写真:吉川 なお
地図を見るミュンヘン中心部から5キロ西に位置するニンフェンブルグ宮殿は、第2代バイエルン選帝侯のフェルディナント・マリアとその妻エンリエッテ・アデライデが、結婚10年目にして授かった嫡男の誕生を祝って1664年に建てた夏の離宮です。数ある設計図の中からエンリエッテが選んだのは、故郷イタリアトリノの別荘と同じルネッサンスの建築様式で、その後、息子のマクシミリアン2世エマヌエルが両翼の建物を、次のカール7世が庭園や周りを囲む建築物を拡張していき、現在の姿となりました。
宮殿は左右対称に正方形のパピリオンから構成され、長い通路でつながっています。中央の建物は豪華な祝祭大ホール、北側は選帝侯の住居、南側は選帝侯妃と王妃の住居で、「ニンフェ(妖精)のブルグ(城)」の名の通り、白鳥が泳ぐ池を前に優雅にたたずんでいます。
写真:吉川 なお
地図を見る歴代君主により増築されたニンフェンブルグ宮殿は、バロック、ロココ、新古典主義などさまざまな建築様式が混在しています。中央本館2階の「シュタイナーザール(石のホール)」は白い壁に黄金の装飾が施され、美しい絵画で覆われた壮麗なロココ様式で、訪れる全ての人の目を釘付けにする華やかな大広間です。
写真:吉川 なお
地図を見る天井を彩るフレスコ画は『女王フローラに敬意を表するニンフェ』で、この宮殿の名のいわれとなった特別な絵です。バイエルン州南部の世界遺産「ヴィース教会」の天井画「キリストの再臨」を描いたヨハン・バプティスト・ツィンマーマンによるもので、花の女神フローラに仕える妖精ニンフェの姿は、花々が咲き誇る夏の離宮の象徴となっています。
写真:吉川 なお
地図を見るノイシュバンシュタイン城の建設で広く知られる第4代バイエルン国王ルートヴィヒ2世は、1845年8月25日にこの宮殿の王妃の住居で誕生しました。緑色で統一された上品な部屋は当時のままで、宮殿の南側の端に位置しています。
第3代のマクシミリアン2世とプロセイン王女マリーの長男として誕生した彼は幼少期のほとんどをこの宮殿で過ごし、音楽や文学に親しみました。16歳の時に観たオペラ「ローエングリーン」に深い感銘を受け、以後楽劇王、ワーグナーの世界に心酔します。父の死により18歳の若さで一国の主となった後も、現実から目を背けて夢の理想郷を求め続け、ノイシュバンシュタイン城をはじめとする城の建設で財政を圧迫したことから1886年に廃位され、翌年6月にシュタルンベルク湖で謎の死を遂げました。
写真:吉川 なお
地図を見る神話に魅了され、建築と音楽に浪費を繰り返した彼はメルヘン王、狂王と称され波乱の人生を閉じましたが、敷地内の馬車博物館(マーシュタール)で彼の痕跡を見ることができます。
数ある馬車の中でも一際目立つ愛用の馬車は、金細工の豪華な飾りが施され、とてもきらびやかです。
写真:吉川 なお
地図を見るその横には冬に使用した自慢のそりがズラリと並んでいます。夕方起床し深夜に興じたというそりの先頭には、外灯となるランタンを持った妖精が羽ばたくように取り付けられています。
写真:吉川 なお
地図を見るニンフェンブルグ宮殿のハイライトは、南側パピリオンにある「美人画ギャラリー」。第2代のルートヴィヒ1世が愛したと言われる36人の美女が一堂に会する部屋で、見るも美しい女性たちの肖像画で埋め尽くされています。
これらはすべて宮廷画家ヨーゼフ・シュティラーが1827年から1850年の間に描いたもので、ルートヴィヒ1世の要請で彼女たちの美貌を後世に残すべく制作されました。
写真:吉川 なお
地図を見る王の寵愛を受けた女性たちとあって、現代の感覚で見ても美人揃いですが、実際はモデルを少々美化して描いています。
王の好みはイタリアやギリシャ系の小麦色の肌をした女性だったそうですが、それぞれの女性の個性がとてもよく出ていて、その美しい姿に魅了されます。
写真:吉川 なお
地図を見るこれらの美女たちの中でも一番有名なのは、当のルートヴィヒ1世が退位する原因となったスペインの踊り子、ローラ・モンテスです。王の愛人になった彼女は政治に介入しただけでなく、年金と伯爵夫人の称号という特別待遇を受けたことから、これに反発した民衆が暴動を起こす事態となりました。これに屈したルートヴィヒ1世は彼女を国外追放し、翌1848年に自身も退位。ルートヴィヒ2世の父である長子マクシミリアン2世に譲位しました。
彼女はその後も多くの恋愛遍歴を重ねましたが、幸せな結婚生活は送れず、最後はアメリカに渡って病に倒れ、39才で没しました。
写真:吉川 なお
地図を見るミュンヘンは第二次大戦中に連合国の激しい空爆を受けましたが、ニンフェンブルグ宮殿は破壊を免れ、当時の優雅な宮廷生活やヴィッテルスバッハ家の栄華をいまに伝える場所として、静かに時を刻んでいます。
ご紹介した以外にも、宮殿内では選帝侯や選帝侯妃の部屋、バイエルン公国御用達の名品を展示する「陶磁器博物館」などが公開されています。宮殿の外にはフランス様式と英国様式の庭園、その周りにはロココ建築の狩猟用の小宮殿「アマリエンブルグ」、入浴場だった「バーデンブルグ」、オランダ製のタイルと中国風サロンがある「パゴーデンブルグ」、瞑想の場「マクダレーネン庵」などが点在しており、すべて見るには半日は必要です。
緑と水に恵まれたニンフェンブルグ宮殿はヴィッテルスバッハ家の人々だけでなく、現代の私たちにも癒やしの時間をもたらしてくれる憩いのスポットです。ミュンヘンに行かれたら、中心部にある居城レジデンツとは違う魅力を持ったニンフェンブルグ宮殿を訪れてみてはいかがでしょうか。
住所:Schloss Nymphenburg, Eingang 19
開館時間:9:00〜18:00(4月〜10月15日)、10:00〜16:00(10月16日〜3月)
休館日:1月1日、懺悔の火曜日、12月24、25、31日
アクセス:17番のトラムAmalienburgstr.行き「Schloß Nymphenburg」下車、徒歩約5分
2017年9月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。
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この記事を書いたナビゲーター
吉川 なお
台湾の台北市に住む専業主婦の吉川なおです。台湾生活はもう8年ですが、常に新しい発見のあるこの国が大好きです。在住者だからこそ知っている生情報やお薦めのレストランなど、台湾の旅がより思い出深いものになる…
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