写真:ジュマペル ヤマモト
地図を見るチャンドバオリの階段井戸は、ジャイプールから80kmほど東のアブハナリ村にあります。ジャイプールへは、首都デリーから飛行機で約1時間。ジャイプールに着いたら、市内の旅行会社が催行するツアーに参加するのが良いでしょう。アブハナリ村は、これからご紹介する素晴らしい遺構があるとはとても思えない、ごく小さな集落です。村へ向かう農道沿いには、野生のクジャクが美しい羽を広げて歓迎してくれます。
遺構の入口を入ると目の前にすぐ全容が現れます。約35m四方の正方形に近い回廊に取り囲まれた内部は、逆四角錘状に深く、深く、掘り込まれています。そそり立つ壁面には、驚くべき生真面目な規則性をもって石組みの階段が作られています。そして四角錘の底には、浮き草で覆われた緑色の水をたたえています。そこで、「あぁ、これは"下るため"の階段なんだ」と気付くことになります。
最上段(=地表)に小さく写っているヒトの大きさと比べてみてください。さぁあなたは、酷暑のインドで、最下層まで水を汲んで戻って来る勇気がありますか?
写真:ジュマペル ヤマモト
地図を見るこの階段井戸は、日本でいえば平安時代初期、9世紀頃に作られたと考えられています。井戸の深さは約30m、なんと13階層! 階段総数は3,500段を数えます。ラジャスターン州は当時から乾燥地帯であったため、水は大変貴重でした。常時安定して水を手に入れるためには、ここまで深く掘る必要があったのです。また、井戸の底は地表より5℃程度気温が低く、天然のクーラー機能があることがわかっています。これらのことから、井戸には、マハラジャ(王族)の避暑地や市民の憩いの場としての機能も期待されたわけです。
写真:ジュマペル ヤマモト
地図を見るこれらの期待を実現するために、当時の建築技術の粋を結集し、設計されたのが、壁面に階段を備えた逆四角錘の井戸なのです。使いやすさや機能を追究した結果、このようにスキのない美しい建造物が誕生しました。
21世紀になっても、いまだに町中がしっちゃかめっちゃかなカオスだらけのインドにおいて、1200年も前にこのように美しくも巨大なインフラが片田舎の砂漠に備わっていたことに、ただただ驚くばかりです。
写真:ジュマペル ヤマモト
地図を見る前述のように、王族の避暑地や市民の集会場としても使われていたことを示す、宮殿状の部分が回廊の一辺に残されています。舞台のようなものもあります。当時のマハラジャが、暑い夜に少しでも涼を求めてここに陣取り、舞踊鑑賞を楽しんだのでしょうか。また、近隣の主婦が水を汲みにここに集まり、まさに井戸端会議に花を咲かせたことでしょう。
インドでは、比較的最近の2014年に別の階段井戸「ラーニ・キ・ヴァヴ(女王の階段井戸)」が世界遺産に登録されましたので、今後「階段井戸」への注目は増すものと思われます。今はまだ静かに観光を楽しめるチャンドバオリの階段井戸、ジャイプールを訪れたら、是非足を伸ばしてみてください。なお2017年7月現在、残念ながら観光客が階段を下りることはできません。
この記事を書いたナビゲーター
ジュマペル ヤマモト
私は、これまで旅先で様々な人に出会い、風景やモノを見て、感動したりド肝を抜かれたり、時にはヘコんだりしてきました。そしてそれらの経験は、私の人生に多くの影響を与え、成長させてくれました。そうです、旅は…
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(2025/2/9更新)
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