写真:乾口 達司
地図を見る今城塚古墳(いましろづかこふん)は6世紀前半に築造された前方後円墳。墳丘の全長は190メートルで、内濠と外濠の二重の周濠がめぐっています。外濠とそれをとりまく外堤部分までをふくめると、その規模は何と350メートル!考古学や古代史学の世界では、6世紀前半に活躍した継体天皇の真の陵墓ではないかと考えられています。
高槻市埋蔵文化財調査センターが、今城塚古墳の保存と整備のために発掘調査に乗り出したのは、1997年のこと。調査の結果、大王クラスの古墳ならではの特徴が、次々に発見されました。なかでも、特筆すべきは、埴輪祭祀区の存在です。その区画規模は東西約65メートル、南北約6メートルと日本最大!出土した埴輪の種類も人物埴輪から動物埴輪、家形埴輪、器財に関わる埴輪まで、実にさまざまです。今城塚古墳に眠る被葬者の権力がいかに強大であったかがしのばれます。現在、埴輪祭祀区には出土した埴輪のレプリカが並べられ、埴輪による古代の祭祀の様子が再現されています。その埴輪の数や種類に、誰もが圧倒されるでしょう。
写真:乾口 達司
地図を見る再現されているのは、埴輪祭祀区から出土した埴輪だけではありません。ご覧のように、内濠の外側にめぐらされた内堤にも、数え切れないほどの数の円筒埴輪も並べられています。古墳のまわりをすべてとりかこんでいるわけではありませんが、それでも、築造当時に作られた円筒埴輪の数がわれわれの想像を絶するものであったことが、写真からは想像ができますね。
写真:乾口 達司
地図を見る大王クラスの古墳といえば、宮内庁が陵墓として厳重に管理をしているため、内部に立ち入ることができないと思い込んでいる人も多いでしょう。しかし、宮内庁は今城塚古墳を継体天皇の陵墓と治定していないため、今城塚古墳では、誰でも実際に墳丘にのぼることができるのです。写真は墳丘上から後円部の様子を撮影したもの。みなさんは、この地面の下に、継体天皇と思われる人物が埋葬されていると思いますか?答えはノーです。
実は、発掘調査によって、被葬者を埋葬した石室は発見されませんでした。正確にいうと、石室はすでに崩壊し、消滅していました。その原因として、目下、最有力なのは、1596年9月5日、京阪神地方を襲った慶長伏見地震です。伏見地震による被害は甚大で、かつて後円部の地下に築かれていた横穴式石室も地震によって崩壊・消滅したのではないか。そう考えられています。
なお、出土した石棺の破片から、3基の家形石棺がおさめられていたこと、相当な重量を持つ石室が沈み込まないため、石室を下から支える大規模な石組みの遺構(石室基盤工)がしつらえられていたことも判明しています。なかでも、石室基盤工は、当時、最先端の土木技術であり、そのことからも、今城塚古墳の築造術がきわめて革新的であったといえるでしょう。
写真:乾口 達司
地図を見る墳丘のまわりをめぐると、今城塚古墳が、その両側に「造り出し」をそなえた古墳であることがわかります。「造り出し」とは、写真のように、前方部と後円部とが接するくびれの部分に設けられた方形台状の区画のこと。今城塚古墳以前の古墳にも数多く見られます。その用途には諸説がありますが、当時、最先端の土木技術を駆使すると同時に「造り出し」の伝統を忠実に受け継いでいるという点からは、今城塚古墳の持つ新旧の二面性がよくあらわれているといえるでしょう。
写真:乾口 達司
地図を見るでは、そもそも、宮内庁が治定する継体天皇陵とは、いったいいかなる古墳なのでしょうか?今城塚古墳から西に1.5キロメートルほどのところにある継体天皇陵は、考古学の世界では、太田茶臼山古墳と呼ばれています。墳丘の全長は226メートル。今城塚古墳よりもさらに巨大な前方後円墳ですが、発掘された埴輪の分析から、5世紀の半ばに築かれたと考えられています。つまり、継体天皇の活躍した6世紀前半よりも、半世紀以上も昔の古墳なのです。この築造年代の違いも、今城塚古墳が継体天皇の真の陵墓であると考えられている理由の一つですが、とはいえ、その規模から推察して、太田茶臼山古墳の被葬者も当地に勢力を持つ強大な権力者であったことは、間違いないでしょう。今城塚古墳と太田茶臼山古墳。両者はいったいどのような関係にあったのでしょうか。古代史をめぐる謎は尽きませんね。
今城塚古墳がいかに重要な古墳であるかが、おわかりになったのではないでしょうか。今城塚古墳のそばには、今城塚古墳の出土品などを展示した今城塚古代歴史館も設置されており、あわせて見学すると、より効果的でしょう。果たして、今城塚古墳は、一般にいわれているように継体天皇の真の陵墓なのか。その謎を探るべく、ご自身の足で復元・整備のなった今城塚古墳とその周辺を散策してみてください。
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(2024/9/18更新)
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