日本刀の故郷・岡山県備前長船(おさふね)にて古式鍛錬(たんれん)の匠の技を知る

日本刀の故郷・岡山県備前長船(おさふね)にて古式鍛錬(たんれん)の匠の技を知る

更新日:2013/12/18 09:41

Ise Shinkurouのプロフィール写真 Ise Shinkurou
古の武将達が愛した名刀の故郷・瀬戸内市長船。ここにある「備前おさふね刀剣の里」では、鞘(さや)師・研(とぎ)師などの職人が、昔からの伝統を守りながら刀を作る作業を行っています。しかもその匠の技をすぐ近くで見る事が出来るのです。そして月に一度、古式鍛錬(たんれん)と呼ばれる、火入れから槌(つち)を振るうまでの作業が一般公開されています。備前刀の故郷を訪れ日本ならではの伝統を知る旅はいかがでしょうか?

多くの職人の手を経て出来る一振りの日本刀

多くの職人の手を経て出来る一振りの日本刀

提供元:岡山県観光総合サイト

http://www.okayama-kanko.jp/地図を見る

備前長船地域で鉄を扱う職業の人々を備前鍛冶と呼び、平安時代末期にはその名が文献に出てきています。そのことから、鎌倉時代になるとこの地域からは多くの作刀の名匠が世に送り出されることとなりました。

武士の魂が宿ると言われる日本刀。現在実際に残っている名刀の約半数が、備前で作られたと言われています。その匠のすばらしい技を目の前で見せてくれる施設が「備前ふるさと刀剣の里」です。

敷地内には古式鍛錬を行う鍛冶場や、鞘(さや)柄(つか)彫金などを行う刀剣工房があります。それぞれ別棟になっており、板間の作業場では職人が真剣な眼差しで作業をしています。その匠の技を見学していると、職人たちの気持ちがこちらに伝わり、息を殺して見学する程。日本刀を作ることはとても神聖な作業なのだと初めて知りました。

また曜日により行われていない作業もありますが、作業場は見学する事が出来ます。室内には普段あまり見慣れない道具類が所狭しと並び、その工程が写真入りで丁寧に掲示されています。一振りの日本刀がこんなに多くの職人の手によって作り上げられるとは、本当に驚き。そしてますます日本刀の魅力に取りつかれました。

また工房とは別に、鉄と鋼(はがね)や日本刀についての展示・映像を見る事が出来る「刀剣博物館」もあり、実際に備前刀が展示されています。時間が経つのを忘れてしまう程内容の濃い展示です。

そしてここで特にお勧めなのは、月に1度古式ゆかしい鍛錬が行われている事。それではその様子をご紹介しますね。

新年を迎えて最初の火入れ

新年を迎えて最初の火入れ

写真:Ise Shinkurou

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たまたまこの写真の時は年始に行われる初火入れでしたので、まず神事から始まりました。古くから備前の刀工達の信仰を集めてきた「靱負(ゆきえ)神社」の神主さんが鍛冶場で祝詞をあげます。

この神社は目にご利益のある神社で、火を眺めながら、炎の色の変化で火力を調節する鍛冶職人にとって大切な神社だそうです。

静かな作業場に響き渡る祝詞を聞いていると、職人だけでなく見学している私たちも厳粛な気持ちに。

そしていよいよ火をおこしますが、なんと刀工の一人が鉄の棒を叩いて火をおこすのです。ライター・マッチ・スイッチ一つで火を利用する現代人には本当に驚きですよ。

いよいよ火が入りました

いよいよ火が入りました

写真:Ise Shinkurou

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いよいよ火が入りました。刀工が左手で吹子(ふいご)と呼ばれる送風装置をゆっくりと動かします。静かな作業場に吹子の「グオーッ ゴー」という少し怖いような低い音が響きます。この音を聞いていると「ああ人類は火を利用して生活してきたのだなあ」と再認識。

そして木炭全体に火が回り、火力が一定になるまでこの操作が続けられます。

刀工だけでなく、見物している者も全員が吹子の音を聞きながら炎を見つめます。現場には緊張した空気が流れ、皆で息をつめて炎を見守ります。炎を眺めながら吹子の音を聞いていると、この作業場だけ特別な空気が流れているよう。皆様にも是非体験していただきたい雰囲気です。

今も目に焼きついている炎の色

今も目に焼きついている炎の色

写真:Ise Shinkurou

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そしていよいよ玉鋼(たまはがね)が入れられました。なんと炎の色が瞬間に変わり、今まで見たことのないような綺麗な色に。私だけでなくその場にいる見学者全員から「おーっ」と歓声が上がりました。

鍛冶職人の左手の吹子を押す動作が少しゆっくりと優しくなって来ましたよ。目で温度を測っているのですね。本当に驚きです。

今までの生活の中で目にしてきた炎の色とは全く違う素晴らしい色。目だけでなく体全体が引き込まれそうな錯覚を起こしました。是非見て頂きたい、いや感じて頂きたい炎です。

いよいよ槌を振るいます

いよいよ槌を振るいます

写真:Ise Shinkurou

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そして最後に鍛錬。打ちのばす圧力で玉鋼から不純物を取り除く作業です。今回は神主さんに続いて見物客も参加する事が出来ました。

この槌が何とも重いのですよ。槌の一振りに真剣な気持ちを込めて力いっぱい振り下ろしました。カーンと響く気持ちの良い音と怖いほどの火花!初めての体験でしたがとっても素敵な経験でした。

現在この古式鍛錬を公開している施設は全国的にあまり多くはありません。是非備前長船でこの古の伝統文化をお愉しみ下さい。「相槌を打つ」の語源となった言葉通りの素晴らしい鍛錬を見る事が出来ます。前もってホームページ等で日付・時間を確認してお出かけ下さいね。

「備前おさふね刀剣の里」
開場時間:午前9時〜午後5時(入場4時30分まで)
入場料:一般500円
休館日:毎週月曜日(月曜が祝日の場合は翌日に振替)
    年末年始 12月28日〜1月4日
    展示替えの臨時休館あり

まとめ

日本刀の故郷・備前長船にある「備前おさふね刀剣の里」では、古くから伝わる作刀技術を実際に見る事が出来ます。特に月に一度の古式鍛錬の匠の技と火の力強さを是非ご覧いただきたいです。また小刀製作講座等もありますので、魔を払うお守りとして自作されるのも楽しいですよ。日本刀という世界に誇れる日本文化を感じる事の出来る備前長船への旅はいかがでしょうか?

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掲載内容は執筆時点のものです。 2012/01/05 訪問

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