写真:松田 朝子
地図を見るシカゴ美術館の正式名称はThe Art Institute of Chicago。ミュージアムではなくインスティチュートなのは、前身が美術大学だったからです。19世紀後半、建築ラッシュが起きたシカゴには資産家が集まり、富豪たちは、当時ヨーロッパであまり評価をされていなかった印象派の作品を買いあさっては、学生の参考になるよう、美術学校に寄付をしたのです。
そのうち、作品が膨大な点数となったため、1893年のシカゴ万博を機に、コレクションを展示して美術館を創立しました。美術館の建物はその後増築を重ね、現在は新旧の入り混じった複雑な造りになっています。その中で、必見のアートを巡ってみましょう。
2頭のライオン像のあるメイン・エントランスからは2階へ。階段を上がる前に、館内図の載っているビジターガイドと日本語版の館内情報を入手します。最初は1900年以前のヨーロピアン・アート。
写真というものがなかった19世紀初頭までは、権力者は自分たちの姿を絵に描かせていたので、写実的な技法が好まれました。ここにはエル・グレコやレンブラントなど、昔、美術の教科書などで見たことのあるような絵画が並んでいます。これらはすべて本物だということにまず心を揺さぶられます。写真撮影は、フラッシュをたかなければOKです。
展示品は一部を除きガラスは入っていませんから、綺麗に写真が撮れます。ちなみに動画撮影はNGです。
写真:松田 朝子
地図を見る次はシカゴ美術館の目玉とも称される印象派。ルノワールやモネなどの印象派の画家たちが無名の時代、彼らの面倒を見たのはシカゴの富豪たちでした。フランス人はそれを悔しがっていると言われます。ちなみにルノワールの作品は、すべて一人の富豪によって寄付されたものです。ルノワールが使っていた絵の具は退色がなく、鮮やかなまま現在に至っています。
写真:松田 朝子
地図を見るルノワールやモネを支えた、カイユボットの『パリの通り、雨の日』。
正確な遠近法と、写真よりリアルに描かれた雨の歩道が素晴らしく、次の スーラの『グランド・ジャッド島の日曜日』とともに、シカゴ美術館の人気作品です。
写真:松田 朝子
地図を見る『グランド・ジャッド島の日曜日』。
すべて無数の点で表されている点描画で、後期印象派の作品の中で最も重要な作品です。また抽象画の先駆けとして、この作品は20世紀になってピカソに影響を与えたと言われています。美術の教科書ではおなじみ、もっともこの作品を取り上げない美術の教科書はありません。そして寄贈者の遺言により、1927年から100年間は門外不出の作品なので、今のところはここでしか見ることができません。
写真:松田 朝子
地図を見るメイン・ビルディングを後にして次は1989年にできたライス・ビルへ。ガラッと変わってスタイリッシュな空間では、1900〜1950年のモダン・アメリカン・アートのコーナーに進みます。ジョージア・オキーフの作品が目立ちますが、オキーフはこちらの附属美大の卒業生です。オキーフ作品は、MoMAについでシカゴ美術館が2番目に多く所蔵しています。
写真:松田 朝子
地図を見る日本でもポスターが人気商品となっている、ホッパーの『ナイト・ホークス』。どの流派にも属さない一匹狼の作者、ホッパーも夫人とともに画中に。ムービースターのような二人の風貌にも視線が集まっています。
写真:松田 朝子
地図を見る今度は1階に降り、シャガールが元絵を描いたステンドグラス作品、『アメリカン・ウィンドウズ』。シャガールの子供の頃の思い出がモチーフの作品ですが、サービス精神旺盛のシャガールは、ご当地シカゴの高層ビル、ジョン・ハンコックセンターも描いています。
そして2009年に増築された近代棟の3階、モダン・アートのコーナーは、1900〜1950年代のヨーロッパの近代美術。ここではピカソの作品が目を引きます。ピカソは80年間で146000点の作品を残した、ギネス記録の保持者です。『老いたるギター弾き』は、青の時代と呼ばれる、ピカソの貧困時代の代表作。画材を買うお金にも事欠き、作品を再利用して描いているため、下に描いてあった絵がうっすらと見えます。
最後は、日本人建築家、安藤忠雄氏の設計による、「Ando Gallery」。日本の屏風が展示された空間は、これまでの作品と打って変わって、侘び寂びの風情が漂います。屏風と対面するように置かれた椅子やベンチも、安藤氏の設計によるものです。
その他、世界中のリビングルーム(日本版は箱根富士屋ホテルがモデルになっています)を12分の1に縮小した、ソーン・ミニチュア・ルームス、ミュージアムショップなども余裕で見て回り、90分コースは無事終了。
シカゴ美術館は、シカゴで最も人気のある観光スポットです。仕事や、飛行機の乗り継ぎなどでシカゴに立ち寄った人も、時間がないからと諦めないで、この駆け足コースをもとに美術館を訪れて欲しいもの。名作との出会いは、シカゴの旅を何倍にも印象深いものにしてくれるでしょう。
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(2024/10/4更新)
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