旧街道と山寺の古道を行く!四国遍路で歩きたい「阿波遍路道」5選

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旧街道と山寺の古道を行く!四国遍路で歩きたい「阿波遍路道」5選

旧街道と山寺の古道を行く!四国遍路で歩きたい「阿波遍路道」5選

更新日:2017/09/04 16:48

木村 岳人のプロフィール写真 木村 岳人 フリーライター

平安時代にまで遡る歴史を持ち、現在も数多くの人々が歩いている四国遍路。弘法大師空海にゆかりの深い八十八箇所の霊場を巡って四国を一周する、世界的にも類を見ない環状巡礼路です。

その道のりは全長1400kmにも及び、現在は車道となっている区間が少なくないものの、昔ながらの風情を残す遍路道も少なからず存在します。

今回は徳島県内を通る「阿波遍路道」のうち、特にオススメしたい五つの区間を紹介します。

歴史ある町家が建ち並ぶ「旧撫養街道」を歩いて第1番札所「霊山寺」へ

歴史ある町家が建ち並ぶ「旧撫養街道」を歩いて第1番札所「霊山寺」へ

写真:木村 岳人

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四国遍路は始点終点のない環状の巡礼路なので、どこから始めなければならないという決まりはありません。昔の遍路は自宅に最も近い港から四国へと入り、そこから歩き始めていました。とはいえ、やはり一番多かったのは第1番札所「霊山寺」から始めるケースです。畿内からの遍路は淡路島を経由して岡崎港に渡り、霊山寺へと向かいました。

現在は歩き遍路であっても霊山寺までは徳島駅からバスもしくは列車でアクセスするのが一般的ですが、ここはあえて昔の遍路と同様、岡崎港から歩いてみるのはいかがでしょうか。というのも、岡崎港から霊山寺へと続く「旧撫養(むや)街道」沿いには昔ながらの町家が数多く連なっており、歴史ある風情を醸しているのです。

歴史ある町家が建ち並ぶ「旧撫養街道」を歩いて第1番札所「霊山寺」へ

写真:木村 岳人

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撫養街道は江戸時代に徳島藩主の蜂須賀家政(はちすかいえまさ)が整備した阿波五街道のひとつであり、岡崎港から吉野川に沿って三好市の池田町まで、約67kmの距離を結んでいます。霊山寺を過ぎてからも、第10番札所「切幡寺」まではこの旧撫養街道に沿って歩くことになるのですが、その中で最も旧街道らしい雰囲気を残しているのが岡崎港から霊山寺までの区間なのです。

旧街道沿いには霊山寺の奥の院にあたる“種蒔き大師”こと「東林院」や、徳島県最古の神社建築が残る「宇志比古(うしひこ)神社」といった寺社に加え、酒蔵や醤油蔵なども多々見られ、実に情緒豊かな遍路道となっています。

新人遍路を待ち受ける最初にして最大の難関“遍路転がし”「焼山寺道」

新人遍路を待ち受ける最初にして最大の難関“遍路転がし”「焼山寺道」

写真:木村 岳人

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旧撫養街道沿いの第10番札所までは札所間の距離が短く、比較的平坦な遍路道が続きますが、第11番札所「藤井寺」から第12番札所「焼山寺」までは、それまでと打って変わって長く険しい道のりとなります。焼山寺は標高700mの山中に位置する山寺で、辿り着くには約12.9kmもの山道を踏破しなければなりません。

藤井寺の境内から始まる登山道は傾斜のキツイ箇所が多く、その急坂っぷりは遍路が転げ落ちてしまうほどに過酷であることから別名“遍路転がし”とも呼ばれています。しかしそれだけ大変な山道ということは、現代的な道路整備の手を入れることができず、昔ながらの古道が良好な状態で残されているということでもあるのです。

新人遍路を待ち受ける最初にして最大の難関“遍路転がし”「焼山寺道」

写真:木村 岳人

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道中には「長戸庵」「柳水庵」「浄蓮庵」といったお堂が点在しており、また終盤で横切る「左右内(そうち)集落」は急斜面に連なる石垣の上に茅葺屋根の民家が並んでいるなど雰囲気たっぷり。確かに大変な道のりではありますが、上り下りと変化がある山道は歩いていて楽しく、非常に歩き甲斐のある遍路道です。この区間を歩き通すことができれば、この先の遍路道はすべて乗り越えられるといっても過言ではありません。

竹林と畑の中を通る素朴な古道「恩山寺道・立江寺道」

竹林と畑の中を通る素朴な古道「恩山寺道・立江寺道」

写真:木村 岳人

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徳島県の平野部は道路整備や宅地開発が進んでおり、古道としての雰囲気を保つ遍路道は非常に限られています。その中でも昔ながらの趣きを残す里道として稀少な存在なのが、第18番札所「恩山寺」の門前から19番札所「立江寺道」にかけての遍路道です。

焼山寺山から鮎食川を下って徳島市内に出た遍路は、阿波と土佐を結ぶ土佐浜街道を歩いて南へと向かいます。その旧街道筋から恩山寺へと至る区間、および恩山寺から立江寺へと向かい土佐浜街道に合流するまでの区間に短いながらも未舗装の古道が残っています。

特に恩山寺を後にした直後に通る竹林は、平安時代末期の源平合戦の際に源義経の軍勢が通ったとも伝わっています。その際、この道の先に敵兵がいないと察した義経は兵に弓の弦を巻かせたといい、その逸話より「弦巻(つるまき)坂」と呼ばれています。青々とした竹林は、鬱蒼と木々が生い茂る山道とはまた違った趣きがあり、風に揺れる竹の葉の音や差し込む木漏れ日に癒されます。

