開山1300年の石畳と苔が彩る山岳信仰の聖地・福井「白山平泉寺」

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開山1300年の石畳と苔が彩る山岳信仰の聖地・福井「白山平泉寺」

開山1300年の石畳と苔が彩る山岳信仰の聖地・福井「白山平泉寺」

更新日:2017/08/11 10:24

和山 光一のプロフィール写真 和山 光一 ブロガー

霊峰・白山への憧れと古代の自然信仰が生んだ祈りの道・白山古道(越前禅定道)は、越前に生まれ、白山を開山し、白山信仰の祖とされる泰澄によって拓かれました。その起点に広がる福井「白山平泉寺」の旧境内は国史跡の寺院跡として1300年の歴史ロマンを今に伝えています。発掘が進む土に埋もれ、苔を纏ったかつて栄華を誇った広大な境内では、日本では珍しい石で築かれた荘大な宗教都市の痕跡が次第に姿を現し始めています。

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菩提林の続く“日本の道百選”は石畳の旧参詣道

菩提林の続く“日本の道百選”は石畳の旧参詣道

写真:和山 光一

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万年雪をたたえ、豊かな水をもたらす白山は古代から崇められてきた霊峰で江戸時代には富士山・立山とともに日本三霊山と呼ばれました。美しい山の姿に神を感じて憧れる素朴な自然崇拝が白山信仰の起源です。白山の頂上に続く古道の一つ、越前禅譲道が開かれたのは養老元年(717)。初登頂を果たした越前の修行僧・泰澄は、起点の登山口に白山平泉寺を開創したと伝わります。

菩提林の続く“日本の道百選”は石畳の旧参詣道

写真:和山 光一

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えちぜん鉄道勝山駅から車で10分走ると、下馬大橋を渡ったところから、『日本の道百選』に選出されている約1km続く白山平泉寺旧参道が始まります。人々はここで馬を下り、身を清めたあと歩いてお参りしたそうです。菩提林の杉木立に囲まれた旧参道を歩き出すと、舗装道路の脇に、木漏れ日を浴びて光る中世の石畳が現れます。それは多くの僧兵たちが念仏を唱えつつ九頭竜川から河原石を運んで約1000年前に整備されたものと言われています。途中にある二つの大きな岩は「牛岩・馬岩」とされ、牛と馬の姿になって道をふさいだといい、広大な白山平泉寺にある結界のひとつとされます。

菩提林の続く“日本の道百選”は石畳の旧参詣道

写真:和山 光一

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車で来た場合、旧参道入口の駐車場に停めて歩くか、杉木立の中、舗装道路を走り歴史探幽館まほろば前の大杉裏手の駐車場に停めます。この大杉は天正2年(1574)の一向一揆で焼け残った7本のうちの一本なのです。写真奥の「と之蔵」は、名勝“東尋坊”ゆかりの坊院跡に整備された情報発信基地兼ソフトクリーム屋さんです。白山平泉寺の僧であった乱暴者の東尋坊を恨む僧たちが宴を催し、酒に酔わせて崖から突き落としたことから、その断崖絶壁を東尋坊と呼ぶようになったのです。

太古の祈りに耳を澄まして結神社で良縁さんぽ

太古の祈りに耳を澄まして結神社で良縁さんぽ

写真:和山 光一

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参道沿いには、天から同時に降ってきた「隕石」と伝わる二つの大きな石が祀られ、縁結びの神様として拝むようになった「結神社」があります。境内にある四十八社のひとつで、社前には“良縁絵馬”が奉納されています。良縁絵馬とは、大野市、勝山市のそれぞれ5カ所で購入でき、大野絵馬(左300円)・勝山絵馬(右300円)を一つに合わせて祈願する奥越前でしか手に入らない縁結びの絵馬です。

太古の祈りに耳を澄まして結神社で良縁さんぽ

写真:和山 光一

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結神社の横には参拝者を出迎えてくれる常夜灯があり、その屋根石のずっしりと苔をのせる姿には驚かされます。

太古の祈りに耳を澄まして結神社で良縁さんぽ

写真:和山 光一

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向かい側には、室町時代に作られた開祖・泰澄大師の供養塔である五重の層塔がある「泰澄大師廟」があります。泰澄は682年に越前国麻生津に生まれ越智山で修行し都でも活躍した後、晩年を越智山太谷寺に戻り神護景雲元年(767)86才で亡くなりました。

一の鳥居をくぐり、女神伝説の泉を眺める

一の鳥居をくぐり、女神伝説の泉を眺める

写真:和山 光一

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かつてこの石段の坂から上へは魚や肉を持ちこむことが禁じられたことから「精進坂」の名がついたとのことです。また煩悩を断じ、身を清め心を慎むという意味もあるとか。登ったところにあるのが一の鳥居です。

一の鳥居をくぐり、女神伝説の泉を眺める

写真:和山 光一

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一の鳥居から続く参道は立ち止まると清浄な森の香りに包まれます。鳥居をくぐった先の左手に「旧玄成院庭園」があり、一向一揆の焼き打ちにより灰と化した平泉寺を再興した江戸時代の平泉寺の中心的な坊院・玄成院の庭園で、今は社務所になっています。約480年前享禄年間に造られた庭園は北陸エリアで現存する最も古い庭園で、1530年室町幕府管領細川武蔵守高国が造ったと伝わっています。様式は枯山水で写真左隅の五重の石塔には永享6年(1434)の銘が刻まれています。

