“ハート型の洞窟と滝”高知県津野町の鍾乳洞群

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“ハート型の洞窟と滝”高知県津野町の鍾乳洞群

“ハート型の洞窟と滝”高知県津野町の鍾乳洞群

更新日:2017/08/23 10:06

春野 公比呂のプロフィール写真 春野 公比呂 歴史研究家、郷土文筆家、郷土登山家

高知県は四国一、鍾乳洞の数が多いのですが、中でも津野町は特に多いまち。町内には「ハートの滝」として有名なハート型の穴から落下する「長沢の滝」がありますが、その近くにはあまり知られていないハート型の鍾乳洞「長沢洞」もあります。他にも内部がSFチックなものや、何本もの縄が垂れ下がったような鍾乳石のある鍾乳洞もあり、暗黒自然の妙に感動させられます。天然クーラーでの探検をお楽しみ下さい。

幕末の子供が落書きした鍾乳洞

幕末の子供が落書きした鍾乳洞

写真:春野 公比呂

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今回ご紹介する津野町の鍾乳洞は四ヶ所。まずは「貝の川洞」を目指します。洞は津野町東部の旧葉山村地区と佐川町との境界に連なる山脈「北山」中腹を東西に走る通称「中腹林道」下方にあるのですが、その林道に接続する道路の入口は、国道197号の「久保川橋」バス停を過ぎて久保川地区から永野地区に入った地点の三差路。久保川地区にも接続道路はありますが、道幅が狭いため、お勧めできません。

中腹林道に出ると左折します。2.5kmほど行った所の右手上に「愛宕洞」の案内板が建っているので、その先の路肩に駐車します。しかし最初はその洞窟ではなく、林道下方にある「貝の川洞」に行きます。駐車場所の向かい辺りの岩盤下部に赤いペンキで矢印が描かれていますが、そこが下り口です。小径は踏み跡程度ですが、数分で終点となり、奥行80mの貝の川洞が現れます。開口部の大きさは四ヶ所の鍾乳洞の中では突出しており、記念写真にもお勧めです。

幕末の子供が落書きした鍾乳洞

写真:春野 公比呂

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開口部は巨大ですが、立って歩ける区間は10数mほど。そこは落盤のある広間で、奥には腹這いにならないと入れない三つの横穴が開いています。かつてこの真ん中の穴の奥、小さな空間の壁面に幕末時の子供の落書きが残っていたと言いますが、平成以降、経年劣化で消えて行き、他の箇所の黒ずみと区別がつきません。
広間には写真のような、あと何千年か何万年経つと氷柱石になりそうな鍾乳石も見られます。

幕末の子供が落書きした鍾乳洞

写真:春野 公比呂

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一番右側の小穴はしゃがめば少し奥に進むことができます。内部には更に枝洞も分かれていますが、その枝洞の奥には一瞬、超古代の人工石板か化石かと思えるような、壁面から独立した鍾乳石も覗いています。

藩政期に心中のあった鍾乳洞

藩政期に心中のあった鍾乳洞

写真:春野 公比呂

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貝の川洞の探検を終えると中腹林道に引き返し、奥行18mの愛宕洞に入洞します。昭和の南海地震が起きるまでは、この洞と貝の川洞は竪穴で繋がっていたと言います。三角形の入口を入った所には地蔵(写真は背後から見た所)が安置されていますが、これには哀話が秘められています。

明和6年(1769)のある初夏の午後、武士の片岡克助と豪農の娘・おさんは手を取り合って麓からここまで登ってきました。身分の違いから結婚が許されなかった二人は村を出て、駆け落ちしようとしていたのです。その日の夜、愛宕洞内で休んでいた二人は、麓から松明を持った追手が大勢登ってくるのを見ます。もう逃げられないと思った二人はここで心中したのでした。

藩政期に心中のあった鍾乳洞

写真:春野 公比呂

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洞内はマクロポア(洞内洞)の他、いくつもの空間・広間に分かれており、上下左右斜めに走る柱的鍾乳石がSFチック。まるでたわんだ縄のような鍾乳石もいくつも天井からぶら下がっています。

藩政期に心中のあった鍾乳洞

写真:春野 公比呂

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車に戻ると林道を先に進みますが、最初に横断する沢(貝の川)の上流に無名の滝が懸かっています。但し道はありません。東岸に分け入り、木々に掴まりながら植林帯に上がると、滝の音が聞こえています。滝はすぐ上流の岩盤に懸かっています。落差は20m弱ほどでしょうか。名付けるとすれば「貝の川滝」。

一番有名な鍾乳洞は祟りの洞窟

一番有名な鍾乳洞は祟りの洞窟

写真:春野 公比呂

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中腹林道は延々と西に続いていますが、一車線でスピードを出せないため、赤木地区の三所神社先で南の道路に下り、国道197号に出るといいでしょう。
次に目指すのは津野町で一番有名な鍾乳洞「稲葉洞」。道路地図にも記載されていますが、県道378号沿いの宿泊施設「四万十川清流センター・せいらんの里」への道標に従えば行き着きます。その施設から下に続く道路終点手前の橋を渡った先に稲葉洞が開口しています。

