写真:権丈 俊宏
地図を見る飯坂温泉は鳴子・秋保と共に“奥州三名湯”と呼ばれ、東北地方を代表する温泉地です。松尾芭蕉、正岡子規、与謝野晶子、ヘレン・ケラーなど多くの著名人もこの地を訪れました。またアクセスの良さも魅力的。車なら福島飯坂ICから15分ほど、東京駅からも新幹線利用なら二〜三時間で到着します。
「なかむらや旅館」は飯坂温泉のほぼ中心部に位置する老舗旅館。創業は明治24年ですが、建物は江戸時代末期の建築。その後明治時代に増築されて現代に至ります。木造三階建ての土蔵造り(外壁を土としっくいで塗り固めた建築様式)で、小ぶりな建物ですが重厚感に満ち溢れています。
写真:権丈 俊宏
地図を見る写真は玄関。帳場格子(帳場の囲いに建てる低いついたて)、大福帳(繁盛を願って「福」が付けられた売買勘定の元帳)など、創業当初からの備品が大切に保存されています。歴史と風格を感じつつも、どこか懐かしさを覚える空間です。チェックインしたら囲炉裏を囲んで寛ぐのも、趣のある時間を過ごせて良いでしょう。
写真:権丈 俊宏
地図を見るなかむらや旅館は国登録有形文化財の宿だけあって、現代では再現困難な建築意匠が、館内の至る所で見られます。写真はトイレの天井。折り上げ格天井(周囲を一段持ち上げる様に高くし、更に材木を格子状に組んだ天井)という、非常に格式の高い天井様式です。
写真:権丈 俊宏
地図を見る写真は客室へ行く階段。勿論今時の新建材などは一切使われておらず、手作業で削られた天然の木材を使用。階段手摺の洋モダンな細工や調度品にも品格を感じます。この様に「なかむらや旅館」は、日本建築の魅力が凝縮した小さな博物館とさえ言え、目と心を潤わせてくれます。他の宿泊客の迷惑にならない程度に館内を探索してみるのもおすすめです。
写真:権丈 俊宏
地図を見る宿泊は一日僅か四組まで。写真は二階にある客室です。三間続きの贅沢な造りの和室で、広い窓がある廊下に面し、部屋とは障子で仕切られています。明治時代の建築を極力そのまま残しているので、部屋にはトイレ・洗面は無く、廊下に出て共同のものを利用。機能性よりも、古き良き日本建築の風情を好む方におすすめします。
写真:権丈 俊宏
地図を見る温泉は大浴場が無く、二ヶ所ある貸切風呂を利用します。写真はそのうちの一つである“寛ぎの湯”。小ぶりの浴室ですが大きな窓に面し、明るく開放的な雰囲気です。
泉質はアルカリ性単純温泉。無色透明で癖の無い泉質ですが、水も熱も加えない源泉100%かけ流しで利用されています。成分量は少ないですが、三大美肌成分の一つとも言われる硫酸塩泉(芒硝泉)系統の泉質。浴後は肌が保湿され、温もり感も長時間持続する温泉です。
写真:権丈 俊宏
地図を見るもう一つの貸切風呂は“與右衛門(よえもん)の湯”。平成5年に改築された共同浴場の「鯖湖湯」で、建替前に使われていた寒水石を再利用して造られた浴室です。寛ぎの湯と同じく、源泉100%かけ流しの温泉が、ここでも堪能出来ます。
なかむらや旅館はレトロな建築や上質の温泉も素晴らしいですが、実は最も素晴らしいのが“おもてなしの心”。客に対する謙虚な姿勢や、歴史・建築に対する造詣が大変深く、訪れた人にもそれらがヒシヒシと伝わってきます。“おもてなし”は写真に写らないので本文では敢えて触れませんでしたが、なかむらや旅館へ訪れたら、是非そういった点も感じてみて下さい。
また飯坂温泉には九ヶ所の共同浴場があり、外来者も200円(波来湯は300円)で入浴出来ます。温泉街は食事処も充実しており、湯巡りの途中で休憩もしやすい温泉地です。
飯坂温泉の大湯的存在である「鯖湖湯」は浴舎建築が素晴らしく、温泉好きの方なら一度は浸かってみたい共同浴場です。また飯坂温泉の共同浴場はかなり熱めのところが多いので、やむを得ず加水して温度を下げたい場合には、他の常連さんに断ってから加水しましょう。
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(2024/3/19更新)
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