写真:ゐさ よりこ
地図を見るブダペスト旧市街から北東約30kmの位置にある都市、グドゥルー(Godollo)。この街一番の人気観光地が、ハンガリー最大規模のバロック建築物、グドゥルー宮殿(Godolloi Kiralyi Kastely)です。
「グラッシャルコヴィチ宮殿」という別名を持つこの離宮は、18世紀に、ハンガリーの貴族グラッシャルコヴィチ伯爵1世(Antal Grassalkovich I)が建てた宮殿で、コの字型の部分は建設当初からある部分です。少しずつ改築・拡張を繰り返して、現在の姿になりました。グラッシャルコヴィチ家の系譜が途絶えてからは、持ち主が次々に替わり、19世紀にハンガリー政府所有の建築物になりました。
ハンガリーが「オーストリア=ハンガリー二重帝国」になってからは、政府から、ハンガリー国王を兼務したオーストリア皇帝フランツ・ヨーゼフと、同じくハンガリー王妃でもあった皇后エリザベートに、夏の離宮(避暑地、別荘)として寄贈されました。
第二次大戦では幸いにも損害を受けなかったものの、ソ連軍に接収されて駐屯地となり、高齢者用施設として使われた時期もありました。その後、建物は老朽化により少しずつ崩壊していきます。
かつての姿を取り戻し始めたのは、ハンガリーが社会主義と決別してからのこと。1985年からゆっくりと修復作業が始められ、現在のようにホールでイベントが開催できるまでになりました。
ハンガリーの歴史を体現するかのような、バロック様式の宮殿は、ミュージカルの題材にもなった美貌のオーストリア皇后エリザベート、マジャール語で「エルジェーベト(Erzsebet)」王妃がこよなく愛した、ハンガリー滞在時の住居でした。エルジェーベトは、狩猟が趣味であった国王とともに、夏と秋の狩猟シーズンを中心に度々この宮殿を訪れ、滞在しています。
貴族のたしなみとされたフランス語よりマジャール語(ハンガリー語)をすすんで学び、侍女にハンガリー出身の女性を選ぶほどのハンガリー好きであった「ハンガリー王妃」エリザベート。オーストリア=ハンガリー二重帝国の成立は、エリザベートの助言により可能になったとも言われており、ハンガリー国内でもエリザベートは人気者です。
王宮のあるブダを訪れるたびに民衆の歓迎を受けましたが、エリザベートは人嫌い(この点はご本人を題材にしたミュージカル『エリザベート』でも描かれています)。この、郊外の静かな宮殿で、人混みを離れて穏やかなときを過ごすのがお気に入りでした。宮殿内部には、宮殿を訪れる客から逃れるために、隠し扉から入れる秘密の通路を造らせています。
写真:ゐさ よりこ
地図を見る長い時間をかけて修復され、往時の美しい姿を取り戻しつつある宮殿は、大部分が一般公開されています。
受付では、宮殿内の見どころスポットごとに説明を聞くことができるオーディオガイドを用意しており、嬉しいことに日本語版もあります。
宮殿内部は撮影禁止なので、しっかりと目と心にその美しさを焼きつけていって下さい。
赤いカーペットの敷かれた白い階段を上り、お部屋をのぞいていくと、建設時から現在までのグドゥルー宮殿を、時代を追って見ていくことが出来るような構成の展示になっています。
必見はやはり、皇后エルジェーベトことシシィが好きだったというスミレ色を基調色にした部屋。シシィ関連の品々を集めた展示室になっています。入り浸るようにして住んでいた宮殿だけに、マジャール語で手紙や詩などを綴っていた机、着用していたドレスや愛用の扇子など、本人にゆかりのある品々がたくさん遺されており、本拠地(?)オーストリア・ウィーンにないものもたくさんあります。シシィファンならぜひとも見ておきたいところです。
提供元:ハンガリー政府観光局(HNTO Tokyo)
http://jp.gotohungary.com/この、スミレ色の展示室をはじめ、数々の展示室を見た後に訪れるのが、ホール。
シャンデリアが煌めくゴージャスなホールでは、音楽会などのイベントが度々開催されています。
写真:ゐさ よりこ
地図を見る宮殿の中にはカフェも、お土産を買える売店もあります。売店には、宮殿のパンフレットのほか、シシィの絵を入れたチョコレートやリキュールなどのシシィグッズがありますよ。
特に、シシィグッズは、この宮殿限定のものばかりなので、「ウィーンで買えばいいわ」と思わずにここで買っていきましょう。良い記念になること間違いなしですよ。
ブダペスト旧市街からグドゥルー宮殿へは、郊外列車「HEV」で片道50分ほど。地下鉄2号線の終着駅「Ors vezer tere」で降りて、地下道をくぐった先の駅舎から発車する緑色の郊外列車「HEV」の「Godollo」行きに乗ります。最寄駅は「Godollo Szabadsag ter」駅です。
進行方向に向かって右側の車窓を見ていましょう。やがて窓の向こうに、淡いピンク色のかわいいお城が見えてきます。それが、シシィの愛したハンガリーのお城、グドゥルー宮殿です。
シシィファンならぜひとも訪れてみて下さい。ハンガリーの風が吹くバロック様式の宮殿の中で、ウィーンではおそらく見せることのなかった、ハンガリー王妃としての「エルジェーベト」の姿を見ることが出来るでしょう。
この記事の関連MEMO
この記事を書いたナビゲーター
ゐさ よりこ
日本と世界を巡る舞台芸術ライター。「旅と舞台」が自らのテーマです。大学は古典芸能専攻。学生時代から洋楽を演奏する傍ら日本の伝統芸能を習っており、たまーに発表会にも出ています。長年、国内外の劇場で、歌舞…
トラベルjpで250社の旅行をまとめて比較!
このスポットに行きたい!と思ったらトラベルjpでまとめて検索!
条件を指定して検索