近江八幡の端緒であり近江・信仰の淵源たる名刹〜長命寺〜

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近江八幡の端緒であり近江・信仰の淵源たる名刹〜長命寺〜

近江八幡の端緒であり近江・信仰の淵源たる名刹〜長命寺〜

更新日:2017/10/21 12:34

小谷 結城のプロフィール写真 小谷 結城 国内旅行業務取扱管理者、京都検定2級、温泉ソムリエ、日本城郭検定2級、国内旅行地理検定2級

昔ながらの町並みを残す近江八幡。現在の市街地は戦国時代に開発された城下町を端緒としていますが、それ以前の近江八幡は参詣道に往来がある程度でした。そして、この参詣道の先にあった、近江八幡のルーツと言える場所が長命寺です。琵琶湖の湖岸に臨む、高さ333メートルの長命寺山の山腹に鎮座しています。聖徳太子が開基したとされ、西国三十三ヵ所第31番札所でもある滋賀県きっての名刹です。それでは、参りましょう。

808段、圧巻の石段

808段、圧巻の石段

写真:小谷 結城

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まずは石段を登ります。段数は社寺の中でも圧巻の808段。健脚のほどが問われます。長命寺は浄土宗などの宗派に属さない単立寺院です。境内までちゃんと石段が続いているのは、ひとえに地域の人々の時代を超えた信仰の賜物でしょう。

ちなみに、寺内に近い石段の途中のところに道路が通じており、ここから石段を登れば、比較的容易に登頂することができます。

808段、圧巻の石段

写真:小谷 結城

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石段を登ってゆくと、そそり立つ石垣が見られます。野面積みで石段の切り立った部分や、石段のために削ったと思われる山の側面の補強にも石垣が用いられているようです。

滋賀県は古くからの交通の要衝です。これは、すなわち戦においても重要な地域と言うことができます。戦国期、実際に長命寺も兵火による焼失という憂き目に遭っており、現在の堂宇はその後の再建になります。石垣の発明も戦国期。長い石段とそそり立つ石垣は、兵火からの防御の意図もありそうだと感じてしまいます。

堂々とした佇まいの「三重塔と本堂」

堂々とした佇まいの「三重塔と本堂」

写真:小谷 結城

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登りきると正面に本堂、右手に三重塔が見えます。まずは、三重塔を見てみましょう。

三重塔は元応2(1320)年に竣工するも永正13(1516)年に焼失。その後、天正17(1589)年から慶長2(1597)年の8年を掛けて再建されました。屋根は杮葺き、全ての階に高欄が付いた総丹塗りです。組物は三手先。軒は平行垂木。蛇腹支輪も見られます。

堂々とした佇まいの「三重塔と本堂」

写真:小谷 結城

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続いて本堂です。こちらも永正13(1516)年に焼失。その後は大永2(1522)年から2年掛かりで再建された寺内最古の建築物になります。入母屋造り、屋根は檜皮葺き。中世の和様仏堂の典型とされる貴重な遺構です。組物は出組(一手先)の疎組。束はシンプルな間斗束です。軒は平行垂木、縁を支える縁束と内陣柱は円材ですが、側廻りは角材を使用しています。比較的簡素な印象があり、これが中世の和様の特徴だと理解できます。

疎垂木と舟肘木が気になる「三仏堂と護法権現社拝殿」

疎垂木と舟肘木が気になる「三仏堂と護法権現社拝殿」

写真:小谷 結城

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本堂と渡り廊下で結ばれているのは三仏堂です。三仏堂の名は釈迦・弥陀・薬師仏の三尊を祀ることから。元暦元(1184)年に造立されるもやはり永正13(1516)年に焼失。再建は永禄年間(1558〜1570)と思われます。県下でも数少ない持仏堂形式の重要な遺構になります。入母屋造り、檜皮葺き、軒は平行垂木の疎垂木。側廻りは円柱で舟肘木を載せた簡素な造りですが、内部では木鼻や三斗組が見られるのも特徴的です。

疎垂木と舟肘木が気になる「三仏堂と護法権現社拝殿」

写真:小谷 結城

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三仏堂のさらに隣、護法権現社拝殿があります。聖徳太子がこの地に開基したのは、神代に景行天皇などに仕えた忠臣として知られる武内宿禰(たけのうちすくね)が長寿を祈願した霊山であったことから。まさに長命を願う寺、というわけです。その長命寺開基のきっかけになった武内宿禰を祀るのが護法権現社であり、奥にあるこれの本殿に拝礼をする建物がこの護法権現社拝殿になります。すなわち、この堂宇の存在が、長命寺が神代からの信仰を繋いできたことの証左だと言えるでしょう。

ちなみに、建物は三仏堂とよく似た形式をしており、簡素。現在のものが建てられたのも永禄年間です。

美しく本格的な「鐘楼」

美しく本格的な「鐘楼」

写真:小谷 結城

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本堂から連続するのは護法権現社拝殿まで。さらに横並びではありますが、山から突き出した高台の上に続いて鐘楼が立っています。慶長13(1608)年の再建。下層は漆喰壁と板張りの袴腰。上層は疎組ながら三手先の組物を備え、檜皮葺き屋根の軒は平行垂木の二軒繁垂木、蛇腹支輪なども見られる和様を基調とした本格的な社寺建築です。

美しく本格的な「鐘楼」

写真:小谷 結城

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鐘楼の中には入ることもできます。横に細長い窓から差し込む光が鐘楼の内部の2階部分のみを照らしているばかりで、閉鎖的。大多数の鐘楼が壁を持たない開放的な造りであるのに対し、構造といい、採光といい、独特な空間を呈しています。梵鐘は階段を上がって2階。ここまで見てきた堂宇よりも古い鎌倉期に遡る古鐘です。

美しく本格的な「鐘楼」

写真:小谷 結城

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高所にあって寺観に立体感を生み出している鐘楼。ここから本堂の方面を望めば、堂宇がきれいに並んでいる姿が確かめられます。長命寺ならではの景観です。西には琵琶湖。しかし、琵琶湖を望むにはこちらよりもおあつらえ向きの場所があります。

琵琶湖を望む眺望

琵琶湖を望む眺望

写真:小谷 結城

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寺内奥部には、太郎坊権現社が控えます。超人的な力を身に付けた長命寺の修行僧・太郎坊を祀る社殿です。この社殿と拝殿の間には巨岩。これ以外にも寺内背後の斜面にいくつかの巨岩が転がっており、長命寺信仰の原初はこれらの岩々を神様の依代と考えた磐座(いわくら)信仰ではなかったかと想像させられます。

さて、琵琶湖の眺望で知られるのは拝殿からの景色です。眼下には静かに水を湛える琵琶湖と田園の広がる近江盆地。その遠くには、比叡山を正面に比良山地が山容を薄墨色に浮き上がらせています。

琵琶湖を望む眺望

写真:小谷 結城

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拝殿から少し外れれば、正面の木も隅に退いてくれます。その向こうに見られる琵琶湖を中央にした景色はやはりのどか。この景色が見られるのも、美しい建築群を拝められるのも古来からの信仰の賜物。信仰の力はやはり偉大です。

長命寺の基本情報

住所:近江八幡市長命寺町157
電話番号:0748-33-0031
アクセス:名神竜王ICより約30分
開館時間:8:00〜17:00

2017年10月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。

掲載内容は執筆時点のものです。 2017/08/25 訪問

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