フォトジェニックな大人の奈良。大和路の写真家「入江泰吉旧居」で喧騒を離れて

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フォトジェニックな大人の奈良。大和路の写真家「入江泰吉旧居」で喧騒を離れて

フォトジェニックな大人の奈良。大和路の写真家「入江泰吉旧居」で喧騒を離れて

更新日:2017/08/07 15:41

いずみ ゆかのプロフィール写真 いずみ ゆか ライター

情感溢れる大和路の風景を求めて奈良を訪れる方は多いことでしょう。しかし、観光シーズンともなると、定番である東大寺・興福寺・春日大社周辺は凄い人混み。求めていた「大和路」を感じられないかもしれません。そんな時、東大寺戒壇院そばの「入江泰吉旧居」を訪れてみませんか?入江泰吉は、奈良の仏像・風景・伝統行事・万葉の花等を独自の感性で撮り続けた「大和路の写真家」。旧居周辺は驚くほど静かな時間が流れています。

東大寺旧境内・水門町にある「入江泰吉旧居」

東大寺旧境内・水門町にある「入江泰吉旧居」

写真:いずみ ゆか

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「入江調」「古色」と言われ、色調を抑えた情感あふれる奈良の古寺風景や仏像作品で知られる大和路の写真家・入江泰吉。その独自の感性で撮られた作品は、多くの奈良ファンを惹きつけてやみません。奈良を愛した入江氏は、戦後半世紀に渡って、大和路の風景・仏像・伝統行事・万葉の花などを撮り続けました。その作品から今日の私達がイメージする「大和路」が知られ、定着したとも言われています。

暗室が設けられている「入江泰吉旧居」は、その入江作品が生み出された場所であり、入江氏が戦後から86歳で亡くなるまで過ごした場所。旧居が佇む東大寺旧境内の水門町界隈は、奈良公園周辺の喧騒が嘘のように、静かで森のように緑があふれ、近くを流れる吉城川から一年中涼しい風が通ります。

※ 入江泰吉の「吉」は土の下に口。

東大寺旧境内・水門町にある「入江泰吉旧居」

写真:いずみ ゆか

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少年時代の一時期もこの水門町で暮らした入江氏。大阪大空襲で焼け出され、故郷に戻って4年後、この地に居を構えました。
入江氏と東大寺のゆかりは深く、「大和路の写真家」としてのきっかけも、昭和20年代に「東大寺戒壇堂 広目天立像」を撮影したことから。戦後間もない当時、「進駐軍が奈良の仏像などの文化財を戦利品として持ち去る」というデマを信じた入江氏は「写真として記録しよう」と決意し、奈良の仏像を撮影し始めました。

また、30年以上「東大寺修二会(お水取り)」を毎年記録し続けたことから、入江氏は十二人目の練行衆≠ニ呼ばれたことでも知られています。二月堂裏参道は、幾度となく足繁く通った道。この旧居周辺は、今も当時の面影を残す風情ある場所です。

多くの文化人が来訪した入江邸。毎週日曜にはコーディネーターによる案内も

多くの文化人が来訪した入江邸。毎週日曜にはコーディネーターによる案内も

写真:いずみ ゆか

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奥様のミツヱさんから奈良市に寄贈されたこの旧居は、奈良市や市民による意見交換会を経て、平成27年3月1日から一般公開されました。入江氏は、生前に8万点以上の作品を全て奈良市に寄贈し、その作品は「入江泰吉記念奈良市写真美術館」で観ることが出来ます。
「入江先生の作品は、写真美術館でご覧頂いて、ここでは、歴史文化をしっかりを踏まえた上で奈良を撮り続けた写真家・入江泰吉先生の空気や、入江先生をご存じなくても、どういう想いを持った人が暮らしていたのかを感じて頂けたら」と入江泰吉旧居コーディネーターの倉橋みどりさん。

多くの文化人が来訪した入江邸。毎週日曜にはコーディネーターによる案内も

写真:いずみ ゆか

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旧居は、庭の暗室を含めて9部屋。施設として利用するための最低限の手しか加えておらず、比較的入江夫妻が暮らした当時のままです。文豪・志賀直哉、武者小路実篤、司馬遼太郎、亀井勝一郎、白洲正子など多くの文化人が来訪しました。
また入江氏は、幼馴染の第206世東大寺別当・上司海雲(かみつかさかいうん)師の文化サロン(観音院サロン)で、画家・杉本健吉らの文化人と交流があったことも知られています。

可能であれば是非、毎週日曜に1日3回行われる「コーディネーターによる旧居案内」を体験してみて下さい。入江夫妻が実際に使用した座卓などの家具や調度品、蔵書や書といったゆかりの品を見ながら当時のエピソードを交えた丁寧な説明を聴くと、往時のご夫妻の暮らしぶりや息づかいを感じとる事ができます。