竹林と畑の中を通る素朴な古道「恩山寺道・立江寺道」

写真:木村 岳人

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竹林を抜けた遍路道は、その先で畑の中へと続いていきます。まるで畦道のような素朴な道ではあるものの、所々に道標や五輪塔といった石造物を目にすることができ、確かに歴史のある道なのだということが分かります。また石積みで護岸された小川やそれに掛かる石橋など、地元の人々が昔から営んできた生活感があるのも印象的です。

二つの山寺を結ぶ登山道「鶴林寺道・太龍寺道」

二つの山寺を結ぶ登山道「鶴林寺道・太龍寺道」

写真:木村 岳人

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立江寺からの遍路道は旧土佐浜街道から離れて内陸の勝浦町へと向かい、第20番札所「鶴林寺」、および第21番札所「太龍寺」の二つの山寺をハシゴします。鶴林寺の標高は570m、太龍寺は618mと先ほどの焼山寺には少々及びませんが、それでも昔から「一に焼山、二にお鶴、三に太龍」と称され、阿波遍路道における難所として知られてきました。舗装路を含めて約9.8kmほどの距離ですが、この区間にも焼山寺道に負けずとも劣らない古道が残されています。

鶴林寺へと上がる鶴林寺道は、勝浦町の特産品である柑橘類の段畑から始まります。石垣の連なる里道を抜けると本格的な山道になるのですが、その入口には「水呑大師」という祠が設けられています。その名の通り岩の下から清水が湧き出しており、登山の前に喉を潤すことが可能です。山道の所々には鶴林寺までの距離を示す丁石が残っており、また終盤には石畳が直線的に敷かれていて霊場らしい静謐な雰囲気が漂っています。

二つの山寺を結ぶ登山道「鶴林寺道・太龍寺道」

写真:木村 岳人

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鶴林寺から大井集落を経て太龍寺へと向かう「太龍寺道」は普通の登山道に近い雰囲気であるものの、やはり歴史ある遍路道ということは間違いなく、その道中には苔むした「遍路墓」が数多く散見できます。これは道中で行き倒れて亡くなった遍路を葬るためのお墓で、その数の多さに道の険しさを思い知らされます。

また太龍寺から第22番札所「平等寺」に至る下山ルートとして、近年になって「いわや道・平等寺道」と呼ばれる古道が復元されました。現在遍路道として利用されている舗装路よりも昔ながらの雰囲気が味わえる遍路道として利用する価値は大いにありますが、まだ復活して間もない遍路道のため整備が十分とはいえず足元の悪い箇所もあります。通行は健脚な方のみ、なおかつ雨天もしくは午後二時以降の立ち入りは禁止されていますのでご注意ください。

阿南に連なる心打つ景色の海岸線「八坂八浜」

阿南に連なる心打つ景色の海岸線「八坂八浜」

写真:木村 岳人

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徳島県最後の札所である第23番札所「薬王寺」からは、高知県の室戸岬に位置する第24番札所「最御崎寺(ほつみさきじ)」まで、旧土佐浜街道にあたる海沿いの道を延々と歩くことになります。およそ75kmにもおよぶあまりに長大な区間ですが、その中でも牟岐(むぎ)町の牟岐浦から海陽町の浅川集落にかけては「八坂八浜(やさかやはま)」と呼ばれる海岸線が続いており、美しい風景と共に古道が残されています。

「八坂八浜」はその名の通り、八つの坂と八つの浜が約12kmに渡って連なっており、緑の深い岬と白い浜辺が複雑に入り組む光景は実に風光明媚。紺碧の海とのコントラストも素晴らしく、室戸阿南海岸国定公園の指定区域にもなっている景勝地です。

八つの坂のうち現在も古道が残っているのは「大坂」「松坂」「鯖瀬坂」の三箇所。いずれも海沿いの割には傾斜がキツく、ここもまたかつては土佐浜街道の難所としても知られていました。海岸沿いらしい明るい雰囲気の道ですが、大きくえぐれた道筋やたくましく根を張った木々に道の歴史を感じさせられます。

阿南に連なる心打つ景色の海岸線「八坂八浜」

写真:木村 岳人

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また「鯖瀬坂」の出口には、四国別格二十霊場の第4番札所である“鯖大師”こと「八坂山八坂寺」が境内を構えています。かつて弘法大師空海が修行をしていた地であるとされ、また空海が海に放った塩鯖が生き返って泳ぎ去ったという伝説も語られています。四国八十八箇所霊場と併せてお参りするのが良いでしょう。

バリエーション豊かな阿波遍路道を楽しもう!

平地の道から山道まで、徳島県の遍路道は実に多種多様です。今回紹介した遍路道はいずれも昔ながらの風情が感じられる区間で、その一部は国の史跡にも指定されています。まさに折り紙付きの、ぜひともオススメしたい遍路道です。

徳島県内を通る遍路道をすべて歩き通すとなると、1週間から10日程かかります。それだと日数がちょっと……という方でも、車や公共交通を使いつつこのような昔ながらの遍路道をかいつまんで歩いてみるのはいかがでしょう。昔から現在まで連綿と人々が歩き続けてきた、遍路の歴史を全身で感じることができるでしょう。

掲載内容は執筆時点のものです。

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