“断崖と滝と紅葉”日本最大の渓谷・富山「黒部峡谷下ノ廊下」

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“断崖と滝と紅葉”日本最大の渓谷・富山「黒部峡谷下ノ廊下」

“断崖と滝と紅葉”日本最大の渓谷・富山「黒部峡谷下ノ廊下」

更新日:2017/10/23 16:14

春野 公比呂のプロフィール写真 春野 公比呂 歴史研究家、郷土文筆家、郷土登山家

富山県立山町の黒部ダムから黒部市にかけての黒部川は、西と東を三千m級の山脈に挟まれた特異な地形から、高さ数十から数百mのV字峡を成し、日本最大の渓谷「黒部峡谷下ノ廊下」を形成しています。この断崖には全長約27kmの手摺のない超狭い歩道が通っており、途中の温泉の湧く山小屋に宿泊し、黒部ダムから欅平まで歩き通すことができます。峡谷の紅葉も一味違う絶景です。この究極のスリルと絶景をご体感ください。

巨大雪きのこ現る!?

巨大雪きのこ現る!?

写真:春野 公比呂

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下ノ廊下沿いの歩道を一気に歩き通すには、雪解け後の道の整備が完了し、且つ、途中の山小屋「阿曽原温泉小屋」が営業中の期間が好都合。その時期は例年概ね9月中下旬から10月の約1ヶ月半です。それ以外の期間は積雪がなければ、阿曽原温泉小屋側の阿曽原キャンプ場でテント泊をするか、途中まで2回に分けて往復することになります。但し、いずれの場合も長時間の歩行となり、狭い所では道の幅員が僅か60cmほどの手摺のない断崖を通ることから、登山経験者でなければなりません。

コースの南の基点は黒部ダム、北の基点は黒部峡谷鉄道の欅平(けやきだいら)駅ですが、南側の道の幅員が特に狭いため、疲労のことを考慮すると黒部ダムを起点とする方が無難です。その場合前日、黒部ダム南方の「ロッヂくろよん」か、扇沢や大町温泉郷等の宿泊施設に泊まることになります。
黒部ダムからは一気に黒部川の谷底まで、道路をショートカットする形で下りて行きます。谷底まで下りると対岸に渡ります。最初、あまり川に水はありません。

巨大雪きのこ現る!?

写真:春野 公比呂

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黒部ダムから仙人ダムまでの歩道は日電歩道と言い、水力発電の開発のための作業道として昭和4年、開通しました。道は最初、低い所を通っているのですが、徐々に高度を上げて行き、断崖道となります。命綱となるのは、岩盤に張られた針金のみ。

巨大雪きのこ現る!?

写真:春野 公比呂

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コースからは聳え立つ絶壁、随所に現れる対岸の滝等、見所が満載。
落差が何十mもある対岸の新越沢の滝を過ぎ、ほどなくすると、急にひんやりとした冷気に覆われます。万年雪が岩石のような塊となって連なっているのです。中には何mもある巨大キノコのようなものもあります。

雄大な切り立った断崖の紅葉

雄大な切り立った断崖の紅葉

写真:春野 公比呂

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対岸の断崖は三千m級峰から派生する支尾根であるだけに、恐ろしいまでに切り立っており、その山肌を覆う紅葉も普通の渓谷とはスケールが違います。

雄大な切り立った断崖の紅葉

写真:春野 公比呂

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対岸にダル沢を見送ると最初の景勝地・白竜峡で、岸から滝が落下する箇所もある、流れが屈曲した所。
峡谷に落下する滝は対岸だけでなく、コース沿いの沢からも落下しており、黒光りのする岩に白い飛沫を上げています。

雄大な切り立った断崖の紅葉

写真:春野 公比呂

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そんな険しい峡谷ですが、水量が少ない時期は所々泉のようになっており、そこの水はエメラルドグリーンの美しさ。

峡谷が十字に切れる奇跡の景観

峡谷が十字に切れる奇跡の景観

写真:春野 公比呂

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視界一面に紅葉の崖が広がっています。

峡谷が十字に切れる奇跡の景観

写真:春野 公比呂

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次の景勝地は西の剱大滝を擁す剱沢と東の爺ヶ岳(2669.8m)に源を発する棒小屋沢が滝となって峡谷に落ち込んでいる十字峡。谷が十字になるという自然の妙です。谷底まで下りられるようですが、道は不明。現在は上方に見晴台のようなものが設置されている模様。コースは剱沢の滝のすぐ上を越えており、豪快な景観。

峡谷が十字に切れる奇跡の景観

写真:春野 公比呂

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対岸の棒小屋沢の滝は剱沢の滝より奥行と落差があり、三段から四段になって落下しているようです。

コース沿い最大の滝

コース沿い最大の滝

写真:春野 公比呂

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次の景勝地は半月峡、そしてS字峡と続きます。この辺りの谷幅は極端に狭く切り立っており、半月峡は半円形を描き、S字峡はS字を描いてくねっています。こちらも両岸は紅葉に彩られています。

