シカゴの中心地から車で15分、住宅も多い静かなエリアにKOVALディスティラリーはあります。創設者のロバート・バーネッカー氏はオーストリア出身。ロバート氏の実家はオーストリアでワイナリー兼ディスティラリーを経営しており、酒造は身近な世界でした。2008年、ロバート氏はソナット夫人とともに、以前からの夢である自身の蒸溜所、KOVALディスティラリーをこの場所に立ち上げたのです。
禁酒法時代以降、シカゴでは奮わなかったクラフトウィスキー産業でしたが、KOVAL誕生以降、シカゴでは500以上ものディスティラリーが造られています。KOVALはそのトレンドを生み出しただけでなく、数々の受賞歴を誇るウィスキーを産出し、ロバート氏も世界的にも有名な蒸留の専門家の一人と称されています。
ディスティラリーツアーでは、そんなプレミアムなウィスキーが造られる様子を見ることができます。
ツアーのガイドをしてくれるのは、自分でウィスキーを造ってみたいという思いから、3年前よりこのディスティラリーで働いている小嶋冬子さん。見学ツアーのあるディスティラリーは他にも多くありますが、説明は英語です。難しい言葉も出てくる発酵や蒸溜に関してをKOVALでは小嶋さんが日本語で説明してくれます。
写真:松田 朝子
地図を見るそんなKOVALな人たちによって造られるクラフトウィスキー・スピリッツの特徴はまず、原材料はすべてオーガニックで作られていることが挙げられます。製造工程に使われる酵素類、そして樽材もオーガニックの物が使われています。ちなみに水はミシガン湖から取れる軟水で、厳選された素材のみが使われています。原材料のクオリティをそのままボトルにという、Grain to Bottleは、KOVALのコンセプトです。
写真:松田 朝子
地図を見るKOVALが他のディスティラリーと違うのは、原材料ごとにウィスキーを分けているところにあります。ウィスキーは、「○○年もの」と年代で判断されることが多い中、ここでは原材料ごとに分けられていて、ミレット(きび)100%のウィスキーは世界でKOVALだけが成功しています。アメリカが発祥のウィスキー、ライ(ライ麦)も、ここではライ100%配合。ライウィスキーは作り方と管理が難しいため、多くのディスティラリーでは、100%配合のライを作りたがらないのです。
写真:松田 朝子
地図を見るディスティラリーの中もまた厳選された器材が並んでいます。その一つ一つにウィスキー造りの情熱と愛情があふれていて、ロバート氏が考案したというKOVALのハイブリットスチルは、コンピューター制御も可能な最新式。蒸溜の工程で、スピリッツがアロマやフレーバーをより放散できるように計算された内部構造になっています。一度に5000リットルが蒸溜可能です。しかし、蒸溜されたあとに使われるのは、原材料の味わいが入っている、わずか10%程度の部分なのです。
写真:松田 朝子
地図を見るさらに、普通のディスティラリーは樽からウィスキーを全部出してブレンドし、加水してボトリングをするのですが、KOVALのウィスキーは、シングルバレルなので、1つの樽から、ブレンドせずにボトリングしています。また普通の樽は180-200リットルあるのですが、KOVALの樽は114リットル(30ガロン)と小さく、樽を小さくすることによって、ウィスキーに香りがつきやすく、かつ樽ごとの味が均等になるのです。
写真:松田 朝子
地図を見る個性的なKOVALのウィスキーやジンですが、そのビジュアルも単なる「酒瓶」ではなく、女性の部屋にあっても違和感がないデザイン。飲み終わってもディフューザーなどとして飾っておきたくなります。ちなみに美しいラベルは、起業家で彫刻家だったソナット夫人の叔母さんによるデザイン。乳がんにかかり亡くなってしまったので、ラベルの下にはSusan for Presidentと記してあります。
「KOVAL」という名前は、誰もやったことがないことをやる人、すなわち先駆者に由来します。大使館員だったロバート氏と、大学教授だったソネット夫人が、その社会的地位をあっさり手放して始めたこのディスティラリーには、ぴったりのネーミングです。
そんなKOVALのパワーが引き寄せた小嶋さんも、ここでの仕事をこなしながら日本の大学を卒業したというKOVALなキャラクター。生産者の人となりもまた、プレミアムウィスキー造りに欠かせない要素でしょう。
シカゴに行ったら、KOVALのディスティラリーに足を運んで、唯一無二のウィスキーに酔いしれてください。
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(2024/11/12更新)
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