」のなかでも、天守の出現した時期はたった300年の間だけ。16世紀半ば頃に出現した天守は、明治になるとその役目を終えました。
杉山城は、天守が建つ以前の時代に築かれた中世のお城。つまり、土を掘って盛って築かれた「土の城」なのです!
写真:いなもと かおり
地図を見る外観はただの小高い丘。しかし、「築城の教科書」と称されるほど巧みな縄張り(城の構造・造り)をしています。こちらは本丸といわれる杉山城の中心部分です。200人ほどが収容できる広さがあり、なんだが端っこが盛り上がっていますね。これは土を盛った防御壁(「土塁」という)で、攻撃から身を守るための工夫です。
また、本丸のラインが直線ではなく、ぐねっと出っ張っていますね。こちらも工夫のひとつ。死角をなくし、敵を攻撃しやすいようにわざと曲げて築いています。こういった「工夫」を読み解いていくことこそ、土の城を楽しむ方法なのです。
写真:いなもと かおり
地図を見る「土塁」のすぐ横にも、ある工夫がされています。敵兵が侵入しにくいように土を掘ったトラップです。お城では水のある「お濠」が有名ですが、水のない場合を「空堀(からぼり)」といいます。落下した時にクッションとなる水がないため、実は空堀の方が痛手を負う仕掛けです。
土塁と空堀はセットで設けられていることが多いのでヒントにしましょう!
写真:いなもと かおり
地図を見る杉山城の空堀も直線ではなく、ぐねぐねと曲げられています。なんだか複雑で迷子になりそうですね。しかし、これも工夫のひとつ! こうやって空堀の底でハマっている間に、上から反撃されてしまうのです。
杉山城の曲輪(城の区画)の下には、こうした空堀が複雑に組み込まれています。敵の侵入を妨げるポイントですね!
写真:いなもと かおり
地図を見る城内は区画ごとに整備されており、この区画を「曲輪(くるわ)」といいます。写真のような小さな区画が複数集まって1つの城になるのです。
写真:いなもと かおり
地図を見る曲輪同士は橋で繋がれており、杉山城には土が土台となった「土橋」が見事に残っています。
ちなみに、敵兵が侵入した時はこの土橋を一列で通過するため、狙いが定めやすく集中的に反撃されるのでご注意を! なかには「木橋」といって、敵兵が侵入してきた時に壊して渡らせないようにする木でできた橋もありました。曲輪の間のつながりがない場合は、木橋でつながっていたケースが多いです。頭の中でイメージしてみましょう!
写真:いなもと かおり
地図を見る曲輪の出入口は、土塁を切るようにして通路ができています。かつては簡単な木戸があったと想像してみてください。近世のお城になると立派な城門があって、四方が石垣に囲まれた空間を何度も曲がりながら中に入っていきますが、中世の出入口は写真のような通路脇の盛り土が目印!
ちなみに出入口のことは「虎口(こぐち)」といって、城の要所となる部分です。
写真:いなもと かおり
地図を見るまた、土の城は、山のなだらかな斜面を、掘って盛って築かれていきます。しかし、尾根から続くゆるやかな斜面のままだと敵兵も侵入しやすいため、曲輪下の斜面を急な角度に削ってしまうのです。こういった人工的に断崖にした斜面を「切岸(きりぎし)」といいます。
土塁、空堀、土橋、虎口、切岸などの遺構を読み解き、400年以上前に戦国時代を生きた勇者たちが築いた証を感じることこそ、土の城散策の楽しみ方です。
お城は全国に4万〜5万あるといわれています。みなさんのお住まいの近所にも城址公園があると思いますが、その多くが公園整備されて、お城だった名残が薄くなってしまっています。埼玉県にある杉山城は、当時の様子が見事に保存されており、「築城の教科書」と称されるほど巧みな構造が見られるお城! 土の城デビューにはぴったりです! 杉山城を歩いて、土の城を堪能しましょう。
※アクセス…2017年4月1日現在、公共交通機関では東武東上線・武蔵嵐山駅より徒歩30〜40分ほどとなっています。
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この記事を書いたナビゲーター
いなもと かおり
年間120城をめぐる城マニア。國學院大學文学部史学科古代史専攻卒。小学生の時に古墳に目覚め、歴史の道へ。19歳の時に、会津若松城に一目惚れしてから城の虜となる。訪城数は700ほど。日本城郭検定1級、国…
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