千葉県銚子市は、中生代ジュラ紀(2億万年〜1億5000万年前)に形成された「愛宕山層群」、中生代白亜紀(1億4500万年〜6500万年前)に形成された「銚子層群」や、新生代第四紀(8万年〜1万年前)に堆積した「関東ローム層」など、様々な年代の地層を見ることができる貴重な街。
中生代ジュラ紀、白亜紀は、現在よりも気温が高く、ソテツ類やマツ類などの裸子植物やシダ類に覆われ、陸や海には恐竜、空に翼竜が飛ぶ時代。銚子市青少年文化会館内にある「銚子ジオパーク展示室」では、市内で見られる地層や岩石を採取した実物とともに、説明パネルで展示されています。また、展示室には、日本全国にあるジオパークのガイドブックや、銚子ジオパークのガイドブックが置かれているので、散策のお供に最適です。
銚子市青少年文化会館は、銚子市前宿町にあります。JR銚子駅から銚子電鉄に乗換え、2つ目の駅「観音駅」から600メートル(徒歩6分)ほど。銚子市で発見された、中生代白亜紀のアンモナイトや、トリゴニア(三角貝)などの化石や屏風ケ浦、犬吠埼で見られる堆積岩や地層が展示されています。
ジオパーク展示室の隣には、銚子市で発掘された、縄文、弥生時代(余山遺跡や栗島遺跡など)の土器や食器、貝の装飾品が展示されている「考古資料展示室」があります。地質年代からすると人類の歴史はつい最近のことです。
<基本情報>
住所:千葉県銚子市前宿町1046(銚子市青少年文化会館内)
電話番号:0479-24-8911
アクセス:銚子電鉄「観音駅」より徒歩約6分
営業時間:午前9:00〜午後5:00
縄文時代(約1万5000年〜2300年前)前期ごろの銚子の北側は、印旛沼や手賀沼、茨城県の霞ケ浦はつながっていて香取海という大きな内海が広がっていました。湾口にある島のようだった銚子半島が、酒器の「銚子」に似ていたことから「銚子」と名付けられました。
銚子半島は平坦な台地状の地形のため、標高約74メートルの愛宕山にある「地球が丸く見える丘展望館」では、東西南北の全ての方向で展望が楽しめます。東方向には犬吠埼灯台、西方向にはどこまでも続く屏風ケ浦、北西方向には銚子ポートタワーが見え、まるでこれから散策する場所を空から見ているようです。
「地球が丸く見える丘展望館」は、電鉄銚子「犬吠駅」より徒歩約13分の愛宕山の頂上にあります。展望デッキに登ってもわずか標高90メートル。しかし、展望デッキから見える展望は330度、地球が丸いことが実感できます。
西方向にはどこまでも続く「屏風ケ浦」が見えます。崖の上に広がるのは「下総台地」。いくつもの風力発電機が見えます。火山灰が粘土化した関東ローム層で覆われた台地では、キャベツや大根などの野菜が作られ銚子の特産物になっています。
<基本情報>
住所:千葉県銚子市天王台1424-1
電話番号:0479-25-0930
アクセス:銚子電鉄「犬吠駅」より徒歩約15分
営業時間: 4月〜9月 午前9:00〜午後6:30、10月〜3月 午前9:00〜午後5:00
屏風ケ浦へは「地球が丸く見える丘展望館」から、銚子ドーバーライン(県道286号線)を西へ約2キロ。徒歩で約30分、車で5分ほどの「銚子マリーナ」へ。銚子マリーナは、ヨットやボートなどのマリンスポーツから、海水浴やバーベキュー、イルカ・クジラウォッチングが楽しめる海浜公園。海に向かって右手に切り立った断崖がどこまでも続く屏風ケ浦が見えます。
屏風ケ浦は下総台地を太平洋の荒波によって浸食された海食崖。崖は、ここから9キロ先の旭市刑部岬におよび、イギリスとフランスの間にあるドーバー海峡に面したイギリスの白い壁に似ていることから「東洋のドーバー」と呼ばれています。推定年代200万年前の地層から、火山灰が積もった関東ローム層を見ることができます。
下総台地は比較的柔らかい地層のため、かつては年間50〜100センチ浸食によって後退をしていました。現在では、消波ブロックが設置され浸食が防がれています。灰白色は、200万年〜70万年前に堆積した「飯岡層」、黄褐色は、年代推定10万年前の「香取層」、その上の赤色が、関東ローム層。
