辺境の地、キジ島へ行くには、それなりの覚悟が必要です。基点となるカレリア共和国の首都ペトロザヴォーツクへは、通常モスクワから約12時間、またはサンクト・ペテルブルグから約9時間の夜行列車に乗らなければなりません。近頃の日本では、夜行列車といえば高級観光寝台列車が多いようですが、ロシアではまだまだ素朴なたたずまいで、旅情をそそります。
夜が明けて、車窓に白樺の林が見えてくる頃になると、クラシックな制服を着た車掌さんが、パンケーキの朝食を届けてくれます。
写真:ジュマペル ヤマモト
地図を見るペトロザヴォーツクに到着したら、今度は水中翼船に乗り込みます。氷河に侵食されフィヨルド的に複雑な地形をしたオネガ湖は、ヨーロッパで2番目に大きな湖ですが、冬には完全に結氷します。湖には、なんと大小5000の島々があります。キジ島はその中の1つで、長さ7kmの細長い小島です。出航した船は、緑の美しい島々の間を縫うように走り、約1時間半でやっとキジ島の小さな船着場に到着します。
写真:ジュマペル ヤマモト
地図を見るキジ島は、島全体がオープンエアの博物館になっています。船着場には、カフェ・土産屋とトイレがあるだけです。この先は、飲食や喫煙は禁止となります。
入場ゲートを抜けると、ただ平坦な草原が広がる木道の先に、教会建築群がその異様を現します。
写真:ジュマペル ヤマモト
地図を見る写真:ジュマペル ヤマモト
地図を見るどうですか、この存在感!
金属的な鼠銀色に鈍く光る重層のたまねぎ型ドーム。にわかには信じがたいことに木造建築です。まるで古代魚のうろこのような印象的なドーム部分は、全体でなんと3万枚ものポプラの薄い板を、緻密に組み合わせて、木造とは思えない見事な曲線を形作っています。さらに驚いたことに、これらの建物は、1本の釘も使うことなく組み上げられています。世界有数の木造建築技術を誇る日本人の私たちから見ても、当時の職人の卓越した技術と魂に感服せずにはいられません。
写真:ジュマペル ヤマモト
地図を見る建築は1714年。高さ37m、ドームの数は22にもなります。300年間、風雪に耐え抜いてきましたが、傷みも激しく、長期に渡って修復作業が進行中のため、残念ながら内部には入場できません。
写真:ジュマペル ヤマモト
地図を見る修復作業に着手した当初は、構造や技術が伝承されていなかったため、基本的な調査研究からスタートしたそうです。現在は、専門学校が作られて、技術者の養成と修復を担っています。
写真:ジュマペル ヤマモト
地図を見る厳寒期には、氷点下40℃にもなるというキジ島。プレオプラジェンスカヤ教会は、夏専用の教会のため、寒くなってくると祈りを捧げるどころではなくなってしまいます。そこで冬用の教会として、ペチカを備えたポクローフスカヤ教会が建築されました。建築にあたっては、プレオプラジェンスカヤ教会との調和が重視され、同様の木造ドームが設置されました。
写真:ジュマペル ヤマモト
地図を見るこちらの教会は、入場することができます。薄暗い内部には、イコン画で飾られた小さな聖堂があり、修道士の皆さんが観光客のために賛美歌を歌ってくれます。小さな窓からは、隣にプレオプラジェンスカヤ教会が望めます。
写真:ジュマペル ヤマモト
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地図を見るキジ島には、他にも近辺から木造建築物が移築・公開されています。ラザロ復活教会は、ロシア最古の木造建築で、14世紀に建てられたものです。
写真:ジュマペル ヤマモト
地図を見る木造住宅の中では、昔の生活を再現し、長く厳しい冬の現金収入源となる機織りや刺繍などの女性の仕事ぶりが実演されています。
観光客がキジ島へ上陸できるのは、夏季の数ヶ月のみ。そのうえ日本からのアクセスが著しく不便ときていますが、それだけにこの目で見るその姿は、ただ感動するばかりです。はるばる訪れるに値するキジ島へ是非どうぞ!
この記事を書いたナビゲーター
ジュマペル ヤマモト
私は、これまで旅先で様々な人に出会い、風景やモノを見て、感動したりド肝を抜かれたり、時にはヘコんだりしてきました。そしてそれらの経験は、私の人生に多くの影響を与え、成長させてくれました。そうです、旅は…
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(2025/2/9更新)
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