水の都“静岡三島”「源兵衛川」せせらぎの風景を辿る

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水の都“静岡三島”「源兵衛川」せせらぎの風景を辿る

水の都“静岡三島”「源兵衛川」せせらぎの風景を辿る

更新日:2017/07/05 15:00

今村 裕紀のプロフィール写真 今村 裕紀 旅先案内人

富士山南麓にひろがる三島の街は、水の都と呼ばれ、富士山の湧き水に潤う街です。なかでも、市街の中心を流れる源兵衛川は、豊かな自然を再生した川として街のシンボルになっています。季節の花が川べりを彩り、初夏には子供たちでにぎわい、夜はホタルが舞う、そうした美しい光景は、テレビドラマのロケ地にも何度か選ばれています。そんな源兵衛川の涼やかな散策にご案内いたします。

源流「楽寿園」から源兵衛川を南下する

源流「楽寿園」から源兵衛川を南下する

写真:今村 裕紀

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源兵衛川は、JR三島駅のすぐ南にある「楽寿園」の小浜池を水源として、三島市街を南下し、「中郷温水池」に至るまでの全長約1.5キロの清流です。川のなかには飛び石状の散策路が配されていて、水のせせらぎに寄り添って散策することが出来るのです。喧騒を離れたこの水辺で、透明な水の美しさ、さやさやと流れるせせらぎの音を間近に感じながらの散策は、しばし、日常を忘れさせ、いつしか「源兵衛川ワールド」へと引き込まれていくのです。

源流「楽寿園」から源兵衛川を南下する

写真:今村 裕紀

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源兵衛川は、ゲンジボタルの里でもあります。水温が比較的高いことから、どこよりも早く、5月の上旬から6月の中旬にかけてホタルたちが川面を舞います。無数の小さな光たちが闇夜にふわふわと漂いながら舞い踊る、まさに幻想的な光景が目の前に繰り広げられます。

もっとも、ホタルはこの源兵衛川に脈々と棲息し続けたわけではありません。世の常に違わず、川の水質汚染により、一旦はかつての環境が失われましたが、その後、地元住民や行政、企業、NPOらの力により、源兵衛川を清流に復活させ、そのうえでホタルの幼虫を放流した結果、いまではホタルが飛び交う美しい環境によみがえったのです。駅から数分の地にホタルが舞う、全国でも稀有な川なのです。

自然と構築物とが交差する

自然と構築物とが交差する

写真:今村 裕紀

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源兵衛川が県道の下をくぐると前方に「時の鐘」が現れます。この鐘は、江戸時代に三島の宿場に時を告げていました。戦争により軍事供出された鐘は、昭和25年に再建され、現在では毎夕6時に管理人により打ち鳴らされて、当時を偲ばせています。5分前に来れば、誰でも打たせて貰えます。

そのすぐ手前には、安政三年創業の「うなぎ 桜家」があります。土日祝日には、午後の2時でも、3時になってもいまだに列が途切れない人気店です。ご当地の食を粘り強く待ち続けるのか、それとも周囲に濃く漂う匂いで満足するかはあなた次第です!

自然と構築物とが交差する

写真:今村 裕紀

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「時の鐘」を過ごして先に進むと、源兵衛川を「いずっぱこ」が渡ります。「いずっぱこ」−それは、三島と修善寺を繋ぐ「伊豆箱根鉄道駿豆(すんず)線」の愛称です。

古くは尾崎紅葉の日記や芥川龍之介の手紙に登場し、最近では、2014年のテレビドラマ「ごめんね青春!」や2016年の「逃げるは恥だが役に立つ」に登場したことでも有名になっています。川辺に降り立ち、通過する列車を見上げれば、源兵衛川を渡る「いずっぱこ」が迫力ある姿で間近を通過して行きます。

自然と構築物とが交差する

写真:今村 裕紀

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「時の鐘橋」の愛称で親しまれている橋のアーチをくぐると、散策路の対岸に現れるのが<川の上を流れるレストラン>を謳う「dilettante cafe(ディレッタント カフェ)」。源兵衛川を望みながら食事が出来る唯一と言っていいレストランです。

1階がイタリアンレストラン、3階が「ワルツ」という名のワインカフェ&ギャラリーになっています。入口脇のコントラバスに始まり、アンティークな食器や楽器で飾られた店内に入れば、しっくりと落ち着いた雰囲気に包まれます。また、テラス席で、せせらぎに耳を傾けながらの食事は、きっと至福の時をもたらしてくれるでしょう。実はここもホタルの観賞スポットなのです。

