フィレンツェ近郊「ピストイア」、近代彫刻家マリーノ・マリーニの故郷を訪ねて

フィレンツェ近郊「ピストイア」、近代彫刻家マリーノ・マリーニの故郷を訪ねて

更新日:2017/08/09 14:39

中山 久美子のプロフィール写真 中山 久美子 日伊通訳&コーディネイター、ライター
20世紀を代表する近代彫刻家・マリーノ・マリーニ。長年教鞭をとったミラノの名誉市民であり、またフィレンツェにも彼の博物館がありますが、彼の生まれ故郷はフィレンツェからほど近いピストイアです。世界的名声を得た後も、自身のルーツであり、作品のイスピレーションであるエトルリア文化が色濃く残るトスカーナに戻りました。彼の愛した町・ピストイアで、マリーノの作品をたどってみましょう。

「マリーノ・マリーニミュージアム」で、その作品と生涯をくまなく知る

「マリーノ・マリーニミュージアム」で、その作品と生涯をくまなく知る

写真:中山 久美子

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マリーノ・マリーニミュージアムはピストイア駅から徒歩約7分、黄色い建物に赤い看板が目印です。ミュージアムはマリーノが亡くなる前年・1979年に資料センターとしてオープンし、その後1983年に生まれた財団もここに設置されました。
ミュージアムで作品を見学するのはもちろんですが、資料センターには1929年から現在までのマリーノに関連する専門書、作品カタログ、美術雑誌、写真やビデオまで、マリーノの生涯の活動全てが展望できる資料が揃っており、マリーノの作品や人柄などをさらに深く知ることができます。

「マリーノ・マリーニミュージアム」で、その作品と生涯をくまなく知る

提供元:Fondazione Marino Marini マリーノ・マリーニ財団

http://www.fondazionemarinomarini.it/index.php地図を見る

1階に入るとそこはアナトリウム。ガラスの逆三角形が中心に飾ってありますが、雨が降った時はその先から雨が落ち、古代からの井戸へ水が落ちるようになっています。一番奥のデスクでチケットを購入しますが、この1階でも、いくつかのマリーノのブロンズや石膏の彫刻作品が迎えてくれます。

「マリーノ・マリーニミュージアム」で、その作品と生涯をくまなく知る

提供元:Fondazione Marino Marini マリーノ・マリーニ財団

http://www.fondazionemarinomarini.it/index.php地図を見る

マリーノの作品はゆったりとしたスペースに調和をもって展示され、マリーノの生涯とその作品が、時系列で分かりやすく見学できるようになっています。最も有名な馬や騎馬像、ポモーナ(ローマ神話の豊潤の女神)、踊り子などをテーマにした作品が彫刻では約150点、絵画やデザインでは約110点。マリーノの彫刻作品というとブロンズをイメージすることが多いですが、このミュージアムでは100点を超える石膏彫刻を展示しており、マリーノ自らが「ブロンズ彫刻への通過点でなく完成品である」と考えていたこれらの作品群は、まさに圧巻とも言えます。

中世フレスコ画と近代彫刻との調和が美しい「タウ教会」

中世フレスコ画と近代彫刻との調和が美しい「タウ教会」

写真:中山 久美子

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ミュージアムの建物の右側にくっついているのが、聖アントニオ・アバーテ教会(通称・タウ教会)です。1300年代に建てられた教会ですが、1787年には教会としての役割を終えました。内部のフレスコ画の芸術的価値から修復が行われ、2008年にはマリーノ・マリーニミュージアムの一部として、マリーノの1950〜60年代の作品、「奇蹟」や「叫び」など全12点が展示されています。

中世フレスコ画と近代彫刻との調和が美しい「タウ教会」

写真:中山 久美子

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この写真は、主祭壇側から見た「奇蹟」。それぞれの作品の表現を最大限に感じられるように、作品の配置や配置するための土台までも、入念に計画されたものだそうです。14世紀に聖アントニオの生涯を描いたフレスコ画と、20世紀のブロンズ像が織りなす調和は、一種の劇的な空間を生み出しています。

