大島は和歌山県で最大の島。本州最南端の潮岬からは1キロほどの距離。周囲約28キロに約2000人の島民が住んでいます。
このあたりから三重にかけては伊勢エビの漁場。潮の流れの早い海だからこそ、身の締まった美味しい伊勢エビが獲れるそうです。
そんな島の港のすぐ近くに、獲れたて伊勢海老を使った鍋を食べさせてくれるお店があります。しかしそこは、お店とは言ってもまったくそうは見えない佇まい。「びっくり伊勢海老」と店らしき看板はありますが、案内されるまま玄関に回ってみても普通の民家‥。じつはここ、野呂さんという漁師さんの自宅。そこで新鮮な伊勢海老を食べさせてくれるのです。まさに、隠れ家中の隠れ家!っていうか、人の家!!
メニューを見ると「伊勢海老」とだけ書かれています。そしてその横には、200グラム2500円から、100グラム刻みで重さと、それに応じた金額が書かれているのみ。
希望の重さのエビを選ぶと、やがて桶に入った生きた伊勢海老が運ばれてきます。そして石を敷いた鍋、酒、白菜とうどん。
いよいよ目の前で調理スタートです!!
鍋に入れた石が温まると野呂さんが豪快に伊勢海老と酒を入れ蓋をします。
エビが石の上で暴れる音を聞くこと数分。プリンプリンの伊勢海老が茹で上がります。酒蒸しされた身を食べている間にも、海老の身の取り出し方を教えてくれたり、今後の地元の発展について熱く語る野呂さん。親戚の家に来たような不思議なくつろぎを味わえます。
海老の身やミソを食べてしまったら、今度はガラを鍋に入れて白菜とうどんを加え、だしで煮ます。海老のうまみがたっぷり染み出たおいしいうどんは絶品。
新鮮そのものの伊勢海老を味わうには、漁師めしのシンプルでワイルドなこのレシピが一番かもしれません。
【びっくり伊勢海老】
和歌山県東牟婁郡串本町大島100−22
tel(0735・65・0100)
営業時間=11時〜15時
定休日 =水曜日
潮岬方面からの橋を渡ってきてT字路を右に進んで行くと「トルコ記念館」「エルトゥールル号遭難慰霊碑」があります。
なぜここにそんなものがあるかと言えば…
1890年、東京からトルコに戻る途中で嵐にあった軍艦エルトゥールル号。大島沖で座礁し、600人以上の乗組員が夜の海に投げ出されました。
事故に気づいた島民たちは総出で救助にあたり、傷ついた遭難者らを家に運び介抱したといいます。
多くの犠牲者と行方不明者がいましたが、69人が無事にトルコに生還し、大島島民の手厚い看護のことを自国で伝えたそう。
世界の中でも有数の親日国と言われるトルコ。
その遠い国の人々が日本に親愛の情を示してくれる理由のひとつに、エルトゥールル号の歴史が関わっていると言われています。
「トルコ記念館」では、エルトゥールル号事件に関する資料などが展示されていて、職員の人が展示された資料を丁寧に説明してくれることもあります。
日本とトルコの友好の歴史にしみじみ感動します。
【トルコ記念館】
串本町樫野1025-25
tel(0735・65・0628)
営業時間=9時〜17時
入場料 =250円(小学生以下120円)
「トルコ記念館」から遭難慰霊碑を経て樫野埼灯台旧官舎に至るまでの海を見下ろす散歩道はまるでリトル・トルコ。
のび〜る不思議なもっちり食感のトルコアイスや、おいしいトルココーヒー、トルコ雑貨を売っている店があり、和歌山県の島なのに、そこは異国情緒タップリ。
民族音楽が流れていたりと、伊勢エビを食べたあとにちょっと散歩するには、もってこいのコースです。
さて、先ほど書いたエルトゥールル号の話には実は後日談があります。
それは1985年の話。イラン・イラク戦争のさなか、イラクのサダム・フセインは「48時間後にイラン上空を飛ぶ飛行機はすべて撃ち落とす」と世界中に発信しました。そのとき日本は素早い反応ができず、多くの日本人がイランに取り残されてしまったのです。
その時に危険を顧みずに飛行機を飛ばし、イランにいた日本人全員を無事に成田まで送り届けたのはトルコ航空でした。そして当時の在日トルコ大使はその理由を語ります。「エルトゥールル号の恩返しをした」と。
そんな秘話に思いをはせながら、ここから眼下に広がる荒波の太平洋を眺めてみると、海の向こうの世界が間近に感じて見えてくるかもしれませんね。
それでは島から離れて、一度串本町へと戻ってみましょう。国道42号線沿いを行くと、海岸から大島方向に向かって海の中に林立する奇岩群が見えてきます。そこが、有名な観光地でもある橋杭岩。
直線上に立ち並ぶ姿が橋の杭のように見えることから、そう名付けられたとか。
この地に残る弘法大師伝説によると、
〜昔、弘法大師が天の邪鬼と「串本から沖合の島まで一晩で橋を架けることができるか」賭けをした。弘法大師が橋の杭をほとんど作り終えたところで、このままでは賭けに負けると思った邪鬼がニワトリの鳴き声をまねた。
朝が来てしまったと勘違いした弘法大師は、橋を完成させないままその場を立ち去った。そして橋の杭だけが残った〜
と残されています。
大小約40もの岩が海から一列にそそり立っている姿に、
神秘的な伝説もあながち嘘ではないような気がしてしまうかも。
干潮時には、約850メートルの列の中ほどにある弁財天まで歩いて渡ることができます。
吉野熊野国立公園に属し、国の天然記念物の指定も受けている観光スポットで、岩の間から朝日が立ち上る荘厳な光景を見られる絶好の日の出ポイントでもあります。
黒潮の恩恵を受けて、冬でもぽかぽか暖かい常春の心地よさ。
夏は透明度の高い海でのダイビングや、太平洋に打ち寄せる波でサーフィンも盛んです。
また串本は本州最南端の温泉地、世界最北端のサンゴの棲息地としても知られています。
アクセスは、
【大阪方面から】
車=阪和自動車道を南へ。「田辺IC」から国道42号線を南下。白浜などを経由して串本町に至る。約4時間。
電車=JRきのくに線。
大阪から特急で約4時間
【関東・名古屋から】
車=名古屋市中心部から紀勢自動車を通って3時間40分。
電車=名古屋駅からJR紀勢本線で新宮。新宮からJRきのくに線。
名古屋から特急で約4時間半。
海沿いの国道は絶好のドライブルート。JRも長い海岸線に沿って走ります。
人の心も温かい日本のディープサウスへ「おいなあよ(おいで)」。
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