写真:風祭 哲哉
地図を見る上下駅は広島県の福山からJR福塩線に乗り、途中駅の府中で列車を乗り継いで約1時間30分、福塩線で最も高い場所にある駅です。とはいうものの、標高は383.7メートルで、それほど高い場所にあるわけではありませんが、この上下の町、実は「分水嶺」と呼ばれる、水の流れが分かれる山脈の上の境目にあるのです。
この町に降った雨は一方は江の川になって日本海(上)へ、もう一方は芦田川になって瀬戸内海(下)へと流れるから「上下」という町の名前になった、とも言われています。
この上下の町は現在でも美しい町並みが残っていることで知られています。メインストリートの中心でひときわ目立つ高い塔を持つのが「上下キリスト教会」。これは明治時代に財閥の蔵として建築された建物が、戦後にキリスト教会として転用されたものですが、現在でも上下町のシンボルとなっています。
写真:風祭 哲哉
地図を見るこの上下は江戸時代、世界の銀の1/3を産出していたという石見銀山から瀬戸内海へ続く銀山街道の宿場町で、石見銀山からの銀の集積中継地となっていたため、幕府直轄の天領となり、代官所も置かれていました。最盛期には町には33軒もの金融業者が軒を連ね、のちに酒、醤油などの醸造業をはじめとするさまざまな商人も集まり、町は大いに栄えた、と言われています。
上下のメインストリートには現在でも白壁やなまこ壁、格子戸といった格式のある懐かしい町並みが続いています。現在は上下歴史文化資料館となっている旧岡田邸は、田山花袋の小説「蒲団」のヒロインのとされる女流文学者・岡田美知代の生家で、上下を代表する町家建築です。
写真:風祭 哲哉
地図を見る白壁の町並みが続く上下のメインストリートの端にある旧警察署は明治時代の建物。屋根の上には火の見やぐらが当時の姿のまま残っています。このほか、幕府の公金を扱う「掛屋」を営んでいた「旧田辺邸」などが上下の町の代表的な建築物となっています。
写真:風祭 哲哉
地図を見る上下町のメインストリートの端の四つ角を左に曲がり、上下川を渡るとその先にも風情ある通りが続いています。立派な白壁の旅館や酒屋が並び、江戸時代の宿場町がそのまま残っているかのようにも見えます。
写真:風祭 哲哉
地図を見るその突き当りにあるのが大正時代に建てられ、芝居や映画などの上演が行われていた劇場「翁座」。徳島・脇町の「オデオン座」や土佐・赤岡の「弁天座」などと同様に、かつて裕福だった町の有志により建てられた歴史ある劇場のひとつでしたが、残念ながら2010年に閉館となりました。
正面に「映画実演」の看板がありますが、これは「映画」と「実演」という意味で映画も演劇も兼ねている、という意味だったようです。
この翁座は京都にある演舞場、南座を参考に設計されたもので、人力で動かす回り舞台や手掘りの奈落も現存し、館内も客席も非常にクオリティの高いものだったとされています。残念ながら現在は閉館しているため、通常は館内を見ることはできませんが、ひなまつりや端午の節句などのイベント期間中は一般開放が予定されています。また通常時でも専用の案内ガイドを申し込めば、館内見学も可能です。
詳しくは下記までお問い合わせください。
<翁座の基本情報>
住所:広島県府中市上下町上下2077
問い合わせ先:上下歴史文化資料館 0847-62-3999
白壁やなまこ壁、そして格子戸といった古きよき建物が並ぶ上下の町並みにはしっとりとした雨もまたよく似合います。でも雨の日の上下の町はそれ以外にもロマンティックなのです。それはここが雨の水がふたつに分かれる分水嶺だから。
上下の町の中心地にもこの分水嶺がありますので、雨の日にそこで水の流れを観察してみてはいかがでしょうか?一方の水が北の日本海へ、もう一方の水が南の瀬戸内海へとそこから分かれるなんて、なんだかとてもロマンティックじゃありませんか?
ただし1点ご注意を。水の流れを肉眼で観察するのは、やさしい霧雨では難しく、おそらく相当の土砂降りの時に行かないとできないかもしれない、ということを。。。
このスポットに行きたい!と思ったらトラベルjpでまとめて検索!
条件を指定して検索
(2024/12/13更新)
- 広告 -