一番有名な鍾乳洞は祟りの洞窟

写真:春野 公比呂

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洞入口(写真は洞内高層部より撮影)には龍王神社や石仏の他、警告碑も建立されています。碑には稲葉洞は龍神様の御神体故、汚したり穢すことは厳禁である旨、記されています。実は昭和42年、稲葉洞を観光開発しようとした関係者が次々と原因不明の病に倒れるという事態が起こったのですが、神職の見立てでは洞内の龍神が祟っている、ということで、入口に祠を祀ったのです。

一番有名な鍾乳洞は祟りの洞窟

写真:春野 公比呂

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稲葉洞は全長530mを誇る県内屈指の鍾乳洞ですが、本洞の奥は水流があるため、途中までしか進めません。但し右手にいくつも趣の異なる枝洞があり、一定時間楽しめます。枝洞の中には写真のようなSFチックなチューブ的空間もあります。各種鍾乳石の他、珊瑚や厚歯二枚貝の化石も見られます。

キレンゲショウマと恋のパワースポットの滝

キレンゲショウマと恋のパワースポットの滝

写真:春野 公比呂

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稲葉洞の探検を終えると県道を北上して国道439号に出て、西に折れます。芳生野乙地区の長沢橋を渡った所にある長沢の滝の案内板を見て、西に折れます。滝の手前の広い駐車場に駐車します。駐車場入口付近には宮尾登美子の小説で有名になった絶滅危惧種のユキノシタ科キレンゲショウマが2015年、移植されました。四国では剣山の群落が有名ですが、この地の開花はやや遅く、8月下旬頃。

キレンゲショウマと恋のパワースポットの滝

写真:春野 公比呂

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落差34mの長沢の滝は、ハート型の岩盤の穴から落下していることから、近年「恋のパワースポット」として人気があります。

キレンゲショウマと恋のパワースポットの滝

写真:春野 公比呂

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滝は滝見橋から鑑賞できますが、滝壺まで下りて行くこともできます。滝壺は縦10m、横15m、水深2.8mの半円状で、左手の岩屋には石仏が祭られ、神聖な雰囲気。

長沢の滝よりハートな鍾乳洞

長沢の滝よりハートな鍾乳洞

写真:春野 公比呂

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長沢の滝よりもハートの形状が整っているのが、地形図にも記載されている長沢洞。全長は100mですが、入口から20mほどの所に竪穴があるため、装備がないと先には進めません。
長沢の滝駐車場から少し林道を引き返し、カーブミラーと電柱の建つ所から長谷川を渡渉。渡渉した先は狭い植林帯で、少し南下すると小動物が入れる位の洞穴が開いています。その少々先の岩盤沿いから斜面を見上げると、長沢洞入口周辺の石灰岩が見えます。

長沢の滝よりハートな鍾乳洞

写真:春野 公比呂

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入口の上には小窓的穴が開いていますが、これを内部から見るとハート型になっているのです。

長沢の滝よりハートな鍾乳洞

写真:春野 公比呂

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竪穴までの区間には氷柱石や石柱はあまり見られませんが、うねるような洞内は一定の見応えがあります。

観光洞より探検気分を味わえるマイナー洞

高知県内には、何十分もの長い時間をケイビング装備なしで辿ることができる鍾乳洞は龍河洞を含めて三ヶ所しかありませんが、普通に歩ける区間が短い未整備のマイナー鍾乳洞でも、独特の石が融けるような壁面や天井の石灰岩は見応えがあり、暑い夏は天然クーラーともなるので「避暑探検」にもなります。

尚、稲葉洞を除き、照明設備はないため、ヘッドランプや滑りにくい靴、手袋、ヘルメット等を用意する必要があります。一眼レフカメラ持参時は、カメラシューにビデオライトを装着すると趣のある写真が撮れます。ヘルメットに抵抗がある方もいるかも知れませんが、カラフルなものにステッカーを貼る等して、お洒落にすることもできます。
暗闇が苦手な方もいるかも知れませんが、高照度のヘッドランプ(WEBショップでは1,000円以下のものもあり)を使用すれば怖さも半減します。

コウモリを怖がる方もいますが、壁面に止まり、頭部を隠して丸まっている所を間近に見ると体はモコモコッとした毛に覆われ、可愛いものです。「洞窟のアイドル」と言ってもいいほど。
これまで大きな観光洞しか探訪したことのない方は、非日常のマイナー地底世界を是非体感して下さい。

この記事の関連MEMO

掲載内容は執筆時点のものです。 2014/08/24−2016/08/27 訪問

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