教会を入ってすぐ左の扉からは、ミュージアムのロビーともなっているアナトリウムに直接行くことができます。

マリーノ自らが寄贈した作品「奇跡」を見に、市役所の中庭へ

マリーノ自らが寄贈した作品「奇跡」を見に、市役所の中庭へ

写真:中山 久美子

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マリーノ・マリーニミュージアムから北に5分ほど歩くと、ピストイアの中心でもあるドゥオモ広場に出ます。名前の通りドゥオモのある広場ですが、その一角にあるのがピストイア市役所。特に表示なども出ていませんが、ここにもマリーノの代表的な作品が展示されています。

マリーノ自らが寄贈した作品「奇跡」を見に、市役所の中庭へ

写真:中山 久美子

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市役所の1階、中庭の真ん中に置かれているのが、マリーノの1953年の作品である「奇蹟」。同じタイトルの作品がいくつも残されているように、マリーノが幾度となく表現をし続けたこの作品ですが、ここにあるのはマリーノ本人から1975年にピストイア市に寄贈されたものです。2017年はピストイア市が「イタリア文化都市」に選ばれたため、それに合わせて1万ユーロをかけて修復されたばかり。

市役所の他にも、ヴィッラ・チェッレ、大司教館でもマリーニの作品を見ることができます。

あわせて訪れたい、大聖堂やチェッポ病院

あわせて訪れたい、大聖堂やチェッポ病院

写真:中山 久美子

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広い広場で一際目立つのが、この鐘楼。右横にある大聖堂は10世紀に建設されましたが、現在に残るロマネスク様式のファサートは1300年代後半からの改築後のもので、1階入口にロッジアが追加されました。この大聖堂の中央扉上にあるのが、ルネサンス期に活躍したデッラ・ロッビアの「聖母子と天使」です。

あわせて訪れたい、大聖堂やチェッポ病院

写真:中山 久美子

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比較的簡素でありながら荘厳な内部は、三郎式になっています。入って右側廊の中ほどには、200年近くかけて完成された銀細工「聖ヤコブの祭壇飾り」が、入ってすぐ左にはヴァロッキオが1473年に製作し始めた「ニッコロ・フォルテグエッリ枢機卿のモニュメント」があり、見事な装飾物に目を奪われます。

あわせて訪れたい、大聖堂やチェッポ病院

写真:中山 久美子

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ドゥオモ広場から更に北に少し行くと、カラフルに装飾された柱廊付きの建物が見えてきます。このチェッポ病院は13世紀に設立され、現在でも病院として使用されていますが、注目すべきはアーチ上にある帯状装飾とメダイオン。帯状装飾は「ミーゼリコルディア(慈善病院)の7つの仕事」が描かれたもので、メダイオンはフィレンツェの捨て子養育院や、ピストイアのドゥオモ扉上などにも作品を残している、デッラ・ロッビア工房のもの。いずれも16世紀の作品ですが、4世紀以上たった今でも、その鮮やかな色から当時の病院の様子が生き生きと伝わってきます。

珠玉の小さな町で、ゆったりと芸術にひたる

マリーノ・マリーニの作品を中心にピストイアを紹介しましたが、これらの他にも、白と緑の大理石が美しい「サン・ジョヴァンニ・フォルチヴィタス教会」や、トスカーナ大公の命によって建造された「聖バルバラ要塞」など、見所があちらこちらに点在しています。そして、中世がそのままに残るアーチのある路地やオシャレなショップなど、散策するだけでも楽しめる街。フィレンツェから簡単に行けますので、日帰りででもゆったり、ピストイアの魅力を堪能してみて下さいね。

掲載内容は執筆時点のものです。 2017/05/09 訪問

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