徳島にラピュタ出現!驚愕のセルフビルド・廃墟カフェ「大菩薩峠」

徳島にラピュタ出現!驚愕のセルフビルド・廃墟カフェ「大菩薩峠」

更新日:2017/08/28 16:34

藤井 麻未のプロフィール写真 藤井 麻未 元秘境系海外旅行添乗員
「大菩薩峠」。その変わったネーミングの建物は徳島の国道55号線沿いにある。蔦に覆われ複雑怪奇な姿をした大菩薩峠はまるで廃墟。しかし、実はれっきとしたカフェであり、驚くべきはオーナー自らセルフビルドした建物なのだ。今回は大菩薩峠の奥まで探索しながらその驚愕の姿をご覧に入れよう。

その驚くべき実態とは

その驚くべき実態とは

写真:藤井 麻未

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徳島市内から約30分。国道55号線を車で走っていると、突如怪しげな建物が目に飛び込んで来る。地元では知らない者はいないという煉瓦造りの巨大建造物、その名も「大菩薩峠」だ。

古びた煉瓦造りに蔦が絡まり、外観からは中の様子が全くといって良いほど想像できない。一見廃墟のように見える建物も、しかしよく見ると小さく「営業中」の看板が。そう、ここは美味しいコーヒーの飲めるれっきとしたカフェなのだ。

加えて驚きなのが、この建物、外形から内装、調度品に至るまで全てがオーナーの手造りだということ。手造りといっても、なんと煉瓦を焼くところから始めたという徹底したセルフビルドぶりだ。使われた煉瓦は実に10万個。もちろんオーナーは建築家でも大工でもない素人である。ここへ来たらまずは全体を眺め、その恐るべき手仕事の壮大さを体感してみて欲しい。

朽ちた煉瓦に草木が茂る「天空の城ラピュタ」の世界

朽ちた煉瓦に草木が茂る「天空の城ラピュタ」の世界

写真:藤井 麻未

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最近「天空の城ラピュタ」の世界観に似ていると話題の和歌山・友ヶ島をご存知の方は多いかもしれないが、この大菩薩峠にもまさに「ラピュタぽい」スポットが盛り沢山だ。

カフェのエントランスへと続く階段は目立たないが、代わりに訪れた者をその奥へと導くかのように緩やかな坂が続いている。坂を道なりに登っていくと、そこに広がる空間はまさにラピュタの世界観だ。

朽ちた煉瓦に草木が茂る「天空の城ラピュタ」の世界

写真:藤井 麻未

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一面煉瓦が敷き詰められた空間には突如草木に覆われた階段が現れ、どこへともなく続いている。また別の階段を上って行くと、更に小さな広場に辿り着き・・・まるで迷宮を探索しているようなワクワク感が味わえる。

朽ちた煉瓦に草木が茂る「天空の城ラピュタ」の世界

写真:藤井 麻未

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そしてもっとも「ラピュタぽい」イメージなのが、煉瓦で造られたアーチだ。友ヶ島で最もラピュタぽいとされるスポットに煉瓦でできた砲台のトンネルがあるが、大菩薩峠のアーチも負けてはいない。オーナー自ら焼いたという手焼き煉瓦の朽ちたトンネル、そしてその隙間から芽を出した草木のコンビネーションがまさにラピュタぽさを醸し出している。

独特の美意識が宿る石の彫刻エリア

独特の美意識が宿る石の彫刻エリア

写真:藤井 麻未

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近年に至るまで少しずつ増築が重ねられ、その度に複雑怪奇な姿を増大させてきた大菩薩峠であるが、最も新しい部分と言われるのが更に坂を上に上がった裏手にある石の彫刻エリアだ。

独特の美意識が宿る石の彫刻エリア

写真:藤井 麻未

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かつて小学校の基礎に使われていた石材、水門の一部であった石柱、兵庫県から運んで来たという挽き臼などが置かれ、神秘的なギリシャ風の彫像が草むらに無造作に立っている。夜中、月明かりの元で目にしたらなんとも不気味に映るに違いないが、オーナーの独特な美意識が感じられる部分でもある。他にも日本家屋の屋根瓦を利用した門など、和洋折衷的な要素が面白い。

カフェとしても高い満足度

カフェとしても高い満足度

写真:藤井 麻未

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内部は残念ながら撮影禁止となっているが、店内へ続くアプローチ部分も一面煉瓦で敷き詰められ、なかなか素敵だ。店内へ入ると目の前にはこじんまりとしたレジカウンターが。奥の調理場には、大菩薩峠の施工主でもあるオーナーの姿が見られる。

昭和なBGMの流れる店内は落ち着いており、半個室的なコーナーや窓辺の席など静かに1人読書をするにもピッタリな居心地良い空間が広がる。内部のテーブルや椅子、カウンター、調度品に至るまでこれらも全てオーナーの手造りだ。特徴的な丸窓は、農作業に使う大八車の車輪を利用している。メニューはサンドイッチやボリューミーな定食から、コーヒー類、クレープなどのスイーツ類も充実しており本業のカフェとしても満足度が高い。

オーナーはどんな人?

オーナーはどんな人?

提供元:uraomote_yamaneko

https://commons.wikimedia.org/wiki/File%3ADaibosat…

そんなアメイジングな大菩薩峠だが、オーナーはどんな人なのだろうか。カフェのオーナーであり施工主でもある島利喜太(しま りきた)氏は若い頃からコーヒー好きで、自ら美味しいコーヒーを淹れて人に飲んでもらえるカフェをオープンしたいという願望があったという。

また、島氏は20歳過ぎから5〜6年をかけて国内一周旅行をするが、そこで出会ったのが山梨県有数の景勝地「大菩薩峠」であった。甲州市塩山上萩原と北都留郡小菅村の境にある大菩薩峠は、江戸時代まで青梅街道きっての難所といわれた。

中里介山の小説で一躍名を知られることとなった大菩薩峠は、現在トレッキングルートとして富士山をはじめ南アルプス、八ヶ岳、奥秩父まで見渡せる絶景ポイントとして人気だ。島氏は旅行中この険しくも美しい大菩薩峠に出会い、自ら作るカフェの名前を「大菩薩峠」にしようと思い立ったのだという。

オーナーはどんな人?

写真:藤井 麻未

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カフェの建設にいたっては一筋縄ではいかなかった。個人用に煉瓦を焼いてくれる業者が見つからず、島氏は自ら裏山に窯を作り一つ一つ自らの手で焼いた。鉄骨造りに煉瓦を積み、木材から調度品を掘り、金属板を切り出し、廃材や基礎石などを集めて造った完全なセルフビルドである。島氏の家業は農業であり建築については完全に素人だったというのだからつくづく驚きだ。

おわりに

まるで「天空の城ラピュタ」の世界が蘇ったかのような驚愕のセルフビルドカフェ「大菩薩峠」。大菩薩峠は着工から5年目、1971年にオープンを果たしているが、近年まで島氏の手による増改築が行われ続けており未完の建造物「徳島のサグラダファミリア」とも呼ばれ県内外から注目を浴びた。

島氏によると現在はもう工事は行っておらず、これにて完成をみたといっても良いであろう。なぜ素人ながら一からこのような大がかりな建物を造ろうと思ったのか。「人生は浪漫とエネルギーだ」。島氏はそう語る。建物の奥まで探索してみると、そこにはユンボや廃材、煉瓦を焼く窯などがそのまま残され、人生をかけて浪漫を追い求めた島氏のエネルギーが感じられる。ぜひ一度、大菩薩峠で島氏独特の世界観に浸ってみてはいかがだろうか。

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