子供も大人も大忙しの源兵衛川

子供も大人も大忙しの源兵衛川

写真:今村 裕紀

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陽ざしが次第に強くなり始める5月、6月ともなれば、休日の川はすでに子供たちでにぎわい始めています。川遊びを通じて、子供たちは自然や生き物に触れて、自ら学び始めているのです。川はかけがえのない学習の場であり、子供たちのコミュニティでもあるのですね。こうした光景を目にすると、ささやかな憧れが芽生えて来ませんか?

子供も大人も大忙しの源兵衛川

写真:今村 裕紀

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清らかな流れに戻った源兵衛川には、かつての県の絶滅危惧種の生き物をはじめ、多くの魚や水辺の生物が生息しています。サワガニやザリガニ、ドジョウなどが、いつしか子供たちのバケツやプラスティックの水槽に収まっています。

そうして、川で自然を満喫するのは、なにも子供たちばかりではありません。はしゃぐ気持ちを抑えて、せめて川に入るだけ、と大人たち。そんな人たちを見ているだけでも涼しげな気分にさせられます。

中流域の「水の苑緑地」へ

中流域の「水の苑緑地」へ

写真:今村 裕紀

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さらに南下すると、「水の苑緑地」と呼ばれる地域になります。ここまで来ると多少、野性味が残る流域になります。運がよければ、三島市の鳥でもあるカワセミに会えることもあります。

中流域の「水の苑緑地」へ

写真:今村 裕紀

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このあたりはちょっとした穴場ポイントで、人もそれほど多くなく、ゆっくりとしたい方にはおすすめスポットです。休憩用のベンチも用意されていて、お弁当をひろげるにも最適です。ここもホタルの鑑賞ポイントのひとつです。

「三島梅花藻」を辿り、源兵衛川の終着地「中郷温水池」へ

「三島梅花藻」を辿り、源兵衛川の終着地「中郷温水池」へ

写真:今村 裕紀

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源兵衛川を辿る散策もそろそろ終盤です。せせらぎが国道1号線をくぐる手前に「三島梅花藻(ミシマバイカモ)」の群生が見られます。川いちめんにねっとりと梅花藻が川面に漂います。

「三島梅花藻」を辿り、源兵衛川の終着地「中郷温水池」へ

写真:今村 裕紀

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三島梅花藻は、1930年に「楽寿園」の小浜池で発見され、梅の形に似ていることからこの名前が付けられたキンポウゲ科の水草です。水の汚染にとても敏感で、清流のなかでしか育ちません。その後、産業の振興に伴う水質汚染により、三島自生のものは絶滅しました。現在の三島梅花藻は、隣町の柿田川で保護育成されたものを移植して、ふたたび三島の地で育て上げたものです。可憐な花たちが、源兵衛川のせせらぎのなかで咲きほころびます。

「三島梅花藻」を辿り、源兵衛川の終着地「中郷温水池」へ

写真:今村 裕紀

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源兵衛川は、この「中郷温水池」でフィナーレを迎えます。「楽寿園」の小浜池で湧き出た水はおよそ1.5キロの小さな旅を終えて、この池に溜められます。

けれど、本当の意味での水の旅はまだ終わってはいません。「温水池」の名前が示すように、この池に注ぎ込んだ水は、ここで太陽光によって温められ、下流13集落の農業用水として供給されているのです。せせらぎは、ここで役割を変えて新たな使命を課せられているのです。源兵衛川の新たな旅立ちです。

最後に

源兵衛川の水辺を辿る散策でした。
源兵衛川流域の自然は、再生活動によってよみがえったものばかりです。その動機は、何よりも地元の人々の遠い記憶のなかにある故郷の、その再生を願う思いです。そのための活動の結実は、同時にその美しい自然に触れたい、接したいと願う多くの訪問者を迎えることにもなったのです。清らかな水の流れ、その中にたゆとう生き物たち、闇夜に舞うホタル、それらはみな、街中によみがえった自然のなかにあります。自然が街中にあるのです。
源兵衛川のせせらぎに耳を傾け、豊かな自然を全身で抱きしめてみる、そんな1日を過ごしてみませんか?

掲載内容は執筆時点のものです。 2017/06/03 訪問

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