日本の“ワインの父”が創ったワイナリー、上越市「岩の原葡萄園」

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日本の“ワインの父”が創ったワイナリー、上越市「岩の原葡萄園」

日本の“ワインの父”が創ったワイナリー、上越市「岩の原葡萄園」

更新日:2017/07/15 16:23

松縄 正彦のプロフィール写真 松縄 正彦 ビジネスコンサルタント、眼・視覚・色ブロガー、歴史旅ブロガー

理想のお酒を求めて苦労したのはマッサンだけではありません。ワインについても、日本に合ったワイン用ブドウの品種改良から推し進めた人がいます。“川上善兵衛”さんです。1万種以上の品種を交配させ、国際ブドウ・ワイン機構に登録された日本のワイン用ぶどう(2種)の1つを開発したのです。その彼が創ったのが、日本でも最古級のワイナリー、新潟県上越市「岩の原葡萄園」。ここは日本のワインの歴史に欠かせない場所です。

雪深き越後、その山裾にあるワイナリー「岩の原葡萄園」

雪深き越後、その山裾にあるワイナリー「岩の原葡萄園」

写真:松縄 正彦

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雪深き地、越後。中でも上越市は豪雪地として有名ですが、この地にあるのが「岩の原葡萄園」です。日本には約250社のワイナリーがあるといわれていますが、この葡萄園はその中でも最古級のワイナリーです(最も古いのはメルシャン)。

また、越後はおいしいお米の生産地としても有名ですが、なぜ日本酒ではなくワイナリーを作ったのでしょうか?答えは”雪”にあります。
善兵衛さんはこの地の豪農に生まれ、多くの小作人を抱えていました。しかし冬には雪のために彼らは出稼ぎに行かざるをえません。食べ物である、米を使わずに、冬に働ける場を提供しよう、というのがワイン開発の背景にあったといわれます。

雪深き越後、その山裾にあるワイナリー「岩の原葡萄園」

写真:松縄 正彦

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実は、善兵衛さん、あの有名な”勝海舟”の弟子で、勝との出会いでワインをたしなんだといわれます。ワインに欠かせないのが”ぶどう”ですが、当時は日本産のワイン葡萄はなく、善兵衛さんは1万種以上の品種改良を重ね、ワイン葡萄を開発したのです。ワイナリーの裏手の山裾にはその葡萄棚が広がっています。

ちなみに日本産ワイン葡萄として国際ブドウ・ワイン機構(OIV)に登録され、世界に認められているのは、善兵衛さんが開発した”マスカット・ベリーA”(赤ワイン用)という品種と”甲州ぶどう(白ワイン用)”の2品種のみです。
マスカット・ベリーAは赤ワイン用のぶどうとして日本で最も多く作られている品種なのです。ちなみにこの品種はべリーとマスカット・ハンブルグを掛け合わせた品種です。

雪深き越後、その山裾にあるワイナリー「岩の原葡萄園」

写真:松縄 正彦

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岩の原葡萄園の駐車場の側に善兵衛さんの胸像が建っています。この葡萄園の場所は川上家の邸宅があった場所ですが、ここから直江津の日本海までは、川上家の土地だけを通って行けたといわれます。
このような豪農だったにもかかわらず、身上を潰すほどワイン開発に打ち込んだのは、まさに”日本ワインの父”といわれる所以です。

胸像の表情を見てください。口元が引き締まり、情熱家であった事が伺えます。

ワインを楽しもう

ワインを楽しもう

写真:松縄 正彦

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ワイナリーには「川上善兵衛記念館」があり、1階にショップ、2階に資料室とレストランが併設されています。
写真は1階のショップ入口ですが、入って左手に季節物のお酒がおかれ、真ん中にワインセラーがあり、右手に岩の原葡萄園の代表的なワインが置かれ、お好みのワインが選択できます。

ワインを楽しもう

写真:松縄 正彦

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入口右手のカウンター奥にはワインの試し飲みができるコーナがあります(有料)。

お勧めは写真のワイン達です。青いラベルが、マスカット・ベリーAをもとに作られたフルボディのワイン、また赤いラベルが善兵衛さんが開発したもう1つの赤ワイン用の品種”ブラック・クイーン”で作られたワインです。また右側のお花のラベルの”深雪花”は人気のミディアム・ボディのワインで、これもマスカット・ベリーAを使用しています。

ワイン開発〜鳥井信治カとの交流

ワイン開発〜鳥井信治カとの交流

写真:松縄 正彦

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ところで葡萄からどのようにワインが誕生するのでしょうか?ここは日本でも最古級のワイナリーですが、当時、ワイン熟成には石でつくられた蔵、「石蔵」にワインを貯蔵した樽を置き、山の中に開けた穴からの冷気、また冬に降った雪を貯め、この雪の冷気で低温発酵をさせていました。

この石蔵は現在でも使用され、中を自由に見学する事ができます。写真は第二号石蔵の内部です。この石蔵の隣に300トンもの雪を貯めている雪室があり、この冷気で低温熟成をさせているのですが、雪室に近づくと寒さが身にしみます。当時も現在も、ここは自然を有効活用したワイン作りをしています。

ワイン開発〜鳥井信治カとの交流

写真:松縄 正彦

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ショップの2階にある資料室にもぜひ足を運んでください。ここにはワインに出会うきっかけをくれた師匠の勝海舟の書や鳥居信治カ氏からの手紙なども見ることができます。

ワイン造りへ打ち込んだ善兵衛さんは園の開墾、醸造所の建設や外国からのぶどう苗木の購入など、収支を顧みずに投資したため、さすがの豪農も財政が逼迫します。このときの窮状を救ったのがサントリーの創業者の鳥井信治郎氏でした。
ウィスキーのみならずワインにも情熱をかけた人々の出会いがあったのです。まさに「マッサン」のワイン版といえるでしょう。

なお川上善兵衛さんは日本の国産ワインの父といわれますが、その理由は前記のように日本産ワインぶどうの開発を進めた事と同時に、ワイン造りに携わる人のバイブルとしてそのノウハウを集大成した「葡萄提要」と「葡萄全書」いう著書を著し、ワイン造りに大きな影響を与えた事によります。

ワインを味わいながら日本のワインの歴史を楽しもう

岩の原葡萄園、また川上善兵衛さんが日本ワインの歴史に果たした役割は非常に大きなものがあります。鳥居信治カ氏との出会いがきっかけで、山梨の「登美の丘ワイナリー」が作られる事にもなるのです。

なにげなく楽しむワインですが、日本産ワインは勝海舟をはじめ、人と人との出会いで作られてきたのです。さあ、今日も日本のワインを味わってください。なお、ご紹介したワイン達は道の駅「あらい」(MEMO欄「たびねす」記事参照)でも販売されています。

掲載内容は執筆時点のものです。 2017/06/12 訪問

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