大津市・神秘の高層湿原「八雲ヶ原」と豪快滝群の沢登り「神爾谷」

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大津市・神秘の高層湿原「八雲ヶ原」と豪快滝群の沢登り「神爾谷」

大津市・神秘の高層湿原「八雲ヶ原」と豪快滝群の沢登り「神爾谷」

更新日:2017/04/25 14:05

春野 公比呂のプロフィール写真 春野 公比呂 学芸員資格

かつてロープウェイが通じていた頃、家族連れ等で賑わっていた滋賀県大津市比良山系の八雲ヶ原湿原。標高900m地点にあり、シャクナゲやベニドウダン等が有名。湿原に到るルートの内、「神爾滝」群を擁する神爾谷コースは装備なしで遡行でき、次々と現れる豪快な滝群が見もの。また、稜線には浸食作用でできた巨大な磨崖仏や琵琶湖の展望スポットもあります。この神秘なる自然の醍醐味を是非、ご体験下さい。

巨大な「手」が滝となって襲い掛かる

巨大な「手」が滝となって襲い掛かる

写真:春野 公比呂

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高架が続き、琵琶湖の展望が優れたJR湖西線の比良駅は田圃の中にある駅。ここからこれから登る比良山脈を望むことができます。比良ロープウェイ廃業後、比良駅から登山口に到るバス路線も廃止されていたのですが、2013年、約9年ぶりに復活しました。しかし、運行は春分の日から12月第一日曜日までの土日祝祭日と盆期間のみです。

巨大な「手」が滝となって襲い掛かる

写真:春野 公比呂

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駅からは江若バス比良登山線に乗車し、約10分で「比良イン谷口」バス停降車。ロープウェイ稼働時、バスは北の道路の終点「リフト前」バス停まで乗り入れていましたが、その終点を目指します。かつてはバス停から「比良登山リフト」に乗り、釈迦岳中腹でロープウェイに乗り換えていたのです。

道路終点からは釈迦岳登山道が延びていますが、神爾谷(じんじのたに)と支流の釈迦谷との合流点を過ぎた辺りから、釈迦岳登山道や神爾谷迂回登山道と分かれ、適当に神爾谷を目指して雑草を踏み分けて行きます。谷は険しい岩々もなく、滝以外の箇所は比較的優しい流れ。大半が伏流水になっている所では、渓流の幅が僅か3cmほどになっている等、遡行していて不思議な気持ちになります。

川床に岩々が目立ってくると、最初の滝、雌滝(一の滝・落差15m)が現れます。直瀑で滝壺も猫の額ほど。

巨大な「手」が滝となって襲い掛かる

写真:春野 公比呂

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次の滝は落差13mの「二の滝」ですが、この滝は神爾滝(総称)最大の滝より印象的。「掌滝」とでも言いましょうか、激流が岩を縦にいくつも断ち割り、熊手型になって落下しているのです。写真では実際よりかなり小さく写って見えるのですが、滝をバックにして記念写真を撮る際、頭上から飛瀑が飛び掛かるように写り、迫力満点です。

滝の「天国」から荒涼たる「地獄」へ

滝の「天国」から荒涼たる「地獄」へ

写真:春野 公比呂

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次の「三の滝」は規模が最も小さく、落差は5m。しかし水量が多く、轟音も轟いているので、実際より一回り大きく感じられます。どの滝も周辺には木漏れ日が差し込み、谷自体も明るく、軽やかな気分で遡行できます。

滝の「天国」から荒涼たる「地獄」へ

写真:春野 公比呂

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次の滝「雄滝(四の滝)」が神爾滝最大の滝で落差は18m。この滝も水量の多さから、落差が20mを超える滝のように感じられます。一旦飛瀑は段になった所に当たるのですが、その飛沫が豪快で、水膜の広がりはまるで鷹が飛び立とうとしている様のよう。

