写真:風祭 哲哉
地図を見る群馬県藤岡市の中心部のすぐ南西にある庚申山。市街地に近いわりには緑の雑木林が広がり、豊かな水辺もあるこの庚申山には数多くの野鳥がやってきます。山深くまで足を踏み入れなくてもたくさんの野鳥を観察できることから、この庚申山は群馬でも有数の探鳥地として知られていて、長年ここで野鳥観察を続けてきた方の記録によると、なんと80数種類もの野鳥が発見されているそうです。
この庚申山で1年じゅうみられる野鳥の1番人気は、青緑の鮮やかな羽が翡翠(ひすい)のように見えることから「飛ぶ宝石」と呼ばれるカワセミ。庚申山のほとりの池の近くに棲み、水中の獲物をとったり、水面をかすめて一直線に飛んだりする姿を見ることができます。
かつては環境省のレッドリストにおいて絶滅危惧種に選定され(現在は準絶滅危惧種)「希少野生動植物」に指定されているオオタカ。一時は絶滅の恐れも指摘されたオオタカですが保護対象となってからは次第にその個体数も回復し、この庚申山でもその雄姿を見られます。
このほか庚申山ではホオジロやジジュウカラ、メジロなど数えきれないほどの野鳥を1年を通じて見ることができます。
庚申山のバードウォッチングのハイライトは越冬のために飛来する冬鳥が集まる季節。
美しい瑠璃色の姿がその名前の由来であり、日本では青い鳥の象徴としてバードウォッチャーの間で高い人気を誇るのが「ルリビタキ」。
夏場は高地でしか見られないルリビタキですが、晩秋から冬にかけてはこうした低地にやってきます。遭遇頻度は高くはありませんが、目の前にこの美しい青い鳥を見つけた時の感動はひとしおです。
立派な冠羽を持ち、学名「Emberiza elegans」と呼ばれる通り、エレガンスな姿の「ミヤマホオジロ」。東日本よりも西日本でよく見られると言われていますが、この庚申山で越冬する姿が発見されています。このミヤマホオジロもなかなか容易に観察できる鳥ではありませんが、特にそのオスの黒と黄色の鮮やかなコントラストは非常に印象的です。
庚申山にはそのほかにもベニマシコ(写真)やオオマシコ、トラツグミ、クロジ、アトリ、ジョウビタキなど美しい冬鳥がたくさん飛来します。
野鳥観察に慣れた方であれば初めての土地でもこうした野鳥の姿を探すコツをご存知でしょうが、慣れない方がすぐにこうした鳥たちを見つけるのはなかなか困難です。そんな時は地元の野鳥の会が主催する探鳥会に参加するのもいいかもしれません。詳しくは関連MEMOをご参照ください。
写真:風祭 哲哉
地図を見るさてこの庚申山へのアプローチですが、この一帯は総合公園としてしっかり整備されていますので庚申山へは主に2つのウォーキングコースからアプローチすることができます。ひとつは庚申山総合公園の中心となる「ふじの咲く丘」から緩やかな上り坂を歩きながら自然豊かな雑木林を抜けて山頂へ到着するコース。もうひとつは3つの池の脇を抜け、男坂とよばれる急な階段を上るコース。
行き帰りに上記2つのコースを使ってぐるっと一周してくるのがスタンダードな回り方ですが、「ふじの咲く丘」から上るコースの方が勾配がきつくないぶん体力的には楽かもしれません。
写真:風祭 哲哉
地図を見る庚申山の標高は189メートル。群馬百名山の中で最も低い山ですが、頂上には「愛の鐘の塔」という展望台があり、赤城山や榛名山、妙義山の上毛三山をはじめ浅間山、上越国境の山々、日光連山といった雄大な山岳景観が楽しめます。
写真:風祭 哲哉
地図を見る庚申山の山頂から水鳥が遊ぶひょうたん池、だるま池、たぬき池といった水辺に続く男坂。311段の階段となっていますので下りに使った方が無難です。また男坂のほかに比較的ゆるやかな女坂もありますが、女坂を下ると車道に出てしまいますので、野鳥観察で歩くのであれば男坂を利用しましょう。
野鳥観察の時間を含まなければ、駐車場からゆっくり歩きながら山頂を通って1周しても1時間程度ですので手軽なウォーキング感覚で訪れることができます。
写真:風祭 哲哉
地図を見る藤岡市には世界遺産「富岡製糸場と絹産業遺産群」の構成資産のひとつである「高山社跡」がありますが、ここは庚申山の駐車場から車で20分ほど。日本の養蚕技術発展に尽くした高山長五郎が養蚕法「清温育」の研究と社員への指導を行っていた生家が残されていますので合わせて訪問するのも便利です。
写真:風祭 哲哉
地図を見るまた11月の中旬から12月の上旬であれば、桜山公園での冬桜のお花見もおすすめ。春の桜のようにすべてのつぼみが華やかに満開になることはありませんが、ポツポツと咲く寒桜が赤や黄色の紅葉とコラボレーションするさまは儚くてとても情緒的。
庚申山からは車で約30分の距離ですが、期間中の週末は渋滞する場合もありますのでご注意ください。
庚申山は首都圏からのアクセスも便利で、市街地からもほど近いのにたくさんの野鳥が飛来する豊かな探鳥地。ただこの庚申山で見られる野鳥も環境や気候の変化により年々少なくなってきているといいます。
総合公園として整備されれば便利にはなりますが、草を刈り山を削ればそれだけ野鳥の住居やえさを奪うことになります。また地球温暖化が進めば、野鳥の生態にも変化が起こることでしょう。
もちろん観察する私たちにもマナーが必要です。過度な接近や彼らの生態系に踏み込むような行為はせず、静かに見守ってあげましょう。
一度壊した環境を元に戻すのには多くの年月がかかるように、一度離れていった野鳥たちが戻ってくるには多くの時間が必要となります。この関東では貴重な野鳥のサンクチュアリは、いつまでも楽園として残したいですね。
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(2024/11/7更新)
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