刑部岬(けょうぶみさき)の先は、全長66キロの砂浜が続く「九十九里浜」。岬を境に対象的な海岸線は自然が作り出す不思議です。海岸沿いに遊歩道が設置されているので、崖をすぐ近くで観察することができます。
<基本情報>
住所:千葉県銚子市潮見町15(銚子マリーナの住所)
アクセス:JR銚子駅から千葉科学大学行バス約10分、マリーナ前停留所下車
犬岩へは、屏風ケ浦遊歩道入り口から、犬吠埼に向かって海岸沿いの道を1.2キロ、徒歩で約15分、車で3分ほどの、犬若漁港の東端。千騎ケ岩はその隣の戸川漁港西側にあります。共に、国指定の名勝であり、天然記念物です。「地球が丸く見える丘展望館」がある愛宕山から続く「愛宕山層群」にあり、千葉県で最も古い中生代ジュラ紀の地層と考えられています。
上部にある2つの岩が犬の耳に見える犬岩は、無数に亀裂が入り、今にも崩れそうです。愛宕山層群は、海洋プレート上に形成された、チャートや砂岩、泥岩の「付加体」がユーラシアプレートに沈み込み時に地上に隆起した地層。銚子は地層年代が違う地層を、並んだ海岸線で見ることができます。
犬岩の隣にある「犬若岬」は、山地以外で富士山が望める最東端、伊能忠敬が富士山の方向を観測した場所です。防波堤の向こうには、屏風ケ浦が見えます。
<基本情報>
住所:千葉県銚子市潮見町(犬若漁港の住所)
アクセス:銚子電鉄「外川駅」より徒歩約19分
千騎ケ岩は義経が千騎の兵で立てこもった伝説から名付けられました。のどかな漁港にある名勝は白い砂に囲まれ美しいコントラストを描いています。「犬岩」も、義経が、奥州に落ちる時、残された愛犬の若丸が岩に姿を変えたといわれています。
<基本情報>
住所:千葉県銚子市外川町(外川漁港の住所)
アクセス:銚子電鉄「外川駅」より徒歩約12分
犬吠埼灯台は、中世白亜紀にできた硬い岩盤の上に立っています。日本を代表する灯台は、国登録有形文化財に登録され、「世界の灯台100選」、「日本の灯台50選」に選ばれています。また、灯台下の海岸は、浅い海で堆積された岩石が露出し、国指定天然記念物「犬吠埼の白亜紀浅海堆積物」となっています。
灯台から、散策路を下って海岸に出ると、地殻変動で傾斜した「砂岩泥岩互層」、砂岩の表面に小さなおうとつが蜂の巣のように風化した「蜂の巣状風化」や大波の痕跡「ハンモック状斜交層理」など、様々な浅海性の堆積岩が見られます。白亜紀の地層と浅海堆積物が地表で見られる犬吠埼は全国でも数少ない場所です。
灯台が立つ台地は斜めに傾斜しています。これは地層が堆積した後、地殻変動によって湾曲された形跡とみられています。
地殻変動で傾斜した「砂岩泥岩互層」。この地層は、砂岩と泥岩が交互に堆積を繰り替えた地層。通常は平衡の地層が、地殻変動で傾斜しています。砂岩表面に蜂の巣のように風化した「蜂の巣状風化」が見えます。
<基本情報>
住所:千葉県銚子市犬吠埼9576
アクセス:銚子電鉄「犬吠駅」より徒歩約7分
銚子の地層散策は見所満載。この他にも、黒生漁港付近には中生代白亜紀前期地層で、礫岩(小石が入った岩)が浸食され鳥のとんびに似た「とんび岩」。銚子ポートタワー下には、造成に伴うなう埋め立てで、かつて岬だった1部が残っている「夫婦ケ鼻」などがあります。
各地をドライブする車の旅も楽しいですが、銚子駅から戸川駅を運行する銚子電鉄での散策もローカル線の旅が加わり、さらに楽しいものとなります。散策には、全線、乗り降り自由の1日乗車券の「弧廻手形」に、土、日、祝日に運行される「岬めぐりシャトルバス」がお勧め。それぞれの時代に広がる大地を空想しながらの地層散策は、銚子ならではのものです。
2017年10月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。
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