写真:乾口 達司
地図を見る特別参拝の受付場所は、朱塗りの回廊によってとりかこまれた、南門の脇にあります。神事の都合で参拝のできない日時もありますが、それ以外であれば、規定の初穂料をおさめると、誰でも参拝させていただけます。
受付を済ませると、回廊に沿って本殿へと向かいますが、はじめて訪れる人は、回廊沿いにずらりと並べられた釣燈籠の数に、まず、圧倒されることでしょう。境内にあるすべての釣燈籠を数えると、その数は1000基にものぼるということです。写真は東回廊の釣燈籠ですが、西回廊には、金色の釣燈籠も並べられています。その形や意匠も微妙に異なっており、それらを見ながら歩くのも、楽しいでしょう。ちなみに、毎年2月と8月におこなわれる「万燈籠」では、境内の石燈籠とともに釣燈籠にも灯りがともされ、幻想的な空間を演出してくれます。
写真:乾口 達司
地図を見る写真は、本殿の正面に建つ中門と、そこから左右に延びる御廊(おろう)です。中門の高さは約10メートル。ときどき、中門を本殿であると錯覚している人がいますが、これは間違い。本殿は中門の奥に鎮座し、外部から、その姿をうかがうことはできません。つまり、特別参拝によって、中門の真正面に立たなければ、本殿を間近に拝観することはできないのです。本殿の拝観は、特別参拝ならではの魅力であるといってよいでしょう。
ちなみに、本殿は4棟から成る一間社春日造で、第一殿には武甕槌命(たけみかづちのみこと)、第二殿には経津主命(ふつぬしのみこと)、第三殿には天児屋根命(あめのこやねのみこと)、第四殿には比売神(ひめがみ)が、それぞれまつられています。4棟すべてが、国宝に指定されています。
写真:乾口 達司
地図を見る御廊の脇には、見上げるほど巨大な杉の木が立っています。「社頭の大杉」と呼ばれる大木で、その周囲は8.7メートル、高さは25メートルもあります。樹齢は800年以上。事実、鎌倉時代に描かれた絵巻物『春日権現験記』には、すでにその姿が描かれています。まさしく、春日大社の歴史を見守り続けてきた生き証人のような存在であるといえるでしょう。
写真:乾口 達司
地図を見る中門・御廊の西面には「捻廊」(ねじろう)と呼ばれる渡り階段が設置されています。内侍殿と御廊とを結ぶこの捻廊、名前のとおり、少しだけ斜めにねじれているのが、おわかりになるでしょうか。創建は治承3年(1179)。江戸時代の伝説上の名工・左甚五郎が、現在のような形に改造したと伝えられています。なぜ、このようないびつな形に作られたのか、はっきりしたことはわかっていません。
写真:乾口 達司
地図を見る西回廊の付近には、磐座もひっそり残されています。磐座は、古代神道の確立以前に、自然崇拝の対象として、まつられていた神聖な岩のこと。春日大社といえば、藤原氏の権勢の拡大によって、奈良時代になってから造営された神社であるというイメージがありますが、それ以前から、この地が自然崇拝にもとづく祭祀の場であったことを、この磐座は教えてくれます。磐座の背後にそびえる朱塗りの建物は宝庫で、毎年3月におこなわれる春日祭の折、本殿を飾る神宝類がおさめられているところです。
特別参拝がいかに貴重なものであるかが、おわかりになったのではないでしょうか。特別参拝のコースでは、ほかにも、子授けの霊木として尊崇されている「七種寄木」や、国の重要文化財に指定されている内侍殿・直会殿などの貴重な建造物も、見学することができます。いずれも特別参拝でしか間近に見ることのできないものなので、春日大社を訪れた折には、ぜひ、特別参拝によって、春日大社の豊かな歴史に触れていただきたく思います。
特別参拝初穂料 : 500円
受付時間:9:00〜16:00
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この記事を書いたナビゲーター
乾口 達司
これまでは日本文学や歴史学の世界で培った見識にもとづいて数多くの評論や書評を執筆してまいりました。奈良生まれ、奈良育ちの生粋の奈良っ子。奈良といえば日本を代表する観光地の一つですが、地元民の立場からい…
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