※写真はご夫妻が朝食で使用したテーブルと椅子

「コーディネーターによる旧居案内」(30分)
<日時>毎週日曜 1.11時 2.13時 3.15時
<料金>無料(別途入館料)申込み不要

どこでも撮影OK!青もみじが美しいフォトジェニックな空間

どこでも撮影OK!青もみじが美しいフォトジェニックな空間

写真:いずみ ゆか

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旧居を訪れて一番最初に目に飛び込むのは、美しい借景が広がる窓辺。そして、青もみじやケヤキの深緑。もちろん紅葉の季節も格別です。写真家の自宅であることから、嬉しい事に旧居内はどこも撮影が可能。フォトジェニックな場所が多いので、入江氏の想いを感じながら撮影してみて下さい。
「写真家・入江泰吉を知らない方や外国の方も、この静かでピースフルな空間に魅せられ、皆さんのんびりと思い思いの過ごし方をされます。」と、先ほどの倉橋さん。

どこでも撮影OK!青もみじが美しいフォトジェニックな空間

写真:いずみ ゆか

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窓辺には、実際に入江夫妻が使用したブルーのソファーがあり、座る事ができます。入江氏の作品集が置いてあるので、手に取って眺めてみて下さい。

書斎とアトリエ

書斎とアトリエ

写真:いずみ ゆか

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一番奥まった場所は「書斎とアトリエ」。ここで、写真家とは別の一面を垣間見る事ができます。このサンルームのアトリエは、普段は立ち入り禁止。ゴールデンウィークとシルバーウィークのみ立ち入りが可能です。その際には写真に映る椅子に実際に座ることも。入江氏は、ここで趣味に没頭しました。アトリエ右手奥には、なんと入江氏専用のお手洗いがあり、趣味に没頭されている時はここに一日中籠りっぱなしだったと言われています。

書斎とアトリエ

写真:いずみ ゆか

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小さい頃は画家を夢見ていた入江氏。油彩画も描きましたが、特に沢山制作したのが「ガラス絵」(写真右)です。ガラスの裏側から左右逆に判子を彫る要領で描いたもので、趣味仲間と余技展を開催して販売したこともあるそう。
また、増築時に大工さんが残した木切れを彫った仏像を「木端仏(こっぱぶつ)」と名付けて制作。その制作途中のものがアトリエに展示されており、いかに多才であったかが分かります。

書斎とアトリエ

写真:いずみ ゆか

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書斎には、奈良の古社寺や仏教・思想・歴史・美術等に関する沢山の蔵書。実は蔵書はもっと多かったそうで、床にはみ出て埋め尽くすほどだったのだとか。勉強家で、いかに奈良の歴史や文化に造詣が深かったかが分かります。
入江氏は、大阪大空襲で自宅が全焼し、故郷の奈良に引き揚げてから、古本屋で出会った亀井勝一郎の『大和古寺風物誌』を愛読しました。この本がきっかけで、古寺巡りを開始。のちに大和路の写真家として知られていくようになります。

平屋?二階建て?不思議な造りの旧居

平屋?二階建て?不思議な造りの旧居

写真:いずみ ゆか

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旧居内を見たあとは、是非、お庭の散策を。実は、旧居は懸造り(崖造り)※。平屋なのですが、敷地が谷の様に高低差があるため、裏庭に周ると、まるで二階建てかのように見えます。平屋にも関わらず、旧居内の窓辺で、吉城川をのぞむ美しい借景を眺める事ができたのは、そのためです。

※山の崖や河の岸に張り出してつくられた建造物

平屋?二階建て?不思議な造りの旧居

写真:いずみ ゆか

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お庭には二体の石仏も。子供がおられなかったこともあり、ご夫妻は愛犬達をとても可愛がりました。この石仏は、その愛犬達のお墓です。

平屋?二階建て?不思議な造りの旧居

写真:いずみ ゆか

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お庭には、老朽化のため復元されたものではありますが、暗室もあります。もちろんここで、実際にモノクロフィルムの現像が可能です。

「入江泰吉旧居」で文化体験を&「入江泰吉記念奈良市写真美術館」で入江作品を!

この旧居で写真家・入江泰吉の精神や人柄を感じた上で、入江作品を実際に観て頂くと、「入江氏の大和路」がいかなるものか、より深く感じ取ることができるはずです。是非、奈良市高畑町にある「入江泰吉記念奈良市写真美術館」へも足を延ばしてみて下さい。高畑町には、入江氏と親交が深かった作家・志賀直哉の旧居もあります。

また、旧居は文化サロンとしても利用されており、講座や俳句教室、写真教室などが開催されています。もっと写真家・入江泰吉のことを知りたいという方は、入江氏と親交のあった方による講座の開催もありますので、公式HPからイベントを確認してみて下さい。

奈良公園周辺の喧騒からちょっと離れて、大和路を愛した写真家・入江泰吉の眼で奈良を静かに見つめてみませんか?

掲載内容は執筆時点のものです。 2016/05/22 訪問

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