この奥にもまだ複数の滝が懸かっているのですが、雄滝を超える規模の滝はないので、ここで遡行を止め、山道を上がり、谷の上方を並行する登山道に合流し、これを登ります。

滝の「天国」から荒涼たる「地獄」へ

写真:春野 公比呂

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登山道は再び沢筋を通るようになりますが、やがて水はなくなり、涸れ沢となります。樹林帯を抜けると扇状地の石ころだらけのザレ場になり、高さ7〜8mほどの尖った花崗岩が林立する箇所に到ります。荒涼とした風景ですが、ここを「蟻地獄」と言います。

コース随一の展望スポットと山上の湿原

コース随一の展望スポットと山上の湿原

写真:春野 公比呂

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前山(999m)南東の尾根沿いを通る「ダケ道」に合流すると北に登り、ロープウェイの山上駅があった北比良峠に立ちます。この周辺から神爾谷越しに望見する琵琶湖は絶景で、近江舞子の内湖、小松沼(写真中央のやや下)から日本唯一の湖の有人島である沖島、そして対岸の近江八幡市にも長い島のように見える長命寺山から連なる山塊があり、一枚の絵のよう。尚、小松沼の琵琶湖側の岸は天橋立風になっており、「小松橋立」と呼びたい位。

コース随一の展望スポットと山上の湿原

写真:春野 公比呂

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北比良峠から北西に十数分で八雲ヶ原。ここは周囲の山々から流れる水が集結した所。明王谷から奥ノ深谷の水源地・八雲池を中心とした湿原で、ミズゴケと砂の層が交互に重なり合って構成されています。早春にはショウジョウバカマやイワナシ、初夏にはシャクナゲやベニドウダン、盛夏にはトキソウやカキラン、サワギキョウ等、沢山の花が咲きます。

コース随一の展望スポットと山上の湿原

写真:春野 公比呂

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水を湛えた八雲池も湿原とはまた違った魅力があります。まるで写真の高木は巨大コーンのよう。尚、湿原を周回する小径もあります。

自然の巨大摩崖仏とは

自然の巨大摩崖仏とは

写真:春野 公比呂

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八雲ヶ原からは南東に上がった後、南下して北比良峠まで回遊しますが、途中の分岐を左折すれば「天巧磨崖仏」に到ります。これは巾20m、高さ10mの花崗岩が風雨によって浸食され、六体の観音像のように分かれたもの。「天巧磨崖仏」と呼ばれるようになったのは昭和41年からで、谷口久次郎知事が「天が巧みに崖を磨いて造った仏」と評し、名付けました。ただ、現在は岩の表面が風化し、観音の姿は判別しにくくなっています。

自然の巨大摩崖仏とは

写真:春野 公比呂

天巧磨崖仏を擁する尾根周辺からは琵琶湖南部の展望も広がっています。復路は北比良峠からダケ道を下るか、前山を経由して金糞峠から正面谷コースを下り、イン谷口まで戻るといいでしょう。

因みにバスを運行する江若交通は、ホームページで後者のコースを掲載していることから、時間は前者よりややかかるものの、比較的下り易いコースと考えていいでしょう。

自然の巨大摩崖仏とは

写真:春野 公比呂

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比良駅まで戻った後、時間があれば東の「北比良水泳場」(海で言うところの海水浴場)に寄ってみて下さい。水の透明度に驚きます。

涼やかな沢登りと自然の楽園を

神爾谷は北方の八ツ淵滝を擁す八池谷のように、遡行コースが整備されている訳ではありません。遡行する際は自己責任で行って下さい。しかし八池谷のような、空中に張られた細い針金に掴まりながら、丸太橋を横歩きで進むような箇所はなく、遡行は比較的簡単。

八雲ヶ原はロープウェイと共に側のスキー場も廃止されたため、各種建物は取り壊され、騒々しい観光客の姿もなくなり、登山者のみが集う場となりました。周囲を千メートル級峰に囲まれていることから、秘境感も漂っています。

コースタイムは、本記事のコースを辿った場合、イン谷口から北比良峠まで上がり、八雲ヶ原間を回遊し、北比良峠まで戻ってくるのに3時間少々。北比良峠から金糞峠を経てイン谷口までは2時間少々。

明るい谷で心地良い滝風に吹かれ、山上では各種花々の咲く楽園で楽しいひとときをお過ごし下さい。

掲載内容は執筆時点のものです。 1994/05/14 訪問

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