写真:藤 華酉
地図を見るドイツでは知らぬ者のいない英雄、ジークフリートは、伝説上の登場人物です。中世初期、ライン川の流域で大暴れしていた悪い竜を倒し、溢れんばかりの黄金を手に入れた人物だと言われています。
この何となく誰もが聞いた事がある、作者不詳の伝説をスピンアウトさせた、これも今や作者不詳の物語が「ニーベルンゲンの歌」。竜を倒して有名になったジークフリートが、ブルグンド王国に現れ、王女クリームヒルトと結婚するラブロマンス……かと思いきやジークフリートは中盤で死に、復讐に燃えるクリームヒルトが一族に血を血で洗う戦争を仕掛ける凄惨なお話です。
ドイツの古典恐るべし。燃えるゲルマン魂を満喫できる、手に汗握る物語ですね。
写真はネッカーシュタイナッハ、ニーベルンゲンの歌の登場人物たちを模した像です。ドイツでは各地でニーベルンゲンの歌の伝説を垣間見る事が出来ます。
写真:藤 華酉
地図を見る「ニーベルンゲンの歌」を下敷きに、作曲家ワーグナーが近代に作り上げたロマンスが「ニーベルングの指環」。こちらはヴァルキューレの乙女、ブリュンヒルデとジークフリートの悲恋を描いたお話です。一幕3時間を越える超大作、ダイナミックな音楽で、ドイツ国民に長く広く愛されています。
「ニーベルンゲンの歌」の舞台、「ブルグンド王国」は物語の中でそれはそれは凄惨な最期を迎えるのですが、実在した王国だと考えられています。その首都だったと推測されるのがこちら、ヴォルムスなのです。
ヴォルムスはブルグンド王国が滅びた後も重要な文化の中心地として栄え、宗教会議の舞台となりました。現在もロマネスク様式の美しい大聖堂で名高い場所です。
写真:藤 華酉
地図を見る伝説ゆかりの地、ヴォルムスは全力でニーベルンゲンの歌を推しています。町を歩けば、マスコットキャラクターは竜、登場人物の名を冠した「ジークフリート通り」や「ハゲネ通り」までありますので、ファンにとっては発見の多い楽しい町です。
写真:藤 華酉
地図を見る駅のエントランスもニーベルンゲンの歌を推して来ます。到着早々期待が高まってしまいますね。
写真:藤 華酉
地図を見るそんなニーベルンゲンの町、ウォルムスに2001年にオープンしたこちらが、ニーベルンゲン博物館。
町に12世紀からある城壁を改装して作った、見た目はクラシック、中身はモダンな博物館です。
写真:藤 華酉
地図を見る展示は音声ガイドを借りて巡る形となっており、一周すると、「ニーベルンゲンの歌」のストーリーや、当時の舞台背景が詳しく分かるようになっています。
音声ガイドはドイツ語と英語のみですが、塔と城壁の構造だけでもなかなかの見応えです。写真の神秘的な通路は、なんと城の地下回路。こんな所でニーベルンゲンの歌の一節を聞いていると、確かにファンタジーの世界に迷い込んだ気分になりますね。
写真:藤 華酉
地図を見るお土産へのオススメは、「竜の血」と言ったネーミングを持つリキュールです。ジークフリートを不老不死にしたという「竜の血」は人気のアイテム。リキュールやワインなど、様々な形で皆さんの健康を守ってくれますよ。
写真:藤 華酉
地図を見るウォルムス中央駅から徒歩2、30分程。町を抜けると、ライン川に到着します。この川べりに建つのが、ジークフリートを殺害したハゲネの像です。英雄を殺害した、という筋だけでは一見悪役に見えるハゲネですが、ニーベルンゲンの歌の後半の主役であり、彼もまた英雄の一人。そんな伝説を反映しているのか、像も中々のハンサムです。
ちなみに、この姿は、ジークフリートが王国に持ち込んだ黄金を、のちの争いを避ける為にライン川に投げ込んでいる様子を表しています。
ライン川には黄金が眠っている……というロマンチックなラインの黄金伝説も、ニーベルンゲンの歌から生まれているのでした。
写真:藤 華酉
地図を見るウォルムス近郊、ライン川周辺にはまだまだ「ニーベルンゲンの歌」ゆかりの観光スポットがあります。
ジークフリートが竜を倒したと言われている町だったり、ジークフリートがハゲネに刺された湖畔だったり……
インフォメーションを訪れれば、そんな各スポットを丁寧に解説したパンフレットも用意されています。
ヴォルムスは幾つものコンセプトを持つ街。宗教革命ゆかりの地巡りや、ローマ帝国ゆかりの地巡りと言ったコンセプトで巡るのも楽しいものです。
ドイツでは知らぬ者の居ない伝説上の英雄、ジークフリート。会いに行く事は出来ない英雄ですが、ゆかりの地巡りなら今でも可能です。ファンタジックな雰囲気を高める美しい町や、本物の城壁を改装した博物館。そして中世から変わらないラインの眺めを確かめに、ヴォルムスの町を訪れてみませんか。
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(2024/4/20更新)
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