一の鳥居をくぐり、女神伝説の泉を眺める

写真:和山 光一

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その先から左に折れると神秘的な気配が漂う「御手洗池」が見えます。曲がり角は見落としやすいので標識に注意しましょう。
伝説によると養老元年(717)に白山に向かう泰澄大師が発見した泉で、ここで祈ると白山の女神が泉の中央の小さな影向石に出現し「早く登っておいでなさい」と告げたのです。その導きのおかげで頂上を極められたことから下山後に泉のそばに構えた庵がのちに平泉寺となり、山頂までの道が越前禅定道になったのです。この池は昔、平清水と呼ばれ平泉寺の名前の由来となっています。

池畔には泰澄が植えたというご神木・三又杉があり、1300年を経て健在でありもあり幹は途中から三本に分かれ白山三社をかたどる形となっていますよ。

日本有数の巨大な宗教都市が眠る白山平泉寺旧境内

日本有数の巨大な宗教都市が眠る白山平泉寺旧境内

写真:和山 光一

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二の鳥居から先は、めくるめく苔の世界です。拝殿の前に至ると色鮮やかな苔の緑のじゅうたんがふかふかと一面に広がっています。作家の司馬遼太郎が、「冬ぶとんを敷きつめたよう」と絶賛したように、まさにそのとおりな風景に思わず癒されます。かおり風景百選にも選ばれている苔の世界がそこにあり、苔と日差しのコントラストの鮮やかさが訪れる人を魅了しています。

日本有数の巨大な宗教都市が眠る白山平泉寺旧境内

写真:和山 光一

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拝殿は江戸時代の絵図に「三十三間拝殿」と描かれていてかつての拝殿があった礎石の一部が左右に残っていて、間口が約80mと巨大な建物であったことが伺えます。正面の額には「中宮平泉寺」とあります。

拝殿後の石垣はみどころで3mを超える大きな石を使って積まれています。弘治年間に平泉寺の有力な院坊であった飛鳥井宝光院と波多野玉泉坊が競い合って積んだといわれています。

日本有数の巨大な宗教都市が眠る白山平泉寺旧境内

写真:和山 光一

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裏の石垣の上には3つの頂がある白山のそれぞれの神を祀る社が並んでいます。真ん中の御前峰である本社は寛政7年(1795)に第12代福井藩主松平重富により再建されたもので見事な昇り龍と降り龍の彫刻が見事です。左に大汝峰の越南知社、右に別山の別山社が並んで鎮座しています。

石畳が甦った坊院跡「南谷発掘地」

石畳が甦った坊院跡「南谷発掘地」

写真:和山 光一

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拝殿から右に鳥居をくぐった先には上り坂と階段が続き、旧境内の最奥部に鎮座する、安産の神様を祀った小さな社「三の宮」があり、この裏手から越前禅定道が始まります。白山山頂までは直線距離で約30Kmあり、どれだけ多くの修行僧がここから白山を目指していったのだろうかと思いを馳せてみるのもいいですね。

三の宮の手前には、南北朝時代に活躍した楠木正成の供養塔があります。この「楠木正成墓塔」は白山平泉寺で修行していた正成の甥・恵秀が建立しました。

石畳が甦った坊院跡「南谷発掘地」

写真:和山 光一

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戻り道は少し迂回して中世の石畳や石垣が発掘された「南谷史跡公園」内を見学していきましょう。平安時代後半に比叡山延暦寺の末寺となり、中世には48社、36堂、6千坊が立ち並び北陸有数の勢力を誇り、戦国時代には寺領9万石、僧兵は8千人を超えた巨大な宗教都市として栄えました。

南谷発掘地は中世宗教都市としては国内最大級の遺構で、平泉寺6千坊のうち3600坊があり、石垣で区画整備され、計画的に配置された僧坊跡からも石の宗教都市だったことがわかります。

石畳が甦った坊院跡「南谷発掘地」

写真:和山 光一

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僧坊の門と土塀が復元され、史跡の整備が進められています。2013年に完成した門は高さ約4m、幅2.7m、土塀の高さ約1.8m、全長約33mあります。

白山禅定道の三馬場をめぐる「プラチナルート」

泰澄の白山登頂をきっかけにほかにも白山に入って修行する人が現われたことで山頂へと続く山岳修行の登山道が形づくられていきます。そのルートは「禅定道」と呼ばれ加賀・美濃。越前を起点とする3つがあり、平安時代末期には「三馬場」と呼ばれ、白山信仰の拠点となっていました。福井県の白山平泉寺を起点とする「越前禅定道」、石川県の白山比盗_社を起点とする「加賀禅定道」、岐阜県の長滝白山神社を起点とする「美濃禅定道」があります。この三馬場つなぐ白山の象徴である“白”を“プラチナ(白金)”にかけたプラチナルートでめぐってみませんか。平成29年(2017)は白山開山1300年を迎え記念イベントもいろいろ、メモリアルな旅を楽しんでみてください。

掲載内容は執筆時点のものです。 2017/07/31 訪問

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