落とし階段に武者溜り!京都「二條陣屋」はまるで忍者屋敷

落とし階段に武者溜り!京都「二條陣屋」はまるで忍者屋敷

更新日:2017/05/25 18:02

結月 ここあのプロフィール写真 結月 ここあ 旅行ブロガー
1670年頃に創建されたといわれる「二條陣屋(重要文化財・小川家住宅)」は、参勤交代の行き帰りに立ち寄る大名たちの宿泊所として機能してきました。繊細優美な数奇屋式建築には、大名の身辺警護のための落とし階段や武者溜りなど不意の敵に備えた造りとなっていて、目を見張るものがあります。忍者屋敷のような趣向を凝らした二條陣屋をご紹介しましょう。

重要文化財にも指定されている「二條陣屋」

重要文化財にも指定されている「二條陣屋」

写真:結月 ここあ

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京都市営地下鉄東西線・二条城前駅から3分ほどのところにある、「二條陣屋」は江戸時代後期、豪商の屋敷として創建されました。京都には本陣という大名の宿泊所がなかったために、京に屋敷をもたない大名の宿として二條陣屋が使われていました。

防火建築・陣屋風建築・数寄屋建築の3点から、昭和19年には国宝に指定されましたが、昭和25年に文化財保護法制定により重要文化財に名称変更。民家としては、全国で2番目に国の重要文化財に指定されました。

重要文化財にも指定されている「二條陣屋」

写真:結月 ここあ

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こちらが小川家の家紋。その昔は春日神社の傘下でもあり、戦国時代は織田家・豊臣家にも仕え、秀吉の茶人として5本の指にも入っていました。

重要文化財にも指定されている「二條陣屋」

写真:結月 ここあ

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1670年頃には米穀商・両替商・木薬屋の商いをしていたことから、その名残りの看板が玄関に残されています。

室内の様子をうかがえる「大広間」

室内の様子をうかがえる「大広間」

写真:結月 ここあ

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こちらの1階大広間から案内が始まります。大広間は主客の泊まる部屋で、他の武士との謁見や食事、就寝をしたところ。床の間・附書院・違い棚などの書院造りとなっています。違い棚の下、楓の一枚板は家が一軒買えるほどの高価な物です。

天井の左には、一か所天井板がなく、下から見上げると明かり取りの窓にしか見えないようになっているところがあります。実はこの天井裏には武者溜りがあり、そこから室内の様子をうかがい、何か危険が迫ればそこから下に飛び降りることもできるような仕掛けです。

室内の様子をうかがえる「大広間」

写真:結月 ここあ

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大広間の隣には檜板張りの「お能の間」があります。、能舞台として使用できるようになっていて、床下には音響効果を高めるために4つの甕がいけてあります。

室内の様子をうかがえる「大広間」

写真:結月 ここあ

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大広間とお能の間の境の長押には、打たれた磁器製の釘隠や、欄間には透かし彫りの捻梅(ねじりうめ)などと凝っています。透かし彫りは、照明が行灯だった時代の装飾で、下からの行灯の明かりが天井に捻梅の花模様を影絵のように映し出しました。また障子や襖を開くと、カタカタと音がする仕掛けになっています。

国内最古の「陶板浴槽」

国内最古の「陶板浴槽」

写真:結月 ここあ

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大広間の前は、美しい庭が広がります。

国内最古の「陶板浴槽」

写真:結月 ここあ

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こちらは国内最古の陶板浴槽で、外で焚いた湯を開いた穴から竹筒で流し込む給湯式。浴槽に接して炭釜を入れる保温槽があり、間には仕切り板が設けられ、保温槽に回る湯量を変えることにより、温度調節をする仕組みになっています。

国内最古の「陶板浴槽」

写真:結月 ここあ

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春日の間は、元々は春日神社の神官であったことから、奈良を意識した数寄屋造りになっています。庭には春日社を祀り、中央部には長方形の井戸があります。大火が続いたことから、いざ火災になったときは重要書類や貴重品を唐櫃(からびつ)に入れて、沈めるように工夫されていました。

追っ手を撒くことができる「隠し階段」

追っ手を撒くことができる「隠し階段」

写真:結月 ここあ

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こちらは隠し階段で、普段上り口は来訪者にわからないように、階段を吊り上げて、茶壷棚に見せかけています。写真は隠し階段を下したところで、こちらから2階へ上れます。

追っ手を撒くことができる「隠し階段」

写真:結月 ここあ

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この隠し階段は、普段は床のように塞いでいますが、実は引き戸になってこのように開ければ階下へ降りられます。2階から階下へ逃げる時に、引き戸の下に隠れることもできたり、追っ手に階段があるように見せかけて、足を踏み外させるような仕掛けにもなっています。

追っ手を撒くことができる「隠し階段」

写真:結月 ここあ

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2階の赤壁の間からは、さすが商人だけに「人から金はかりん」「金持ちになる」と願掛けしたのか、花梨の木ともちの木が見えます。

優れた防火建築と「武者溜り」

優れた防火建築と「武者溜り」

写真:結月 ここあ

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2階の廊下の先には、京町家に多く見られる虫籠窓(むしこまど)が見えます。内側には土戸を設け開口部を完全に封じることができ、飛び火の侵入を防ぐようにしてあったり、軒下には、フックのようなものが張り巡されていて、火事の時は濡らしたむしろを引っ掛けて屋敷に火が回らないようにもなっています。

優れた防火建築と「武者溜り」

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大広間の階上には、天井裏に隠された見張り部屋のような武者溜りがあり、大名と来訪者との謁見の様子を家来が見張っていたと思われます。来訪者からは天窓にしか見えない死角にあるので、不審に思われることなく見張りができるようになっています。

優れた防火建築と「武者溜り」

写真:結月 ここあ

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二條陣屋には、お茶室が7か所もあります。そのうち2階より一段高い位置にあるこの茶室は、家臣の控えの間としても使用されていました。一段高い位置にあるのは、階下に物音が響きにくくする配慮です。また部屋の左奥には階段があり、非常時に屋根伝いに逃げることもできるようになっています。

二條陣屋

いかがでしたか、忍者屋敷のような落とし階段や武者溜り・隠し部屋など、なかなか見ることができませんよね。それも観光目的の建物ではなくて、歴史ある本当のものなんですよ。京都観光というと、どうしても神社仏閣が中心となりますが、このような陣屋見学を楽しんでみませんか。

二條陣屋の見学は、電話予約が必要です。詳しくは下記HPをご覧ください。今でも住居として使用している部分がありますので、見学は家人または専門ボランティアの方が、50分ほどかけて案内をしてくださいます。
※陣屋内の写真撮影はNGです。

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掲載内容は執筆時点のものです。 2017/05/16 訪問

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