コース沿い最大の滝

写真:春野 公比呂

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対岸におにぎり型をした、地下の発電所から送られる送電線の送り口が見えると、長い吊橋で対岸に渡ります。歩くたびに揺れるのでスリルがあります。この下周辺は河原状になっており、下りて行くことができるので、弁当を広げるのに適しています。

対岸の道は未舗装の作業車道となっており、要塞隧道のようなトンネルを抜けると仙人ダムが現れます。このダム湖をインクラインに繋がるレールが敷かれた屋根付き水路橋で渡り、西岸に戻ります。そしてダム施設内を案内表示に従って抜け、欅平へと続く「水平歩道」を登ります。

短いトンネルを抜けると阿曽原温泉小屋で、この下に阿曽原キャンプ場が整備されています。キャンプ場からの星空は絶品。温泉は小屋からやや下った所にある露天風呂(利用期間は小屋の営業期間に準じる)で、峡谷を見下ろしながら極楽気分に。

コース沿い最大の滝

写真:春野 公比呂

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水平歩道は日電歩道とは違い、高所を通っているため、川面を間近に見ることはできませんが、コース沿いの沢から激流や滝が道へと落下しています。中でも折尾谷に懸かる滝は最大で見応えがあります。写真は間近から撮っているため、落差があまり感じられませんが、もっと手前から見ると四段以上になって落下する大瀑布であることが分かります。

尚、コースが最も西に振った所の志合谷は長い素掘り隧道で越えるようになっています。懐中電灯がないと一寸先も見えないほど。膝下位まで地下水が溜まっていることもあるので、ザックにウォーターシューズを入れておけばいいでしょう。但し現在は水抜きを行っているせいか、WEBを見る限りでは水がないことが多いようです。

迫りくる黒部の怪人

迫りくる黒部の怪人

写真:春野 公比呂

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水平歩道からは終始、黒部三大岩壁の一つ「黒部の怪人」こと「奥鐘山(1543m)」が紅葉を纏った大岩壁となって視界に広がっています。あまりにも大き過ぎ、またすぐ向かいにあるため、よほどの広角レンズでないと全体を写すことができません。写真は岩盤を刳り貫いた水平歩道越しの奥鐘山の岩壁。

迫りくる黒部の怪人

写真:春野 公比呂

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奥鐘山をやり過ごすと、コースから後立山連峰・白馬山系まで遠望できます。

迫りくる黒部の怪人

写真:春野 公比呂

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欅平駅上方の尾根でコースは二手に分かれますが、北の道を取って猿飛峡に下りてから、駅へと進めばいいでしょう。猿飛峡も両岸の幅が狭く、猿が跳んで渡ったというほど。大岩が屹立し、景雲峡とも呼ばれています。支流が勢いよく流れ込み、岸の岩壁に衝突する様等、見応えがあります。
帰路は黒部峡谷鉄道のトロッコ電車に乗れば、各ダムのダム湖となった黒部川と周辺の紅葉を愛でることができます。

一生に一度は下ノ廊下へ

一般観光客の方は黒部峡谷と言えば、黒部峡谷鉄道沿いの黒部川を思い浮かべることと思いますが、峡谷の核心部は下ノ廊下です。黒部峡谷の迫力=下ノ廊下と言ってもいいほどです。目がくらむほどの断崖、コースや対岸に次々と現れる滝、写真に納まらないほどの大岩壁、峡谷を覆う紅葉等、「日本一の渓谷」の真髄があります。因みに黒部ダムが建設されるまで、ダム湖の箇所に「中ノ廊下」がありました。上流の「上ノ廊下」は今でもありますが、沢登り経験者でないと遡行できません。

本コースで注意しないといけないのは、時折、転落死亡事故が起きる点です。滑るようには見えない地面であっても、岩盤の上に薄く土が堆積しただけなので、思ったより滑り易いのです。特に日電歩道は歩き始めて2〜3時間以上経過すると、自覚できない疲労もあるため、必ず命綱となる針金を掴みながら歩いてください。

市販の登山地図では、黒部ダムから阿曽原温泉小屋までのコースタイムが7時間となっていますが、殆どの方が6時間台で踏破できます。温泉小屋から猿飛峡までは4時間台で行けます。
コースの現況について一番詳しいのは阿曽原温泉小屋ですが、民間の施設のため、宿泊することを前提に問い合わせてください。どこの山小屋でも夕方は多忙のため、問合せはその時間帯を避けてください。温泉小屋の休業期間は、自治体に照会先をお尋ねください。

登山未経験者の方も日本最大の渓谷には興味を持たれることでしょう。その際は岩場の多いコースのある山での登山経験や、大型ザックを背負っての宿泊登山経験を半年以上積んだ上、チャレンジしてみて下さい。下ノ廊下は登山ツアーも開催される位なので、決して難しいコースではありません。
日本一の渓谷が他の渓谷とどう違うのか、是非自身の目でお確かめください。

掲載内容は執筆時点のものです。 1993/10/20−2017/10/21 訪問

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