焼岳は北アルプスで活動が確認される火山の一つ。上高地に立ち入るとどうしても槍ヶ岳や穂高岳といった名峰に目移りしてしまいますが、その姿は独立峰と見間違わんばかりに雄々しく、上高地の入り口にそびえ立っています。
上高地といえばコバルトブルーに輝く大正池が有名ですが、実はこの池、自然の流れでは7、8年程度で消失するという面白さがあります。1915年の焼岳大噴火によって上高地中央を流れる梓川がせき止められてできた大正池ですが、上流からの堆積物によって年々池底が浅くなっているようで、現在は人の手によって堆積物が除去され現状を維持しているに過ぎない池なんですね。まさに現在進行中の生きた風景といえましょう。
ちなみに「大正池ホテル」がある池東側を早朝に訪れると、焼岳が大正池に写る神秘的な風景を楽しむことができます。また、例年11月に入ると除去作業を見ることもできます。
<大正池の基本情報>
住所:長野県南安曇郡安曇村上高地
アクセス:さわんどバスターミナルより上高地行き25分、大正池バス停下車。マイカーの場合、さわんどバスターミナル付近のさわんど大橋駐車場がオススメ。(東京、大阪からバス利用の場合、往復で約15000円)
上高地開山時期:4月17日〜11月15日
年間訪問者数:約120万人(上高地)
テント場:付近では小梨平キャンプ場
2017年10月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。
焼岳は上高地側から登り始めるコースが人気で、コースタイム7時間、コース距離12.6km、標高差1120mと日帰りで往復することが可能な山です。
上高地の梓川左岸を程なく歩き、田代橋、穂高橋を超えてから焼岳登山スタート。序盤はカラマツや白樺の樹林帯を緩やかに登って行くことになります。
地形特徴としてはぬかるみが多くあり、水が染みないシューズがオススメです。上高地から新中尾峠までの区間は中盤以降、斜度も上がり垂直なハシゴも出てきますので北アルプスのエントリー登山といえども気を引き締めてかかりましょう!
上高地→焼岳登山口→新中尾峠(焼岳小屋)→中尾峠→焼岳北峰ピーク
<焼岳小屋の基本情報>
住所:岐阜県高山市奥飛騨温泉郷中尾
電話番号:090-2753-2560
アクセス:上高地バス停より3時間
利用可能時期:6月11日〜10月29日
収容人数:25名
料金:1泊2食8000円/素泊まり5500円
個室:無
テント場:無
2017年10月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。
焼岳小屋で一服し、南に進路を変えしばらくすると焼岳の岩壁を見上げる展望台に到着することができます。ここからは明神岳や穂高連峰の南半分を一望することも可能です。
明神岳といえば河童橋から必ずといっていいほど写真を撮ってしまう上高地のシンボル的存在ですが、実は麓からは全体像が見えてこないなんてことも。写真右側の雲がかかる部分が5峰(最南峰)、中央のアーチ状の部分が4峰、写真では分かりづらいですが先ほどのアーチ左横、切れ目の上辺りに3峰、さらに左のロバの耳のようになっている二つの峰の内、右が2峰、左が1峰(最高峰)となります。
上高地からだと1と2、3と4がかぶったように見えて最高峰が見えてこないなんてことも多々あります。そして写真でいう左端のなだらかに見える峰が前穂高岳となり写真外に吊り尾根、奥穂高岳(穂高連峰の最高峰)が続きます。
焼岳展望台からは正念場となってきます。焼岳山頂までは300mほど一気に標高を稼ぐ急坂となりますので一歩一歩着実に歩を進めましょう。
ところで写真に写る白いモヤですが、これは文字通りのガスで焼岳が放出するものです。濃度は危険なレベルに達していないようですが、硫黄臭が立ちこめるまさに生きる山。普段休止中の山を歩いている方にとっては新鮮に映る山かと思います。付近では噴気孔から水蒸気が立ち上がる景観や硫黄の結晶化を見かけることもできるでしょう。
焼岳山頂に近づけば近づくほど大地の息吹を感じずにはおれない、それが焼岳登山の醍醐味。
焼岳は常にガスを放出する活火山ですが、美しい風景は光がガスによって散乱する風景。写真は秋口12:45前後に撮影したもので、焼岳山頂には東壁から迂回する関係で徐々に沈む太陽と重なる位置関係になります。この時間帯に登る、または下山の最中ならご覧のような神秘的な風景を楽しむことも可能です。
硫黄臭が立ちこめる中、最後の足がかりが悪い岩登りをしたところでようやく焼岳の北峰ピークへ。山頂ではガレ場が広がり、上高地は元より、穂高連峰、槍ヶ岳、遠く裏銀座まで一望することができ、まさに北アルプスを知るならまずは焼岳といっても過言ではない場所です。
焼岳には北峰とは別に南峰というものがあり、実際のところこちらの方が若干高い2455mと最高峰で、写真で分かるように崩壊が激しいため進入禁止となります。その基部には小さくも美しい火山湖・正賀池が形成されており、焼岳が火山であることを改めて感じられる一面でしょう。
上高地の大正池が人の手によって維持されている一方で、この正賀池は将来消えて無くなる今しか見ることができない風景。エメラルドグリーンに輝く正賀池はまさに自然が万物流転である証しといえましょう。
上高地自体は焼岳火山群の一つ白谷山の噴火によって生まれたものですが、北アルプスに限って言えば焼岳や乗鞍岳などが活火山として知られています。以前は別に休火山や死火山と分類された時期もありました。現在では活動を終えた山でも再度動き始めることもあることから、すべての山は生き続ける活火山として認識されています。
活火山あるところに名景あり、と言うわけではありませんが、刻一刻と変化する噴煙撒き散らす焼岳の表情は、まさに自然の摂理そのもの。焼岳によって生まれた上高地の穏やかな雰囲気と併せて楽しめば、生きとし生ける風景を二倍三倍と楽しめることでしょう。
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